Intel(インテル)と AMD が発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。
ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。
10月25日、Intel のデスクトップパソコン用 新型CPU「Arrow Lake」こと「Core Ultra 200S シリーズ」が市場投入されました。
とは言え、まだ愛好家向けの K付きモデル しか発売されておらず、本格普及は来年1月に登場すると見られる一般向けが発売されてからと思われます。
ともあれ、これで2024年後期の新型モデルである、Lunar Lake(Core Ultra 200V)、Arrow Lake(Core Ultra 200S)、Zen 5(Ryzen AI 300、Ryzen 9000)が出そろったことになります。
ノートパソコンはこの10月中に、Dell、ASUS、Lenovo、HP などの大手メーカーが続々と Core Ultra 200V(Lunar Lake)搭載機を発売しています。
マウスコンピューターやドスパラなどの日本のメーカーも Lunar Lake 搭載機を発表しており、普及がハイペースで進んでいます。
ただ、Lunar Lake の価格が思ったより安くなかったため、10万円台の低価格機では依然として第13世代 Core や初代 Core Ultra(Meteor Lake)、Ryzen 7000/8000(Zen4)が主流です。
よってノートパソコンは多くのCPUが混在する状態となっています。
この傾向はゲーミングノートでも同様で、むしろビデオカードを搭載している場合、新型CPUのグラフィック機能(内蔵GPU)に意味がなくなり、AI 機能も現時点では有効活用できないため、前世代のCPUを使うゲーミングノートが増えるという逆転現象も起こりつつあります。
この影響で新型CPU搭載の高額ゲーミングノートと、既存CPU搭載のコスパ型ゲーミングノートの価格差がより広がっています。
デスクトップパソコン用の新型CPU、Core Ultra 200S(Allow Lake)の詳細ですが……
基本設計は以前から言われていた通り、Meteor Lake(初代 Core Ultra)のデスクトップ版となります。
11月初頭時点で発売されているのは、まだ愛好家向けのK付き3種類(GPUなしを含めて5種類)のみです。
ラインナップは以下の通り。(Pコア/Eコア、スレッド、GHz の意味はリンク先を参照)
- Core Ultra 9 285K:Pコア8 / Eコア16、24スレッド、最大5.7GHz
- Core Ultra 7 265K:Pコア8 / Eコア12、20スレッド、最大5.5GHz
- (Core Ultra 7 265KF:上記の内蔵GPUがないもの)
- Core Ultra 5 245K:Pコア6 / Eコア8、14スレッド、最大5.2GHz
- (Core Ultra 5 245KF:上記の内蔵GPUがないもの)
先ほど Meteor Lake のデスクトップ版と言いましたが、Meteor Lake にあった超省電力コアの LP-Eコア は使用されていないようで、従来通り Pコア/Eコア の2種類となっています。
また、Pコアからハイパースレッディングが削除されており、そのぶんスレッド数が減少。
マルチコア性能よりも、シングルコア性能と電力効率(ワットパフォーマンス)を重視したCPUとなっています。
インテルの資料では、消費電力は最大40%削減され、マルチスレッドのパフォーマンスは15%向上、高負荷時の温度は最大10℃低下し、AIやゲームでの性能が上がっているとアピールされています。
IPC(同クロック数での処理能力)はPコアで9%、Eコアは32%アップしている模様。
また、先に行われた発表会では、前世代より最大14%パフォーマンスが向上し、日常的なアプリ使用時の消費電力は最大58%削減、ゲームプレイ時にも電力を最大165W減らせるとコメントしていました。
ベースが Meteor Lake(初代 Core Ultra)なので AI を搭載していますが、第一世代の NPU なので処理能力は 13TOPS。
第二世代の AI CPU である Lunar Lake(Core Ultra 200V、NPU 48TOPS)やノート用 Zen5(Ryzen AI 9、NPU 50TOPS)、Snapdragon X(NPU 45TOPS)には劣ります。
一応、GPU(内蔵グラフィック機能)で 8TOPS、CPU で 15TOPS のAI処理が可能で、合計すれば 36TOPS になるとのこと。
それで何ができるのかですが、背景ぼかしなどのオンライン会議時の映像処理、裏で動いているセキュリティソフトのAI活用、操作サポート機能の利用などができるとのこと。
デスクトップ用だからか、Intel が強くアピールしているのはゲーミング性能で、従来より優れた内蔵グラフィック機能(GPU)と、ゲーム時の動作速度の改善、ゲーム時の消費電力の軽減をうたっています。
