Intel(インテル)や AMD などが発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。

ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。

CPUロードマップ(2025年12月)

今回はPCパーツの供給についての話から。
留まることを知らない AI ブームによって大規模な AI データセンターが各地に建設されており、それに伴ってメモリやストレージの品薄が起こっています。

そろそろ AI ブームも落ち着くのでは? とも言われていたのですが、NVIDIA の決算は絶好調、Google が Gemini 3 という新型 AI を公開したこともあって、下火になる気配はありません。

しかしその影響でメモリが不足しており、価格が高騰
これまで一般パーツへの影響は少なかったのですが、10~11月にかけてこれまでにないほど急騰しており、製品によっては2倍ほどの値段になっています。

メモリメーカーのマイクロンは AI 向けメモリ(HBM)の生産は2026年分まで予約でいっぱいだと述べており、一般向けメモリの生産ラインが圧迫されることになりそうです。
SKハイニックスやサムスンも在庫がほとんどなくなっており、他の製品の生産ラインをメモリに振り分けるなどして対応していますが、それはすべて AI 向けになるようで、一般向けの供給はむしろ抑制されると見られています。

加えて HDD や SSD の価格も急上昇中
SSD はメモリと同じく10月から急騰しており、しかも2026年には需要が供給を上回ると見られていて、深刻な品薄が予想されています。
サムスンやキオクシアの企業向け SSD は納期が1年先とも言われており、台湾の SSD メーカー Phison の CEO は「SSD の不足は10年続く」とコメントしています。
製品の枯渇を防ぐため、SSD メーカー各社が供給調整をするという話も出ています。

もちろん、各メーカーとも増産に動いてはいますが、製造するための装置が1年や2年待ちという状態だったりするため、目処が立たない模様。

HDD はもっと深刻で、米ウエスタンデジタルの企業向けの HDD は2年待ちとも言われており、台湾の ADATA の CEO は「時間とともに状況は悪化するだけだ」とコメント。
そして HDD はもう増産の予定がなく、AI 向けの生産が優先されているため、一般向けの不足は SSD より早いかもしれません。

これらはもちろん、パソコンの価格の高騰や納期の遅れにつながります。
それでなくても高くなっているのに、ますます値上がりしそうで、一般ユーザーには厳しい状況になりそうです……
レノボは「2026年末までのメモリの在庫を確保している」と公表しており、対応はできているようですが、ASUS は2025年末までしかメモリの在庫がないようで、メモリの搭載量を減らすことを考えている模様。
DELL は「すべてのPCパーツの不足が予測される」と述べており、DELL や HP の株価は下落傾向にあります。

このような状況のため、NVIDIA や AMD が下位のビデオカードの販売を停止、もしくは供給量を下げるのではないかという報道も出てきています。
確かに利益率の低い廉価ビデオカードに、いまや貴重になりつつある VRAM(ビデオメモリ)を使うのは無駄に思えるのは否めません。
しかしそうなると、ゲーミングPCの価格は底上げされることになってしまいます。

一時期、仮想通貨のマイニングでビデオカードが不足しましたが……
来年はもっと深刻かつ広範囲に影響が出そうで、それはルーターやプリンターなどの周辺機器、さらにスマホやタブレットなどのコストも上昇することを意味します……

なお、先ほど述べた Google の新型高性能 AI「Gemini 3」ですが、TPU という新しい種類のパーツを使っていることで話題になっています。
これは AI のために設計・開発された、AI 専用の処理装置です。
元々は Google 検索の補助用だったのですが、最新のものは AI 開発に最適化されました。

TPU Ironwood
※第7世代 TPU「IronWood」。2025年4月に発表され、11月7日より提供開始。

今の AI 処理の多くは NVIDIA のデータセンター向け GPU が行っていますが、GPU は元々は、グラフィック処理のために作られたもの。
一方、TPU は最初から AI 特化で設計されています。しかも GPU より省電力。

