Intel(インテル)と AMD が発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。

ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。

CPUロードマップ(2025年3月)

2025年3月時点の状況は、ノートパソコンは多用なCPUが使われている混在期が続いています。
簡単にまとめると、主な新製品には以下のようなCPUが使用されています。

Core Ultra 200H(Arrow Lake)
Intel の主流となりそうな新型CPU。
Core Ultra 200V(Lunar Lake)
Intel の軽量ノート向けCPUの新型。高め。
Ryzen AI 300(Zen5)
AMD の高級ノートパソコン向けCPU。高い。
Ryzen AI Max 300(Zen5)
AMD の超高級ノートPC用CPU。すごく高価。
Core Ultra 7 100H(Meteor Lake)
Intel の軽量ノートパソコン向けCPUの初代。
Core i7-1355U など(Raptor Lake)
Intel の安価で省電力なCPU。第13世代 Core。
Core 5 120U、Core 7 150U(Raptor Lake Refresh)
Intel の安価で省電力なCPU。中身は第14世代 Core。
Snapdragon X Elite / Plus (ARMプロセッサ)
Qualcomm のノート用CPU。省電力だが動くソフトが少ない。
Snapdragon X (ARMプロセッサ)
Qualcomm の安価なノートパソコン用CPU。

2025年2月中旬より、Core Ultra 200H シリーズ搭載のノートパソコンが発売されています。
まだ ASUS ぐらいしか扱っていませんが、巷のベンチマーク結果の報告によると、標準的な消費電力(20~65W程度)、標準的な性能で、いかにもメインストリーム(主流)になりそうな立ち位置です。

Cinebench 2024 の測定 で、マルチコア800台、シングルコア125前後のようで、マルチコアに関してはちょうど第13世代 Core を置きかえる位置。
そしてシングルコアにおいては現行トップと言えます。
価格も比較的安く、搭載機は10万円台。これから製品がどんどん出てくるでしょう。

一方、Ryzen AI Max 搭載のノートパソコンも、2月末から発売が始まりました。
AMD の超高級CPUで、Cinebench 2024 の測定 でマルチコアは1500を超えるようです。
ただしシングルコアは 115 で、Ryzen AI 9 HX370 と変わりません。

内蔵GPUは 3DMark TimeSpy の測定 で 9000 程で、ノート用の GeForce RTX 4050 と 4060 の中間ぐらいになるようです。
ついに現行ビデオカードを超える内蔵グラフィック機能の登場、まさに現在最強のノートPC用CPUですが…… 搭載機のお値段は40万円前後。
やはりお高いですね……

一方、NEC は Core i7-1255U などの第12世代 Core を、Dynabook も Core i7-1355U などの第13世代 Core を春の新製品に使っていて、最新性能を追わない傾向が見られます。
富士通は軽量機に初代の Core Ultra(Meteor Lake)を使用。

ここに Snapdragon X まで加わって、特に日本国内では、ノートパソコンに使われている CPU が多種多様な状態となっています。

デスクトップパソコンは、2月末に Core Ultra 200S(Arrow Lake)の一般向け(無印版)が、発売開始となりました。
さっそくマウスコンピューターやドスパラなどの BTO メーカーが搭載機種を出していますが、まだ数は少なく、3月中に徐々に拡大していくものと見られます。

巷のベンチマーク報告によると、消費電力は標準設定でも最大 260W 近くになるようで、K付きに匹敵するレベルですが、そのぶんハイパワー。
ただ、非ブースト時は 120W ほどに落ちるようで、マルチコア性能は平均で 28000 ほど。
Core i7-14700 がスコア 20000 ほどだったので、かなりの強化と言えますが、電力相応とも言えそうです。(一覧表は こちら を)
ともあれ、Zen4 の Ryzen 9 や第13世代 Core のK付きに匹敵します。