と言っても、内蔵GPUは Meteor Lake と同じ Xe で、Lunar Lake(Core Ultra 200V)が搭載する Xe2 ではありません。
第13世代 Core などが搭載する Iris Xe や、これまでのデスクトップ用のCPUが搭載していた Intel UHD よりは高性能ですが、最新の内蔵GPUというわけではありません。
また、Intel Arc と呼ばれる新型GPUのひとつなのですが、所定の性能を発揮できないケースが多く、今年の夏ごろのアップデートでだいぶ良くなったのですが、GeForce や Radeon と比べるとまだ十分とは言えないところがあります。
内蔵GPUの性能は、ビデオカードを搭載していれば関係ありません。
ただ、ビデオカード搭載機でゲームを動かした場合も、タイトルごとの差が大きく、第14世代 Core のK付きモデルの方が速かった、という報告が多く見られます。
また、画像加工や映像編集のような高負荷な作業でも、第14世代 Core より速度が上がらないという報告が散見されます。
ただし、消費電力と発熱はかなり軽減されているようです。
ゲームの動作に影響するシングルコア性能が上がっているのに、ゲームの速度が上がらない理由については、Meteor Lake と同じくベースタイルの上に各役割のチップを載せて組み立てる、チップレット方式にしているからではないか、と言われています。
チップレットだとチップとタイルの繋ぎ目で速度のロスが発生します。
それを Intel は Foveros という技術で解決していたのですが、ノートPC用の Meteor Lake はそれで良かったものの、デスクトップ用の、しかもK付きモデルでは、まだ十分ではなかったのではないかと見られています。
そもそも Meteor Lake はノートパソコン用の省電力CPUだったので、それをデスクトップ用にしても省電力性能以外が十分に満たせるのかという疑問は以前からありました。
Intel はそれを全周検知が可能なトランジスタ RibbonFET、基板の裏から給電を行える PowerVia といった最新技術を備える Intel 20A という設計でカバーしようとしていたのですが、これがキャンセルされてしまったため、デスクトップ向け、特にK付きには、マッチしていない形になったのかもしれません。
ただ、電力効率の高さと発熱の軽減は、一般向けCPUにとっては大きなメリットとなります。
愛好家向けのK付きモデルは、まさに愛好家が評価するので、ピーク速度ばかり注目される傾向があります。
その用途だと Meteor Lake のデスクトップ版で、しかもスレッド数を落としているCPUでは、厳しくなるのは必然でしょう。
電力・温度・性能のバランスが必要になる一般向けでは、話は変わってくるかもしれません。
また、まだ出た直後なので、ドライバなどが不完全で、これから調整が進んでいくものとみられます。
AMD の Ryzen 9000 シリーズ(Zen5)もPC愛好家の評判は良くないので、デスクトップPCのユーザーにとっては、選択の難しい状況が続きそうです。
なお、その AMD ですが、10月10日に発表会を実施しました。
これはAIやサーバー用の製品を紹介する企業向けの発表会で、AIサーバー向けCPU「EPYC」の新型や、AIアクセラレータ Instinct MI325X などの発表が行われたのですが……
個人向けのノートパソコン用CPUである Ryzen AI PRO シリーズも公開されました。
Ryzen AI PRO シリーズはビジネス向けのCPUですが、注目なのはラインナップに Ryzen AI 7 があったこと。
これまでの Ryzen AI は高額モデルの Ryzen AI 9 しかなかったので、これが初の一般価格のモデルとなります。
ラインナップは以下の通り。
- Ryzen AI 9 HX PRO 375
12コア24スレッド、最大5.1GHz、キャッシュ36MB、Radeon 890M、NPU 55TOPS - Ryzen AI 9 HX PRO 370
12コア24スレッド、最大5.1GHz、キャッシュ36MB、Radeon 890M、NPU 50TOPS - Ryzen AI 7 PRO 360
8コア16スレッド、最大5GHz、キャッシュ24MB、Radeon 880M、NPU 50TOPS
Ryzen AI 7 PRO 360 を搭載した試作機のものと思われるベンチマーク結果は、すでに Geekbench の自動登録で見られます。
マルチコアのスコア約12000は、初代 Core Ultra 7 と同等。
マルチコアが弱い Lunar Lake の Core Ultra 7 は 11000 ぐらいなので、それを上回ります。
一方で、シングルコアの約2700は、シングルコア重視の Core Ultra 7 258V と同等。
上位型の Core Ultra 7 268V は約2900出るようなので、それよりは下ですが、マルチコアのスコアを維持してこの結果は、かなり優秀と言えます。