そのぶん出来ることは狭く、必要に応じて GPU も併用しなければならないのですが、Google は独自に開発した高性能 TPU と Gemini 3 によって、OpenAI の ChatGPT を越えるとも言われる AI を完成させました。
11月末、作業によっては Gemini 3 以上と言われる Claude Opus 4.5 という AI を Anthropic(アンソロピック)という会社が登場させたのですが、これも Google の TPU を借りて動いています。

こうなるとピンチなのは OpenAI で、そこに巨額投資した NVIDIA やソフトバンクグループ、OpenAI とタッグを組んだ AMD、そこにクラウドサービスを提供する Oracle の今後が懸念されています。
TPU はまだ Google 専用ですが、Meta(Facebook)が興味を示しており、もし他社にも提供されるようなことになると、NVIDIA の一強体制が崩れるのでは? とも言われています。

ただ、最高の対話向け AI と言われる X の Grok は NVIDIA GPU で動いていて、Google TPU が全面的に強い訳ではない模様。
なお、Google TPU の設計・開発にはブロードコムが協力しています。
Amazon も独自の AI チップを開発していますが、こちらはまだ NVIDIA の GPU(H100)に劣るようです。

ちなみに、OpenAI と Arm、ブロードコムが提携し「Arm 陣営の AI 半導体を作る」と発表していましたが、その Arm が NVIDIA とも新たに提携(NVLink への参加)を表明していて、また話題なっています。
裏切りか? と言われていたりもするようですが、NVIDIA が作っている AI サーバー向け CPU の Grace は ARMプロセッサ ですし、元々関係はありました。

さて、AI が周囲を巻き込んで大きなうねりを見せている一方で、Intel や AMD の CPU 開発には目立った動きはありません。
Intel は10月に Panther Lake の詳細を発表し、AMD は AI に関する発表を立て続けに行っていたので、11月はこれらの準備中と言ったところ。
ただ、どちらも新CPUの発売が迫っているので、非公式な噂は飛び交っています。

Intel の新しいデスクトップ向け CPU「Arrow Lake Refresh」は、まずK付きの3モデルが登場するものと見られています。
Core Ultra 9 290K Plus、Core Ultra 7 270K Plus、Core Ultra 5 250K Plus になるという噂が伝わっており、Arrow Lake のK付きと比較して Core Ultra 9 はクロック数の上昇のみに留まるようですが、Core Ultra 7 と Core Ultra 5 はEコアが増えるものと見られています。

正確なところは来年1月6日~9日に開催されるイベント「CES2026」で発表されるでしょう。
発売はその後、1月末になるものと思われます。
Panther Lake(Core Ultra 300シリーズ)については先月の記事をご覧ください。
こちらはノートパソコン向けです。

AMD は来年初頭に登場すると見られる Gorgon Point(Ryzen AI 400シリーズ)のスペックが伝わっています。
こちらは Ryzen AI 9 465 や Ryzen AI 7 450 といった名前になるようで、レノボの試作機のベンチマーク結果がネット上のデータベースに残されていたため、確実と見られています。

現行の Ryzen AI 9 365 と Ryzen AI 7 350 の後継のようで、コア数やスレッド数は変わらず、内蔵 GPU も同じ。
表面上のスペックはブースト時のクロック上限が違うのみですが、内部の最適化などが行われているものと思われます。

こちらも詳しくは CES2026 で発表されるでしょう。
なお、Ryzen AI の上位型である HX(Strix Halo)や Max(Fire Range)は現行のままです。

Seleno社 プラットフォームロードマップ AMD
※Seleno 社の AMD CPU 搭載ノートPCの更新予定。2026年からは Gorgon Point が中核になっている。

また、11月11日に開催された投資家向けの財務説明会(AMD Financial Analyst Day)において、2026年に 2nm プロセスで作られる Zen6 の EPYC(サーバー用CPU)が登場すること、そして次なる Zen7 の開発が行われていることが示されました。