一方で、Arrow Lake がノート用CPU(Meteor Lake)の改修型であるためか、発熱が低いようで、扱いやすさもあるようです。

ライバルである Zen5 の Ryzen が、高くても 100W 前後の省エネながら、その分マルチコアのスコアは低めで、発熱は相応にあるので、相対的な性質になっているようです。
シングルコア性能は Zen5 と Arrow Lake でほぼ互角の模様。

また、CPU ではありませんが、最新ビデオカード GeForce RTX 5070Ti が2月末に発売されています。
性能は GeForce RTX 4070Ti 以上、GeForce RTX 4080 以下。(一覧は こちら
ガッカリと言っている人もいれば、期待通りと言う人もいて、感想は人によってまちまち。
妥当な性能とは言えるでしょう。

ただ、GeForce 5000 シリーズは最新の DLSS である「DLSS4」を使えるのがウリで、これによって実働性能は非常に高くなる…… と、NVIDIA はアピールしています。

販売価格は日本の場合、約15万円ほど。
3月1日時点では、Core Ultra 7 265F と GeForce RTX 5070Ti 搭載機だと、ドスパラの場合で約42万円ほど。
ちなみに Ryzen 7 9800X3D + GeForce RTX 5070Ti だと約47万円です。
やはり価格は高く、メインストリームと言える価格帯ではありません。

なお、Core Ultra 7 265F と GeForce RTX 4060 なら、24万円ほどで従来と同じぐらい。
Ryzen の X3D は高額機でないとコスパが悪い(GeForce 4060 クラスなら X3D にするお金でビデオカードのランクを上げた方が良い)ので、無印の Core Ultra 200 シリーズは、特にゲーミングモデルで主流となっていきそうです。
Zen5 の Ryzen の方は消費電力が低いため、どちらかと言うと事務向けの性能です。

今後のCPUの予定ですが……
Intel も AMD も AI 関連の発表中心に戻っていて、個人向けに関する公式発表はありません。

ただ、Intel がオハイオ州で進めていた工場の操業開始を2030年以降まで延期すると発表。
この工場は高 NA EUV 露光装置を導入し、Intel 14A と呼ばれる新世代のCPUの開発を行う予定だったのですが、当初2027年に生産開始だったそれは、2030~2031年に遅れる見通しとなっています。
CPUの進歩が大きく遅れることを意味する、残念な発表です。

一方で、Intel は決算報告の中で、Intel 18A の設計で生産される「Panther Lake」の開発は、2025年下半期の発売に向けて順調だとコメント。
12コアのCPUで、次世代の内蔵GPU「Xe3」を搭載するとされています。

ただ、新技術が導入される Panther Lake はパッケージングが複雑化するため、予定通りに進まず、2026年にズレ込むのではないか、という憶測もあります。

その次の「Nova Lake」については公式の情報はまだありませんが、Panther Lake はノート用のCPUとなり、Nova Lake がデスクトップも含む汎用のCPUになると見られています。
しかしそれだと、2026年以降の発売となる Nova Lake まで間があるため、噂だけで終わった「Arrow Lake Refresh」がデスクトップ用で出るのでは? みたいな話が出てきてます。
とは言え、噂というより推測で、信憑性がある話ではありません。

AMD の Zen6 については、コア名が Medusa(メデューサ)という名前になるらしい、ということ以外に明確な情報はありません。
TSMC2nm で作られるという噂がありますが、これも推測に近いと思われます。

ビデオカードについては、GeForce RTX 5070 が3月上旬に発売される模様。
一方で、AMD も新型の Radeon RX 9000 シリーズを同時期に発売します。

すっかり少数派となった Radeon ですが、新しい FSR(GeForce の DLSS に相当)を導入予定で、大幅に性能が向上するとアピール。
しかし新しい FSR は新型ビデオカード専用となるようで、環境を問わず(GeForce でも)使えた従来の FSR の利点がなくなると、批判的な意見も少なからずあります。