もちろん初代 Core Ultra 7(2350)よりだいぶ上です。
ベンチマークのスコアでは、Lunar Lake の Core Ultra 7 に十分対抗できる性能です。
あとは、価格がどうなるかというところですね。
インテルの Arrow Lake に関する公式発表は こちら を、AMD の Ryzen AI PRO 300 シリーズに関する公式発表は こちら をご覧ください。
以上、パソコンを買う際の参考にして頂ければと思います。
ただパソコンは、第14世代のCPUを待っていたら新型が発表され、新型が出た頃には次世代の話が出てくるというように、待っていたらキリがありませんが……
現在おすすめのパソコンは、ノートPCは こちら、ゲーミングPCは こちら をご覧ください。
CPU の基本説明は こちら、用語については こちら で解説しています。
CPUの性能一覧グラフは こちら、ビデオカードの性能一覧グラフは こちら です。
(以下は過去ログです)
※2024年10月1日版
Intel(インテル)と AMD が発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。
ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。
9月24日、Intel のノートPC用 最新CPU「Lunar Lake」こと「Core Ultra 200V シリーズ」の市場投入が始まりました。
9月27日に発売された Dell の XPS 13 を皮切りに、10月3日には ASUS が、10月4日に Lenovo が、続々と搭載機を発売します。
HP もアメリカでは Core Ultra 200V 搭載機を販売開始しており、さすがに投入ペースは Snapdragon X や Ryzen AI 300 を上回ります。
価格は Dell の XPS 13 は Core Ultra 5 搭載でも約26万円からと高額ですが、ASUS の Zenbook S 14 は約22万円からと、他の第二世代の AI PC より一回り安いです。
レノボの Yoga Slim 7i は約25万円から。
ただ、当初考えられていた「Ryzen AI はハイスペック機向け、Lunar Lake は低価格機向け」という形にはならなさそうで、この価格だとどちらもハイスペック機向けとなりそうです。
一方で、クアルコムが9月、Snapdragon X Plus の廉価型である X1P-46、X1P-42 を発売。
性能は初代の Core Ultra 7 と同等ですが、10万円台の搭載PCも登場しており、次世代 AI PC の低価格機を担おうとしています。
ただ、ARMプロセッサである Snapdragon X は ARM版Windows のため、動かせるソフトウェアが少ない難点があります。
よってノートパソコンの低価格帯のCPUは当面、初代の Core Ultra や、第13世代 Core、Ryzen 7000/8000 が、引き続き主流を務めそうです。
Core Ultra 200V(Lunar Lake)の概要については、先月の記事をご覧ください。
以下の画像はベンチマークソフト Geekbench のサイトに自動登録されていた、ASUS の新型 Core Ultra 7 搭載機の測定結果。
他のCPUのデータは こちら にあるので、比較の参考にして頂ければと思います。
Lunar Lake が無事に発売されたため、巷の話題は Intel の次期デスクトップ用CPUである「Arrow Lake」に移っていますが……
9月6日に「Arrow Lake に Intel 20A は適用されない」という正式な発表が行われたことで、これまでのスペックに関する情報は無意味となり、巷の噂などもすべて覆され、10月に発売されると言われているにも関わらず、詳細は不明になっています。
名前は Core Ultra 200 シリーズ(Vがない)になりそうです。
Arrow Lake は Meteor Lake のデスクトップ版と言われており、10月10日に詳細が発表され、10月25日に発売される、と今のところ言われています。
Intel 20A で導入される予定だった新技術は来年発売予定の Intel 18A に繰り越しとなり、Arrow Lake は TSMC の 3nm プロセスで生産される、既存技術の製品となりそうです。
ただ、それはそれで、新製品が抱えるトラブルの少ない安定したものになりそうです。
いずれにせよ、詳細が発表されると言われている10日は間近ですので、それを待ちたいところ。
なお、10月には愛好家向けのK付きモデルのみ発売され、一般向けは来年1月になると言われています。
これは過去のデスクトップ用CPUがそうだったので、今回も同様だと思われます。
【 10月13日 追記 】
Arrow Lake こと「Core Ultra 200S シリーズ」の詳細が発表されました。