AMD Financial Analyst Day 2025

後ろのスライドに小さく「Zen 7」と書かれていただけで、特に言及はなかったのですが……
「新しいマトリクスエンジンを搭載し、AI のデータフォーマットに最適化」と書かれているのがわかります。

さらに Intel と協力し、x86 CPU を盛り上げる(Arm に対抗する)とコメントしていました。
なお、Google の Gemini 3 が公開されたのは、この1週間後です。

12月には、いよいよ Panther Lake 搭載ノートPCが登場するものと思われます。
メモリやストレージが心配ですが、まだしばらくは市場に在庫があるはずなので、春ぐらいまでは深刻なことにはならない…… と、思いたいところです。


CPU の基本説明は こちら、用語については こちら で解説しています。
GPU については こちら をご覧ください。

CPUの性能一覧グラフは こちら、ビデオカードの性能一覧グラフは こちら をご覧ください。

(以下は過去ログです)

※2025年11月1日版

Intel(インテル)や AMD などが発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。

ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。

CPUロードマップ(2025年11月)

10月9日、Intel は次の新CPU「Panther Lake」の詳細を正式発表しました。

年末に発売される「Core Ultra シリーズ3」となるこの CPU は Intel 18A と呼ばれる設計で作られ、新型のトランジスタ RibbonFET、基板の裏から給電を行える PowerVia といった新技術が導入されます。
これらにより必要な配線の量が減り、その分を他に振り分けられるとしています。

Intel 18A

ただ、Intel は「Arrow Lake の進化型」と述べており、新しい Pコア(Cougar Cove)と EコアDarkmont)は、Arrow Lake や Lunar Lake で使われていた Pコア(Lion Cove)と Eコア(Skymont)の改良型であるようです。

構造は Lunar Lake に近いようですが、標準的な CPU と同じくメモリの内蔵はしていません。

完全な新型だとトラブルが付き物なので、従来型の延長線上にあることは信頼性の面では安心感があります。

Cougar Cove

Darkmont

コア構成は Pコア4、Eコア8、LP-Eコア4 の計16コアと、Pコア4、LP-Eコア4 の計8コアの2種類がある模様。

Intel は Arrow Lake(ノート用)や Lunar Lake と比べ、シングルコア性能は10%向上、低電力時だと40%向上。
マルチコア性能は Lunar Lake 比で50%向上(ただし Lunar Lake はマルチコアは弱い)、低電力時も Arrow Lake 比で30%向上しているとアピールしています。

なお、Lunar Lake にはEコアがなく、Arrow Lake は LP-E コアだけ別のタイルにあったのですが、今回はこれをすべて同じタイルに搭載しており、設計が効率化されています。

Panther Lake タイル設計

もちろん処理の最適化はさらに進んでおり、メモリ周りや電力管理の改良も行われています。

ハイパースレッディングは導入されていないため16コアなら16スレッド、8コアなら8スレッドですが、スレッドスケジューリングの改良により効率的に動作するとのこと。

Panther Lake スレッドスケジューリング
※Raptor Lake はPコアで処理する分の余りをEコアに送っていたが、Meteor Lake や Lunar Lake はLP-Eコアで処理して手に余る分を他のコアに送っていた。Panther Lake はLP-Eコア→Eコア→Pコアと負荷に応じて順次送っていく。

GPU(内蔵グラフィック機能)は「Xe3」と呼ばれる新しいものになっています。
そのパワーは巷ではビデオカードの GeForce RTX 3050 を超えると言われており、内蔵の GPU としては現行トップの性能を持つ模様。
とは言え、Intel Arc はドライバやソフト側の最適化の問題で実力を発揮できないことも多いのですが……(最近はだいぶ良くなってますが)

Panther Lake には Xe3 が4コアのものと12コアのものがあるようで、4コア版は Intel 3 で、12コア版は TSMC N3E(TSMC3nm の第2世代)で作られるとのこと。