今はまだ新型CPUが登場したばかりで、次のCPUの話題が出始めたばかりの状態。
これから色々な情報が飛び交っていくことでしょう。


現在おすすめのパソコンは、ノートPCは こちら、ゲーミングPCは こちら をご覧ください。

CPU の基本説明は こちら、用語については こちら で解説しています。

CPUの性能一覧グラフは こちら、ビデオカードの性能一覧グラフは こちら です。

(以下は過去ログです)

※2025年2月1日版

Intel(インテル)と AMD が発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。

ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。

CPUロードマップ(2025年2月)

2025年1月8日から13日にかけて、ラスベガスで大規模な技術展示会「CES 2025」が開催されました。
ここで Intel、AMD、NVIDIA、Arm、Qualcomm など、CPU や AI に関わる各社が重要な発表を行っています。

そこで今回はその内容を、最近の動向と共にまとめてお伝えいたします。

Intel(インテル)

Intel は新設計「Intel 18A」で製造される次世代CPU「Panther Lake」の試作品を公開。
2025年度内の発売に向けて、開発が順調であることをアピールしました。
これは従来の発表と何ら変わりませんが、Intel は赤字拡大・人員削減・買収騒ぎなど色々あったので、「そんな中でも予定通りですよ」と改めて主張したかったものと思われます。

Intel CES2025, Panther Lake 18A

そして新しい Core Ultra シリーズとなる、ノートPC用の最上位のCPU「Core Ultra 200HX」、ゲーミング/クリエイターノート向けとなる「Core Ultra 200H」、安価なノートPC向けのCPU「Core Ultra 200U」を発表しました。

これらは全て Arrow Lake であり、よって初代 Core Ultra である Meteor Lake の改修型。
Arrow Lake は元はデスクトップ用に開発されていたため、高出力で多コアです。
省電力重視でコアの少ない Lunar Lake とは性質が異なります。

従来の第13/14世代 Core シリーズを置き換える CPU であり、今後メインストリームはこちらが担い、Lunar Lake こと Core Ultra 200V は軽量薄型ノート用のプレミアムCPUになる模様。

コア数とTDP(電力の目安)は、Core Ultra 200HX は最大24コアで、標準のTDPは55W。
Core Ultra 200H は最大16コアで、TDP28~45Wの模様。

Intel CES2025, Core Ultra 200H

ベースが Meteor Lake である Arrow Lake は、AI 機能(NPU)は第1世代で弱く、内蔵グラフィック機能も初代 Xe で、Lunar Lake の Xe2 より弱いです。
よって Core Ultra 200HX と 200H は、ビデオカード搭載ノートでの使用が前提と思われます。
ただ、200H には内蔵GPUを AI に活用しやすくする XMX という技術が備わります。

さらに、まだK付きしか出ていなかったデスクトップPC用の Arrow Lake(Core Ultra 200S)の一般モデル(無印版)が発表されました。
Core Ultra 9 285 と、Core Ultra 7 265、さらに Core Ultra 5 には 245、235、225 の3モデルがあり、内蔵GPUがないもの(F)、省電力型のもの(T)も用意されます。

Intel CES2025, Core Ultra 200S

コア構成は、Core Ultra 9 はPコアが8、Eコアは16。ハイパースレッディングは廃止されているため計24スレッド。
Core Ultra 7 はPコア8、Eコア12の20スレッドです。
Core Ultra 5 は 245 と 235 はPコア6、Eコア8ですが、Core Ultra 5 225 だけEコアが4つしかなく、キャッシュも少なめの下位モデルとなっています。

TDP は Core Ultra 9 と 7 が 65W~182W で、Core Ultra 5 は 65~121W。
ライバルである Zen5 のデスクトップ用 Ryzen も基準のTDPは 65W ですが、高くても 100W ほどしか電力を消費しないので、良いのか悪いのかはともかく、Core Ultra 無印版の方が出力は高くなりそうです。

省電力型のTモデルは 35W~112/114W ですが、もちろん性能は低め。
常にコンセントに繋がっているデスクトップPCはそこまで省電力化する必要がないので、Tモデルは超小型PCなどの特殊機向けと言えます。