やはり Meteor Lake のデスクトップ版CPUで、10月25日に発売となるようです。
Pコアは最大8、Eコアは最大16、ただハイパースレッディングが廃止されていて、スレッド数は24となります。
Lunar Lake(Core Ultra 200V)と同じく、以前よりシングルコアを重視している形です。
インテルは、前世代より最大14%パフォーマンスが向上し、日常的なアプリの使用での消費電力は最大58%削減され、ゲームプレイ時には電力を最大165W削減する、と発表しています。
ベースが Meteor Lake(初代 Core Ultra)なので AI を搭載していますが、性能的には第一世代で NPU は13TOPS。
内蔵グラフィック機能(GPU)も Meteor Lake がベースのようで、従来の内蔵GPUより高性能ですが、ビデオカードと比べると…… といったところ。
価格はほぼ据え置きか、若干の値下げとなるようです。
AMD は、Ryzen AI 9 より上位のノート用CPUである Ryzen AI Max と Ryzen AI Max+ を開発しているという噂が流れています。
一方で、Ryzen AI 7 Pro 160 という名前がベンチマークソフト Geekbench の自動登録に見られ、Ryzen AI 7 の開発も進んでいることが伺えます。
Geekbench のテストはレノボの試作機で行われたようです。
マルチコアのスコア11800は、初代 Core Ultra 7 と同等。
シングルコアの2520は初代 Core Ultra はもちろん、Snapdragon X Elite を超えますが、Core Ultra 7 200V には届いていません。
もちろんまだ開発中なので、今後さらに伸びる可能性はあります。
AMDも10月10日にイベントを実施予定で、ここで新しい発表が行われるかもしれません。
ただ、このイベントは AI 関連のもので、企業向けの AI アクセラレーターやサーバー用CPUの発表が中心と思われ、個人向け製品の話は少ないと思われます。
※2024年9月1日版
Intel(インテル)と AMD が発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。
ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。
8月、ようやくAMDの最新設計 Zen5 のノートパソコン用CPU「Ryzen AI 9 300 シリーズ」と、デスクトップ用CPU「Ryzen 9000 シリーズ」が市場投入されました。
9月初頭の時点では Ryzen AI 9 300 シリーズを搭載するノートパソコンは ASUS しか発売していませんが、機種は多いです。
その能力は素晴らしく、事前のアピール通り電力効率に優れており、低い電力で高い性能を発揮できます。
また、内蔵グラフィック機能も新型で、ビデオカードなしでも相応にゲーム等を動かせます。
詳しい検証データは 搭載機のレビュー の CPU と GPU の項目をご覧ください。
ただし、価格は高く、搭載機の多くは30万円以上で、当面は高級機向けと言えます。
まだ Ryzen AI 7 などの安価モデルの情報は出ていません。
デスクトップ用の Ryzen 9000 シリーズは初期出荷分の回収・再検査があった影響もあり、まだほとんど出回っていません。
また、巷の評判はあまり良くないようです。
ただ、電力効率は優れているようで、評判が良くないのはいち早く Ryzen 9000 を入手するような AMD ファンは自作マニアの方が多く、そうした方の多くはオーバークロック時のピーク性能を重視するため、ビーク性能よりも電力効率重視の Zen5 とはマッチしていない、というのがありそうです。
初期の基準TDP(投入電力)が低すぎたのもあったようです。
しかし一般ユーザーにとっては、低めの電力で静かに性能を出せる効率重視の方が良いはず。
ともあれ、日本ではまだ入手困難なので、それ以前の段階です。
主要メーカーで搭載機が出荷されるようになるのは、早くて9月中旬以降になると思われます。
このような状況のため、主要メーカーのラインナップは(ASUS 以外)あまり変わりません。
ノートパソコンは第13世代 Core と Ryzen 7000 & 8000(Zen3+ と Zen4)が中心。
ただ、Copilot+ PC 認定をほぼ独占している Snapdragon X 搭載機も増えています。
デスクトップパソコンは次世代(Ryzen 9000 と Arrow Lake)に移行する直前と言えます。
今後のCPUの開発・発売予定ですが……
【 9月4日 Lunar Lake について追記 】
インテルが現地時間9月3日、ドイツの消費者向け家電展示会 IFA 2024 で前講演を実施。
ここでノートパソコン用の新型CPU「Lunar Lake」こと Core Ultra 200V(シリーズ2)の発表を行いました。