Lunar Lake の GPU より性能が50%アップし、電力効率は Arrow Lake H よりも40%向上していると Intel は述べています。

Panter Lake Xe3 GPU

なお、Intel Arc の初期版は Alchemist(錬金術師)、第2世代は Battlemage(魔術師)、第3世代は Celestial(天界人)という愛称になると言われていましたが、Intel スタッフがインタビューで「この Xe3 は Celestial ではなく Xe2 Prime か Xe2 Plus Plus と言えるものだ」とコメント
新型と言うより Xe2 の強化版にあたるようです。

NPU(AI 専用処理機能)も「NPU 5」という新型になりますが、処理能力は 50TOPS で、前世代の 48TOPS とほとんど変わりません。
ただ、サイズを小さくしている模様。
GPU を AI に活用しやすくする XMX という機能が Lunar Lake に続いて適用されており、CPU で10TOPS、NPU で50TOPS、GPU で120TOPS、合わせて180TOPSの AI 能力になるよ、と Intel はアピールしています。

Panther Lake NPU5

なお、Lunar Lake に導入されていたカメラの制御機能が IPU7.5 という新バージョンになって備わる模様です。

製品名はまだ公式に発表されていませんが、上位型は「Core Ultra X9 / X7 / X5」という名前になるようで、例として Core Ultra X7 358H といった型番になりそうです。

より詳細な情報は発売日が近くなれば、改めて公表されると思われます。
Intel のニュースリリースは こちら、発表会の動画は こちらこちら をご覧ください。

なお、先月は Intel の決算発表もありました。
ずっと悪い決算が続いていて評判ボロボロだった Intel ですが、今回は好決算。
久々に業績が好転しています。

ただ、ここに来て第14世代 Core の人気が急上昇、個人向けはもちろん同世代のデータセンター向け CPU も供給が追いついておらず、今は市場に在庫があるので大きな影響はありませんが、在庫が尽きたら値上がりするかもしれません。

人気の理由は、個人向けに関しては、処理能力が必要十分で Core Ultra より割安、NPU がなくても問題ないことも周知されたためのようです。
デスクトップPCに関しては、各種ベンチマークで最新ゲームにも安定して強いのがわかったことや、ライバルである Arrow Lake の Core Ultra、X3D でない Zen5(Ryzen 9000)の評判が高くないことも影響していると思われます。
この傾向は Panter Lake や Arrow Lake Refresh が普及段階になるまで続きそうです。

一方 AMD ですが、個人向けの製品に関する話題は乏しいものの、AI に関する大きな発表を立て続けに行っており、市場の大きな話題となっています。
先々月、NVIDIA と Intel の協業が発表されて話題となりましたが、先月は AMD のターン。

まず10月6日、ChatGPT で知られる AI 開発企業 OpenAI が AMD に数十億ドル、日本円で累計200兆円にも及ぶ出資を行う計画があることを発表
AMD のサーバー用 CPU&GPU を数世代にわたって導入し、原発6基分の消費電力になるという超巨大データセンターを構築するとしています。

さらに10月14日、AMD はソフトウェアや AI クラウドサービスを提供する Oracle とも提携
AMD の次期データセンター向けGPU「MI450」を2026年に大規模採用し、2027年以降も拡大していくとしています。

AMD と Oracle の提携

OpenAI は Arm の AI 半導体をブロードコムの協力で生産するとも発表しており、これらの企業の動きは NVIDIA の寡占状態に対抗するもの、とも言われています。

ただ、先々月に NVIDIA が OpenAI への大規模出資を発表しており、それが AMD やブロードコム、さらに Microsoft に流れていて、半導体企業の間で AI で稼いだお金がグルグル回っているだけ、という見方もあります。
Oracle は NVIDIA との協力も発表していて、ここに来て AMD CPU の生産を Intel が請け負うという話も出てきており、単純な NVIDIA VS. 反NVIDIA という話ではなさそう。