ノートPC用の新モデルも含め、まだ発売日は明らかになっていません。
第1四半期と発表されたのみです。(アメリカの場合は1月~3月)
毎年、デスクトップ用CPUの一般モデルは1月に発売されていたのですが、今回は遅れ気味。

定価は Core Ultra 9 285 と Core i9-14900、Core Ultra 7 265 と Core i7-14700 が全く一緒なので、価格据え置きのようです。
ただ、円安の影響があるため、日本での実売価格は出てみないと分かりません。

他に、グラフィック機能「Intel Arc」を搭載するビデオカードの新型「Intel Arc Bシリーズ」の発売をアピールしていました。

Intel CES2025, Intel Arc B-series

これは Battlemage と呼ばれている Intel Arc の第2世代で、2024年12月から発売されており、性能は NVIDIA の GeForce に及ばないものの、価格が安くてコスパが良いと、ゲーマーの間で評判になっています。

XeSS(GeForce の DLSS に相当するグラフィック技術)も「XeSS 2」となり、Battlemage の公開と同時にアップデートされています。
(このアップデートで Lunar Lake のゲーム速度もアップしたのを確認しています。レビューは こちら を)

Intel CES2025, XeSS2

ただ、NVIDIA も1月末から GeForce 5000 シリーズの発売を開始するので、それに対抗できるかどうかはまだわかりません。
いずれにせよ、Intel は今後もこの分野への投資を続けると発表しています。

ちなみに、Intel Arc は初代がアルケミスト(錬金術師)、第2世代がバトルメイジ(魔術師)と魔法使い系の名前が付いていますが、深い意味はありません。
頭文字が A・B・C・D …… となるゲームっぽい名前を付けているだけで、次はセレスティアル(天界人)、その次はドルイド(ドルイド僧)になる予定です。

他に Intel は、自動車メーカーや AWS(Amazon ウェブサービス)との協業などをアピールしていました。
Intel の公式発表は こちら、発表会の模様(動画)は こちらこちら をご覧ください。

AMD(アドバンスト マイクロ デバイセズ)

AMD はノートPC用の最上位CPUとして「Ryzen AI Max」シリーズを発表。
さらに、まだ Ryzen AI 9 しかなかった Ryzen AI シリーズに、Ryzen AI 7 と 5 を追加。
加えて安価なモデルとして、Zen4 の後期型(Hawk Point)を搭載する Ryzen 200 シリーズ(名前に AI がない)を発表しています。

Ryzen AI Max は高級ノートPC向けの製品で、Strix Halo と呼ばれる新型コアを搭載。
Ryzen AI Max 385、390、Max+ 395 があり、それぞれビジネス向けのセキュリティを備えた PRO モデルも用意されます。
PRO モデルには 380 もある模様。

AMD CES2025, Ryzen AI Max

Max 385 は8コア、Max 390 は12コア、Max+ 395 は16コア。(PRO 380 は6コア)
Ryzen AI はハイパースレッディングに相当する SMT が適用されているため、スレッド数は2倍となります。

TDP はすべて 45~120W。Core Ultra 200HX は 55W なので、同等と思われます。

内蔵GPUは、Ryzen AI 9 HX370 のグラフィックス コアが16だったのに対し、Ryzen AI Max 385 と 390 は32、Ryzen AI Max+ 395 は40に及びます。
NPU も50TOPS、内蔵GPUを含めて106TOPSになり、最強のノート用CPUとなりそうですが、安くはないでしょうね……
搭載機は、HP と ASUS のものが紹介されていました。

一方、Ryzen AI 7 と 5 は、ノート用 Zen5 待望の中間モデルとなります。
Ryzen AI 7 350 と Ryzen AI 5 340 の2種類があり、それぞれ PRO モデルも用意。