まず講演の冒頭で、ロングバッテリー、低発熱で静音、高いセキュリティが大きな長所であるとアピールされていました。
この辺は以前からの発表通りと言えます。
コア構成は Pコア4、Eコア4 の 8スレッドで、ハイパースレッディングは廃止されており、シングルコア重視の設計であることが伺えます。
省電力メモリである LPDDR5x-8533 を一体化しており、より高速なメモリアクセスが可能。
これとは別に、8MB の「メモリーサイドキャッシュ」を持つ模様。
第一世代の Core Ultra と比較して、処理速度は18%高速、GPU(内蔵グラフィック機能)は30%強化、Eコアは50%省電力化、電力効率は2倍、AI性能は3倍になったとのこと。
コアごとの性能は、Pコアは電力効率が15%アップ、同クロックでの性能は14%アップ。
EコアはAIを活用した分岐予測や効率化がより広く、深くなったとのことで、なにやら抽象的ですが、それらも含めて+68%ほど性能が上がっているとアピールされています。
通信はもちろん Wi-Fi 7 に対応、Bluetooth も最新の 5.4。
PCIe 5.0 にも対応しています。
GPU(内蔵グラフィック機能)については、先行している Snapdragon X Elite や Ryzen AI 9 HX370 との比較を交えた、対抗心にあふれる発表となっていました。
GPUの設計は「Xe2」と呼ばれる新型で、引き続き Intel Arc をベースとしたものになります。
レイトレーシングと XeSS、さらに XMX エンジンと言う GPU を AI に活用しやすくする機能が含まれており、これにより GPU だけで 67TOPS のAI性能を発揮できるとのこと。
NPU は48TOPS なので、合わせて約120TOPSになると述べられています。
また、VVC という新しいビデオコーデックに対応します。
ゲーミング性能は Ryzen AI 9 HX370 や Snapdragon X Elite との比較プレイ動画が流され、ゲーム Dota 2 で Snapdragon が57W前後で約70fps、Ryzen AI 9 が42W前後で約77fpsだったのに対し、新型 Core Ultra 9 は約80fpsを30Wで出しています。
GPUの電力効率は Ryzen AI 9 HX370 より35%高く、Snapdragon X Elite より2倍以上高いとされています。
もちろんゲームにもよると思いますし、動作速度の平均のアベレージでは Ryzen AI 9 HX370 との比較で+16%であったとのこと。
発表されたグラフをよく見たところ、日本でメジャーな作品は以下のようになっていました。
- Ghost of Tsushima
Core Ultra 155H:27fps、Ryzen AI 9 HX370:30fps、Core Ultra 9 288V:37fps、Core Ultra 9 288V+Xess:49fps
(当方で計測:Ryzen AI 9 HX370+FSR3:40~45fps) - 龍が如く8
Core Ultra 155H:31fps、Ryzen AI 9 HX370:32fps、Core Ultra 9 288V:43fps、Core Ultra 9 288V+Xess:70fps
(当方で計測:Ryzen AI 9 HX370+FSR3:60fps) - ファイナルファンタジー14
Ryzen AI 9 HX370:45fps、Core Ultra 9 288V:68fps - マインクラフト
Ryzen AI 9 HX370:111fps、Core Ultra 9 288V:92fps - GTA V
Ryzen AI 9 HX370:141fps、Core Ultra 9 288V:137fps
Ryzen AI が勝るタイトルもあるのですが、Core Ultra 200V が一回り高いタイトルが多いようです。
さらにゲーム以外でも、多くのソフトウェアが最適化されており、AI 機能も快適に動作すると述べられています。
これは、多くのソフトウェアが動作しない ARM プロセッサの Snapdragon X に対する優位性アピールですね。
ソフトウェア使用時のバッテリー駆動時間でも、Ryzen AI 9 HX370 や Snapdragon X Elite に勝るとされています。
今回の講演で印象的だったのは Microsoft、Google、Dell、HP、Lenovo 等、名だたるメーカー関係者がこぞって登壇していたこと。
特に Microsoft は「これで Copilot+ PC がさらに便利になる!」といったアピールをしており、それは性能は十分なのにいまだに Copilot+ PC 認定を貰えない AMD Ryzen との、交渉力の差のようなものを感じてしまいます。
ともあれ、Core Ultra 200V シリーズ搭載機は普通に Copilot+ PC の認定を受けられるようで、それは Copilot+ PC 用に用意された新機能を利用できることを意味します。