なお、日本のソフトバンクグループも Arm を傘下とし、OpenAI や Intel にも出資していて、これらの企業に関わっています。
Snapdragon の Qualcomm も AI 半導体の提供を始めると発表したのですが…… 今さら入っていけるのか疑問。
中東の方に売り込みをかけているようですが……

他に、米エネルギー省が NVIDIA と Oracle に軍事用を含む7台、AMD と HP には研究用に2台のスーパーコンピューターの開発を依頼したという話や、NVIDIA が韓国の政府と企業に GPU の大規模供給を行うといった、国家プロジェクトの話も出てきています。

いまやコンピューターと言えば AI の話ばかり目立つ状況ですが……
年末前はどのみちパソコン関連の動きが乏しい時期。
年末年始が近付くにつれて、個人向けの製品の続報や発売も出てくるものと思います。


※2025年10月1日版

Intel(インテル)や AMD などが発表している、今後の CPU の発売予定です。
つまり、パソコンの「世代」が変わる予定表でもあります。

ただし、あくまで予定であって、実際にこの通りに進むとは限りません。

CPUロードマップ(2025年10月)

いよいよ年末が近くなり、登場が近いと言われている Intel の Panther LakeAllow Lake Refresh への期待が高まっています。
まだ詳細は分かりませんが、AMD の Gorgon Point こと Zen5 の後期型も近いはずです。

今はこれらの登場前であるため、パソコン市場に大きな動きはありませんが、ノートパソコンに関しては GeForce RTX 5050 や 5060 を搭載する、割安なゲーミングノートが出始めました。

10月初めの時点では ASUS、Dell、Lenovo、パソコン工房などが新型機を発売しており、パソコン工房の場合で Ryzen AI 7 と GeForce RTX 5050 の組み合わせだと約19万円。
第14世代 Core i7 と GeForce RTX 5050 の組み合わせは約18万円。
GeForce RTX 5060 を搭載する場合は+1.5~2万円ほどとなり、他のメーカーも大体同じぐらいです。

GeForce RTX 4060 の頃と比べると2~3万円ほど高いですが、パーツ価格の高騰などを考えると仕方のないところでしょう。
ともあれ、いよいよノートPCも本格的に GeForce 5000 シリーズの時代に入りました。

なお、一部で「Core 7 240H」や「Core 5 220H」というCPUを搭載する機種が現れています。
これは安価な性能重視のCPUですが、Pコアの設計(アーキテクチャ)が古く、第12世代 Core や第13世代 Core i5 で使われていたものを使用しています。
シングルコア性能重視で、電力効率は低いですが、安価ゲーミングノートに向いた特徴を持ち、今後のコスパ重視のノートPCで見かけることになるかもしれません。

さて、9月はコンピューター業界に大きな衝撃の走った発表がありました。
NVIDIA と Intel の協業です。

9月18日、NVIDIA が Intel に50億ドル(約7400億円)を出資し、AI データセンターや一般のパソコン向けの半導体を共同開発すると発表
その見返りとして、NVIDIA は Intel の5%ほどの株式を取得しています。

そして今後、以下の2点の開発を行うとのこと。

  • Intel が NVIDIA RTX GPU チップレットを統合した x86 SoC を製造/提供する
    (訳:Intel が NVIDIA の GPU を内蔵する CPU を作る)
  • NVIDIA NVLink による、NVIDIA と Intel の最先端アーキテクチャのシームレスな接続に注力し、Intel が NVIDIA 専用の x86 CPU を製造する
    (訳:NVLink という規格で NVIDIA の GPU に繋げられる Intel のサーバー用 CPU を作る)

このうち一般ユーザーにとって注目なのは、NVIDIA の GPU(グラフィック機能)が Intel の CPU(SoC)に備わるというもの。
内蔵GPUを持つCPUは基本的にノートパソコン向けですが、CPU単体での(ビデオカードなしでの)大幅なゲーミング/クリエイター性能の向上を期待できます。