AMD CES2025, Ryzen AI 7, Ryzen AI 5

コア構成は、Ryzen AI 7 は Zen5 3コア、Zen5c 5コアの、計8コア16スレッド。
Ryzen AI 5 は Zen5 3コア、Zen5c 3コアの、計6コア12スレッド。
コア名は、Ryzen AI 7 は先行している Ryzen AI 9 と同じ Strix Point ですが、Ryzen AI 5 は Krackan Point と呼ばれています。

Ryzen AI 7 のベンチマークスコアは Lunar Lake(Core Ultra 200V)と大差ないようなので、消費電力が大きいぶん、単純比較では不利。
ただ、Lunar Lake は相応にお高いので、安くすれば勝負できそう。
その意味でもライバルは Core Ultra 200H シリーズ(Arrow Lake)となるでしょう。

新設の安価モデルである Ryzen 200 シリーズは、Ryzen 9 から Ryzen 3 までモデルが豊富。
前述したように Zen4 なので、内蔵のグラフィック機能(GPU)や NPU は、一世代前です。
NPU が備わっていない製品もあります。

発売日は、Ryzen AI 7 はレノボやNECなどの一部のノートPCで、すでに発売済み。
Ryzen AI Max と Ryzen AI 5 は第1四半期、Ryzen 200 シリーズは第2四半期の予定です。

デスクトップPC向けのCPUでは、積層キャッシュを搭載したゲーム向けCPU、X3D シリーズの新型「Ryzen 9 9900X3D」が発表されました。
現在人気の Ryzen 7 9800X3D の Ryzen 9 版で、より上位の 9950X3D もあります。

AMD CES2025, Ryzen 9 9950X3D

9900X3D は12コア24スレッド、TDP120W。L3キャッシュは実に128MB。
9950X3D は16コア32スレッド、TDP170W、キャッシュはほぼ同じ。

ただ、ゲーミング性能は Ryzen 7 9800X3D と大きく違わない、という話もあります。
そもそもCPUの処理能力は、ほとんどのゲームで与える影響は大きくなく、キャッシュがそこまで変わらないならゲームの速度も大差ないのは道理。
AMD はゲームとコンテンツクリエイター向けの製品とアピールしています。

他に、携帯ゲームPC向けのCPUである「Ryzen Z2」シリーズを発表。
Ryzen Z1 Extreme がGPUコア12だったのに対し、Ryzen Z2 Extreme は16に増加。
コアの種類がよくわからないのですが、内蔵GPUは RDNA3.5 という Zen5 世代のものです。
こちらも第1四半期に発売予定。

最近の AMD は企業向けの AI 関連の発表が多かったのですが、CES 2025 はコンシューマー(消費者)向けの技術発表会なので、個人向けの製品に集中していました。

AMD の公式発表は、ノート用CPUについては こちら、デスクトップ向けについては こちら
発表会の模様(動画)は こちら をご覧ください。

NVIDIA(エヌビディア)

NVIDIA は待望の新型ビデオカード GeForce RTX 5000 シリーズを発表しました。
新設計の GPU「Blackwell」を搭載する新モデルです。
1月30日から GeForce RTX 5090 と 5080 が発売され、2月20日から GeForce RTX 5070 と 5070Ti も発売となります。

価格は 5090 が約39万円、5080 は約20万円、5070Ti が約15万円、5070 は約11万円と NVIDIA の公式ページで発表されていますが、実際の価格は製品によります。
GeForce RTX 5060 についてのコメントはまだありません。

NVIDIA CES2025, GeForce RTX 5000

GeForce RTX 5000 シリーズは基本性能が向上しているだけでなく、DLSS も最新の DLSS 4 を利用できます。

この新しい DLSS はスーパーコンピューターでトレーニングされた高度な AI を含み、ピクセル単位でのレイトレーシングや、1フレームを元に3フレームを予測生成することも可能で、グラフィックの処理能力を大幅に向上させるとのこと。

ビデオメモリは Micron 製の GDDR7 が搭載されており、そのデータ転送速度は従来の2倍。
Blackwell の AI 処理速度も GeForce 4000(Ada Lovelace)の3倍、レイトレーシングは2倍、3D描画の頂点計算は1.5倍になっています。