「Core Ultra 200V シリーズなら AI 性能で MacBook Air M3 に2.5倍の差をつける!」みたいなコメントもありました。
発売日は9月24日。
これは中止されてしまったインテルのイベント Intel Innovation 2024 の開催日。
やはりこのイベントに合わせて発売する予定で、それはイベントが中止になっても変わっていないようです。
ラインナップは以下のようになっています。
製品名 | Pコア クロック数 |
Eコア クロック数 |
メモリ | キャッシュ | GPU | AI | TDP |
Core Ultra 9 288V | 3.3~5.1GHz | 3.3~3.7GHz | 32GB | 12MB | Intel Arc 140V 8コア 2.05GHz |
NPU 48TOPS GPU 67TOPS |
17W~30W (Max37W) |
Core Ultra 7 268V | 2.2~5GHz | 2.2~3.7GHz | 32GB | 12MB | Intel Arc 140V 8コア 2GHz |
NPU 48TOPS GPU 66TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 7 266V | 2.2~5GHz | 2.2~3.7GHz | 16GB | 12MB | Intel Arc 140V 8コア 2GHz |
NPU 48TOPS GPU 66TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 7 258V | 2.2~4.8GHz | 2.2~3.7GHz | 32GB | 12MB | Intel Arc 140V 8コア 1.95GHz |
NPU 47TOPS GPU 64TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 7 256V | 2.2~4.8GHz | 2.2~3.7GHz | 16GB | 12MB | Intel Arc 140V 8コア 1.95GHz |
NPU 47TOPS GPU 64TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 5 238V | 2.1~4.7GHz | 2.1~3.5GHz | 32GB | 8MB | Intel Arc 130V 7コア 1.85GHz |
NPU 40TOPS GPU 53TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 5 236V | 2.1~4.7GHz | 2.1~3.5GHz | 16GB | 8MB | Intel Arc 130V 7コア 1.85GHz |
NPU 40TOPS GPU 53TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 5 228V | 2.1~4.5GHz | 2.1~3.5GHz | 32GB | 8MB | Intel Arc 130V 7コア 1.85GHz |
NPU 40TOPS GPU 53TOPS |
8W~17W (Max37W) |
Core Ultra 5 226V | 2.1~4.5GHz | 2.1~3.5GHz | 16GB | 8MB | Intel Arc 130V 7コア 1.85GHz |
NPU 40TOPS GPU 53TOPS |
8W~17W (Max37W) |
コア数は前述した通り、すべて Pコア4、Eコア4 の8スレッドです。
CPUコアのプロセスルールは TSMC の 3nm(N3B)。
型番の下一桁が8だとメモリ32GB、6だとメモリ16GBの模様
Core Ultra 7 と Core Ultra 5 の違いはキャッシュとGPUのコア数です。
TDP は Core Ultra 9 以外 8W~17W で、従来の省電力型(U)に相当するレベル。
Core Ultra 9 でも 30W ですから、第一世代 Core Ultra の標準型ぐらいであり、前評判に違わない省電力CPUですが、それでどのぐらいの実性能を出せるのか、興味深いところです。
そして一番気になるのは…… 価格ですね。
性能が優れていても、あまりに高いようだと手を出せません。
省電力重視のタイプなので、あまり高価ではないと思いたいですが……
これはばかりは発売日が近づかないと、わかりませんね。
今回の講演の模様は Youtube の こちら のページで公開されています。
Intel のニュースリリースは
こちら、日本語の公式 Core Ultra(シリーズ2)概要ページは こちら をご覧ください。
次期デスクトップ用CPU「Arrow Lake」についての話は伝わってこないので、講演では言及はなかったようです。
巷では Arrow Lake は10月に登場するという見方が有力です。
【 9月6日 Arrow Lake について追記 】