今の Intel のCPUには Intel Arc というGPUが入っていますが、後発であるためドライバやソフト側の対応が発展途上で、なかなか実力を発揮できていません。
一方、GeForce を始めとする NVIDIA のGPUなら業界標準であり、その心配はありません。
NVIDIA のGPUを内蔵する市販向けのCPUは存在しないので、その点でも興味が湧きます。

発売時期は「1年後ぐらいかな……」という曖昧なコメントがあったのみで、まだ未定。
今後 Intel Arc はどうなるのか? ロードマップに変更はあるのか? 既存の計画はどうなるのか? など疑問点は多いですが、続報に注目です。
なお、Intel は「Intel Arc の開発は今後も続ける」とコメントしています。

ただ、今の NVIDIA は AI メインの会社なので、NVIDIA 的にはそちらより、AI データセンター向けの発表である「Intel CPU が『NVLink』で NVIDIA の GPU に繋がる」という方が本丸でしょう。
NVLink というのは NVIDIA が開発した、CPUとGPUを繋げる規格(インターフェイス)です。

現状のAIサーバーの多くは一般PCでもおなじみの PCI Express という規格で、AMDのサーバー用CPUである EPYC と、NVIDIA のデータセンター向けGPU(H100など)を繋げているものが多いのですが、これだとGPUは8つまでしか繋げられません。

NVLink を使うとGPUを最大72、CPUも最大32まで繋げられるスーパーサーバーを作れるようで、NVIDIA はこれを普及させたいようですが、今のところ NVLink に対応しているCPUは NVIDIA の Grace という Arm プロセッサしかなく、そのため Arm 用のソフトウェアしか動かせない難点があります。

しかし今回の Intel との協業で、Intel が NVLink 対応の x86系(Windows PC でも使われている従来型)のCPUを開発・製造するとのことで、これを NVLink 普及拡大のきっかけにしたいというのが NVIDIA の思惑のようです。

実現すれば生成AIの能力はますます向上し、NVIDIA はさらにAI市場を独占、Intel も全然入り込めないAI関連に入り込むことができ…… そして AMD は締め出されかねません。
今の AMD は EPYC が最大の稼ぎ頭なので、このまま手をこまねいているとは考えられず、どんな対抗策を打ち出してくるのか、こちらも注目です。

ちなみに、以前 AMD と Intel も協業したことがあるのですが、ノート用のCPUをひとつ作っただけですぐダメになりました。
やはりライバル会社が急に協力しようとしても、方針の違いもあってうまくいかないようです。

今回の NVIDIA と Intel の協業もうまく行くとは限りませんが、ただ今回の協業はトランプ大統領の影響も大きいと思われ、ちょうど NVIDIA は中国政府から締め出しを受けたところであり、中国の動向がきな臭くなっていて台湾の TSMC だけに生産を頼っている現状も危険なので、必要に迫られた提携でもありそうです。
ただ、NVIDIA の CEO は今回の提携に関して、アメリカ政府の関与は否定しています。

NVIDIA はさらに AI 開発会社の OpenAI に総額1000億ドルという超巨額投資も発表。
一気にドンと1000億ドル(約15兆円)を出すわけではありませんが、ChatGPT などを開発する OpenAI と提携することで、AIを動かすハードを作る会社から、AI自体を作る会社にステップアップしたいという狙いがあるようです。

もう世界征服でもしそうな勢いですが、それだけ儲かっていて、かつ最先端にいるということでしょうか。
Intel もこの協業による大きな利益を想定しており、それは他のCPUの開発にも好影響を与えるものと思われます。
歴史的とも言われるこの提携が来年以降の計画にどのような影響をもたらすのか、注目です。


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CPU の基本説明は こちら、用語については こちら で解説しています。
CPU の性能一覧グラフは こちら をご覧ください。

メモリなど、他のパーツについては カスタマイズについて のページで説明しています。