これにより、GeForce RTX 5070 でも DLSS 4 によって GeForce RTX 4090 と同等のパフォーマンスを発揮できるとのこと。

NVIDIA CES2025, RTX Blackwell

ただし、最大消費電力は増加しており、GeForce 4000 シリーズはもちろん、GeForce 3000 シリーズよりも高くなっています。

ノートPC用の GeForce RTX 5000 シリーズは3月から搭載製品が登場予定で、Max-Q と呼ばれる省電力技術により低発熱・低電力で従来の2倍のパフォーマンスを発揮できるとのこと。
このパフォーマンスには、クリエイト作業や AI 処理も含みます。
新ビデオメモリ GDDR7 も電力効率の向上に寄与している模様。

NVIDIA CES2025, GeForce RTX 5070 搭載ノート

他には、AI、自動車、ロボットなどのアピールがありました。
今の NVIDIA は AI がメインの会社なので、発表時間の大半は AI 関連でした。
自動車は日本のメーカーではトヨタと提携しており、次世代自動車開発を進めているとのこと。
新開発の AI 自動運転システム Thor は、従来の Orin の20倍の処理能力を持つようです。

個人的に注目だったのは、超小型AIデスクトップPC、Project DIGITS。
手のひらサイズのミニデスクトップPCで、すでに量産体制に入っているとのこと。

NVIDIA CES2025, Project DIGITS

ここには Blackwell の GPU と直結した「Grace CPU」という SoC が搭載されています。
これは Arm プロセッサのひとつで、MediaTek と協力して開発されており、つまり NVIDIA の新しい個人向けCPUとも言えます。

これが一般向けに市販されるのかどうかはわかりませんが、将来 Intel、AMD、Qualcomm に続く、CPU の新勢力になる…… かも?

NVIDIA の GeForce RTX 5000 シリーズに関する公式発表は こちら、製品については こちら
CES 2025 に関する発表と講演の模様は こちら をご覧ください。

Qualcomm(クアルコム)と Arm(アーム)

Arm プロセッサの Snapdragon X シリーズを発売している Qualcomm は、新しい CPU「Snapdragon X(無印)」を発表しました。
従来の上位型 Snapdragon X Elite、下位型 Snapdragon X Plus に続く、X のあとに何もない安価モデルです。

Qualcomm CES2025, Snapdragon X

Qualcomm は昨年秋、Snapdragon X Plus の下位モデルを発売して安価PC市場を狙っていたのですが、もっと下位を狙う模様。
名前が「Snapdragon X X1-26-100」なので、TDP はおそらく26W。

10万円前後の低価格ノートで AI PC を実現させるというコンセプトのようで、Core 5 120U(第13世代 Core i5 と同等)と比べて速度1.6倍、電力効率1.7倍とアピールされていました。

ただし OS が ARM版Windows なので、動くソフトウェアが少ない欠点は依然としてあります。
詳しくは こちら を。

そして、ちょっと気になるのは…… Arm との関係。
Snapdragon X は Arm プロセッサな訳ですが、Arm と Qualcomm はライセンス問題で対立していて、ずっと法廷闘争が続いていました。
これは Snapdragon X の誕生で和解したのかなと思っていたのですが、全然そんなことはなく、昨年末に Arm がライセンス取消を通告するまでに悪化していたようです。
詳細は ITmedia の記事がわかりやすいです。

この問題は12月末のアメリカの裁判で Qualcomm が勝訴し、ライセンス違反はなかったとして今後も Snapdragon X の販売を続けられることになったのですが……

そのためか、CES 2025 で Arm は Qualcomm については言及せず、Mediatek と NVIDIA との協力を強調。
先に紹介した MediaTek と NVIDIA による新ARMプロセッサ「Grace CPU」を使い、Linux と Windows を統合した OS を搭載する、新しい AI PC の構想をアピールしています。