9月5日、インテルは Arrow Lake に Intel 20A は適用されないことを発表しました。
これは噂ではなく、すでに公式発表です。
Intel 20A はインテルの新しいCPUの設計(プロセスルール)になる予定でした。
市場ではこの発表を昨今のインテルの株価暴落に結びつけており、インテルの更なる凋落として報じられています。
ただ、Intel 20A は今年2月のロードマップの発表で出てきて以降、まったく続報がなく、インテル自身も来年発売される予定の Intel 18A ばかりアピールしていたので、本当に Arrow Lake が Intel 20A で作られるのか? そもそも Intel 20A の計画は進んでいるのか? というのは疑問に思われていました。
ですから Intel 20A のキャンセルはそれほど意外ではないのですが、しかし 18A へと続く新設計のCPUとしての Arrow Lake の魅力が薄れたのは確かで、残念に思わずにはいられません。
とは言え、新設計の製品というのはトラブルの塊だったりもするので、既存技術の延長で作るというのは、それはそれで安心感はありますが。
インテルの説明では、Intel 18A の開発が順調なので、Intel 20A にリソースを割くのは賢明ではないと判断したとしており、妥当な話ではあります。
Arrow Lake は Meteor Lake のデスクトップ版で、Microsoft が Copilot+ PC や次期 Windows で要求している NPU 40TOPS はどのみち達成できないから、との説も出てきています。
Ryzen 9000 シリーズも NPU はありませんし、考えられる話です。
Intel 20A で導入される予定だった、全周検知が可能なトランジスタ RibbonFET、基板の裏から給電を行える技術 PowerVia は、Intel 18A に反映されるとのことです。
巷ではこの発表を、決算の赤字を受けての支出削減計画のひとつだと見ています。
なお、インテルの企業向けの取り組みについては、IBM がインテルのAIアクセラレータ(Gaudi 3)を導入する、ファウンドリ(半導体製造部門)の分社化および売却を検討する、といった話が出ています。
ただ、ファウンドリ売却の噂は出所の信憑性が疑問なので(ブルームバーグの匿名の関係者の話)、まだ鵜呑みにしない方が良いでしょう。
AMD は、CPUに「Sinkclose」と呼ばれる脆弱性があると指摘され、話題になっていました。
これは2006年以降に発売されたすべての AMD の CPU に影響するセキュリティの問題です。
悪用するのは困難な脆弱性で、個人のレベルで気にするようなものではないのですが、企業では懸念されています。
これに対するマザーボードの修正パッチは、一部のメーカーで公開がすでに始まっています。
当初は Ryzen 3000 シリーズは修正対象外とされていたのですが、のちに対象になることが発表されました。
AMD は Zen5 を発売したばかりですから、他にはこれと言った公式発表や噂はありません。
個人向けCPUの話ではないのですが…… 8月末、ビデオカードのメーカー NVIDIA が決算発表を行いました。
2024年の第2四半期(5月~7月)の総売上は約300億ドル、純利益は実に約166億ドルと、共に市場予測を上回る、非常に好調なものとなっています。
セグメント(業種)別の前期からの売上推移は以下の通りです。
データセンター向け製品:Q1 226億ドル → Q2 263億ドル
ゲーミング&個人向け製品:Q1 26億ドル → Q2 29億ドル
プロクリエイター向け製品:Q1 4.3億ドル → Q2 4.5億ドル
自動車&ロボット分野:Q1 3.3億ドル → Q2 3.5億ドル
先月お伝えした通り、インテルの総売上は127億ドル、AMDは55億ドル。
NVIDIAはデータセンター向けのAIアクセラレータだけで260億ドルを超えているので、いかに今のAI分野が大きいか、半導体産業がAIに傾倒しているかが伺えます。
個人PCユーザーとしては、NVIDIA はビデオカード GeForce のメーカーだったのですが、今やその売り上げはAIの9分の1に……
もう完全に企業向けAIの会社になったんだなぁ、と感じます。
ただ、次期データセンター向けAIアクセラレータ「Blackwell」の登場が遅れるようで、来季の予測が芳しくないため、好決算でありながら株価は下落しています。
次の GeForce も Blackwell がベースになると言われているので、それが遅れるということは、GeForce 5000 シリーズの登場も遅くなるかもしれません。
NVIDIA公式の決算報告は こちら をご覧ください。
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CPU の基本説明は こちら、用語については こちら で解説しています。
メモリなど、他のパーツについては カスタマイズについて のページをご覧ください。