ちなみに自動車分野への注力も発表しており、F1 に参加、Arm の AI を搭載したホンダのコンセプトカーも展示されていた模様。

昨年、Intel が Arm 株を手放したり、Qualcomm が Intel を買収しようとした話がありましたが、これらも関連した動きだったのかもしれません。
今年も Arm プロセッサと Snapdragon X は、前年とは少し違う意味で、引き続き注目です。
Snapdragon X の公式動画は こちら をご覧ください。


※2025年1月1日版

Intel(インテル)と AMD が発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。

ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。

CPUロードマップ(2025年1月)

2024年12月には、PC市場、及びCPUの開発について、目立った話はありませんでした。
なぜなら2025年1月8日から13日にかけて、アメリカで「CES 2025」という大規模イベントが開催され、そこで新型CPUや新たなテクノロジーの発表が行われるからです。
今は Intel、AMD、さらに NVIDIA、各社その準備期間と言えます。

そこで今回は2024年の動向と、2025年の予定について、簡単にまとめておこうと思います。

まず Intel は、2024年は最大の試練の年となりました。
夏に発表された決算が大赤字、株価も大暴落となり、それは半導体業界全体に波及します。
人員や設備投資の削減などが発表され、CEOも退任、買収されるという噂も続発され、今後が不透明となっています。

しかし個人向けパソコンのCPUで、依然として大きなシェアを持っており、特に Core Ultra(Meteor Lake)の発売で、専用AI機能(NPU)を内蔵する AI PC の時代を切り開きました。
昨年秋に発売された Core Ultra シリーズ2(Lunar Lake)も高い省電力性能を持ち、早くも新型ノートパソコンの主流になりつつあります。
以前からある第13世代 Core も、安価な普及品として安いノートPCで依然として主流で、むしろ国内家電メーカーの新製品はこちらが中心になっています。

デスクトップ用CPUにおいては、第13/14世代 Core のK付きモデルの不具合が喧伝されたことに加え、新たに発売された Arrow Lake の高負荷時の動作、特にゲームでの実働性能が良くないことがあって、依然としてトップシェアではありますが、評判を落としています。
Arrow Lake(デスクトップ用の Core Ultra)はまだ愛好家向けのK付きモデルしか出ていないため、年明けに発表されると思われる一般向けモデルでの挽回を期待したいところです。

そして2025年は、新設計の Intel 18A が無事に完成し、製品が発売されるかが注目です。
現在主流の 3nm より上位のプロセスルールを持ち、Intel 20A で導入される予定だった新技術も盛り込まれていて、無事に発売されればコンピューターのテクノロジーは1段階向上することになります。

しかし現段階では歩留まり(良品率)が悪すぎて、まともに生産できる状況ではないという報道もあって、予定通り量産に入れるのか疑問視する声も多いです。
Intel の復調は 18A が想定通り作れるのかにかかっていると言っても良いでしょう。

なお、ASML社の高NA EUV露光装置を使って製造される、次世代の設計 Intel 14A は、当初の予定では2027年からの製造となっていました。(今も同様なのかは不明)

AMD は、2024年は飛躍の年となりました。
新設計の Zen5 が登場し、Ryzen AI などの新CPUが発売され AI PC を牽引、Intel が評判を下げたこともあってシェアが拡大しています。
それでもまだ個人向けCPUの売上高は Intel の1/4ですが、サーバー向けCPUの EPYC が好調で大きな収益を上げており、AIブームに乗って追い風が続いています。
一時は NVIDIA に続くAI関連企業としても注目を集めました。

ただ、Zen5 のデスクトップ用CPUは省電力重視であるため、AMDファンが多いPCマニアからは不評で、電力効率は良いのですが、叩く人も少なくありませんでした。
ノート用CPUの Ryzen AI も高性能ですが、Lunar Lake(Core Ultra シリーズ2)と比べると消費電力が多いため、主にゲーミングノートや高級ノート向けとなっていて、ややニッチな製品になりつつあります。

まだラインナップが少なく、性能自体は良いので製品拡充による巻き返しを期待したいところですが、収益の中心がサーバー&AI関連となり、特にゲーミング関連が下降線であるためか、個人向け部門の人員を削減して企業向けAIに注力すると発表。
それが2025年の方針となりそうです。
ただ、直近で言うと Zen5 の X3D(キャッシュを多く積んだゲーム向けCPU)が好調です。

次の設計である Zen6 については、情報がほとんど出ていません。
ここに来て「2026~2027年以降になる。2025年には出ない」という噂も飛んでいます。
ともあれ当面は、Zen5 の製品を増やすことに注力するでしょう。

2024年のCPU関連の大きな出来事のひとつは、Qualcomm(クアルコム)社が Snapdragon X というノートパソコン用の新型 ARM プロセッサを登場させたことです。
スマホ用CPUだった Snapdragon の発展型で、省電力性能に優れ、スリープ中でもネットワークを低電力で維持できます。
これにより Apple 製品だけでなく、Windows PC でも ARM のシェアが拡大しています。

とは言え、ARM版Windows は動かせるソフトウェアが少なく、今のところ用途が限られています。(詳細は こちら を)
Microsoft が ARM版Windows の改良を進めており、Adobe などのソフト会社も ARM 対応を進めていますが、なかなか進展していません。
ARM版Windows のソフトウェア対応は何年も前からの懸念事項で、簡単にできるんだったらとっくの昔に対応しているはずなので、やはり難しいのが実情のようです。

ただ、対応が完了すれば、もしくは次期 Windows で対応できれば、ARM の利用環境は一気に改善され、Qualcomm&ARM が Intel や AMD の強力なライバルになる…… かもしれません。
今のところは大きなシェアは得られていませんが、Qualcomm はAI関連の活動も盛んに行っており、引き続き活発な動きが見られます。
ARM プロセッサは2025年度も注目でしょう。

CPUではありませんが、ビデオカード(グラフィック機能、GPU)の NVIDIA も注目です。
個人向けビデオカードはもはや NVIDIA の GeForce の一強で、AMD の Radeon との差は広がるばかり。
Intel の Arc もまだ発展途上で、同性能だと他より実働速度で劣ります。
そして企業向けのAIアクセラレーターでは NVIDIA がほぼ独占と言っても良い状態です。

ただ、2024年には現行の GeForce 4000 シリーズの後継は登場しませんでした。
NVIDIA は Blackwell という次世代のGPUを開発中で、早ければ年内にもそれで作られた GeForce 5000 シリーズが登場すると言われていたのですが……
先に登場する予定だった Blackwell のAIアクセラレーターも、2024年秋発売 → 年内発売 → 2025年前期発売とのびのびになっており、いつ出てくるのか見当が付きません。

1月8日に行われる CES 2025 で何か発表されると思いますが、この調子だと2025年予定の Blackwell Ultra、2026年予定の Robin も予定通り進むのか微妙です。

とは言え、NVIDIA はAI企業として飛ぶ鳥を落とす勢いで、売上と収益は前年比で倍増。
AI関連の売上は、個人向けのゲーミング&クリエイター向け製品の9倍に及びます。
絶好調なので開発費は潤沢と思われ、その点の心配は無用でしょう。

あえて懸念を言うとすれば、トランプ大統領と、中国の関税と、台湾有事です。
AMD や NVIDIA のようなファブレスは台湾の TSMC と一蓮托生なので、この辺がトラブって TSMC が動かなくなると、予測できない状態となります。

今さら経済戦争や武力紛争が起こるとは思えませんが……
仮に起こると、パソコンはとんでもなく高価になるかもしれません。
どうか2025年も、平和な年でありますように。


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CPU の基本説明は こちら、用語については こちら で解説しています。
CPU の性能一覧グラフは こちら をご覧ください。

メモリなど、他のパーツについては カスタマイズについて のページで説明しています。