パソコンの性能表やカスタマイズに用いられる、実用される用語を中心に解説しています。
グラフィック機能の用語
ビデオカード / グラフィックボード
パソコンのグラフィック機能(特に3Dグラフィック描画性能)を強化するもの。ビデオカード、グラフィックカード、グラフィックボード、VGA(ビデオ グラフィック アクセラレーター)など色々な呼び名がある。特にゲームで必要だが、3D CAD(設計ソフト)やCG制作、動画配信や映像編集、4K画質での映画視聴などにも要求される。略称はグラボ。
CPU内蔵グラフィック機能
そのまんま、CPUに内蔵されているグラフィック機能のこと。画像や映像の表示は内蔵機能でも行えるので、ビデオカードがなくてもパソコンは機能し、その方が安くて消費電力も少ない。しかし最新のゲームなど、高度なグラフィック表示のあるソフトウェアは内蔵機能だけではまともに動かせない。また、内蔵グラフィック機能のないCPUもある。
GPU
- ビデオカードの中にあるグラフィック機能専用のCPU。ビデオカードには専用の処理装置(GPU)と専用メモリ(VRAM)と冷却装置が備わっている。
- 内蔵グラフィック機能があるCPUの、グラフィック機能の部分の呼び名。
- ビデオカードも含む、グラフィック機能全般のこともGPUと呼ばれる。
なお、後者ほど新しい使われ方。
GeForce / NVIDIA
NVIDIA社が販売しているビデオカードの製品名で、近年は一人勝ち状態。読みはジーフォースだが「Ge」はゲームのゲなので、ゲフォとも呼ばれる。NVIDIA社は映像解析やAI技術、自動運転など、多くの分野に関わる大企業だが、日経が謎の半導体メーカーと呼んで話題になったことがあり、ネタ的に謎の会社と言われる。
Radeon
AMD社が販売しているビデオカードの製品名。元はATI社が開発していたがGeForceとのシェア争いに苦戦し、AMDに買収された。PC用のビデオカードとしては下火だが、その技術が家庭用のゲーム機や産業機械、パチスロ等で利用されており、電子機器全体ではまだ主流のひとつ。
Iris Xe
近年のIntel社のノートパソコン向けCPUに入っている内蔵グラフィック機能の名前。それまでのCPU内蔵グラフィック機能より性能が高く、まだビデオカードには及ばないが、軽めのものなら最近のゲームも動かせる。ただし全ての新型CPUにIris Xeが入っている訳ではない。旧来のCPU内蔵グラフィック機能の名前は「Intel UHD」。
Intel Arc
Intel Xeをベースに2022年に登場した、GeForceとRadeonに続く第三のビデオカード。新勢力として話題になったが、発展途上と言え、ゲームやソフトウェア側の対応も進んでおらず、まだこれからといったところ。最新CPUの内蔵グラフィック機能としても用いられ始めた。
GB / VRAM(ビデオメモリ)
GB(ギガバイト)はデータ量の単位で、ビデオカードの性能に8GBという表記があれば、VRAM(ビデオメモリ)が8GBあることを示す。ビデオメモリはグラフィック専用のメモリで、処理が終わったグラフィックデータはここに置かれ、随時使われていく。不足すると動作が遅くなるか、不完全なまま表示されてしまう。生成AIの速度にも大きく影響する。
なお、CPU内蔵グラフィック機能の場合、パソコンのメインメモリの一部をビデオメモリに転用するため、メインメモリが減るうえに、速度も専用メモリより劣る。
GDDR
グラフィックデータ置き場であるVRAM(ビデオメモリ)の種類。DDR3のビデオメモリ版がGDDR4であるなど、普通のメモリとは名前に関連がない。よってGDDR5はDDR5のビデオメモリ版ではないし、DDR4より新型という訳でもない。GDDR5はAMD、GDDR6はサムスン、GDDR6Xはマイクロンの開発で、メーカーもバラバラ。基本的には後の世代ほどデータの出し入れが速い。
メモリ インターフェイス幅 / バス幅 / 帯域幅
VRAM(ビデオメモリ)からデータを運び出す、および運び込む速さ。バス幅(メモリバス)は一度に運べるデータの量を、メモリ帯域幅(バンド幅)は1秒あたりの転送量を表す。モニターの解像度とリフレッシュレートが高い場合、それに見合った転送量がないと表示に遅延が生じてしまう。ただ、低解像度ならGPUの処理が滞らない分だけあれば、無理に高くなくても良い。最近のメーカーはメモリバス(バス幅)をメモリ インターフェイス幅と呼んでいる。
RTX 4060 / 4070 / 4080
GeForceの製品名。GeForce 4000シリーズだと、4050が下位、4060が中位、4070が中の上、4080が上位、4090が最上位となる。もちろん上位ほどお値段は高い。4050は下位だが、それでもCPU内蔵グラフィック機能と比べれば、明らかに上の性能である。
Ti / SUPER
GeForceの製品名で、上位版であることを意味する。GeForce RTX 4070Ti だと、4070 と 4080 の中間になる。お値段も中間。Ti はチタンの略だが、深い意味はなく、硬くて高級そうだから、という理由で付けられた。
SUPER は少し上位の製品で、GeForce RTX 4070 SUPER だと、4070 と 4070Ti の間になる。SUPER が付けられた製品は後期型や強化型である場合が多い。
Laptop / モバイル向け
ノートパソコン用の製品のこと。Laptopとは海外のノートパソコンの呼び名で、ひざの上を意味する。モバイルとは携帯用の意味。同じ名前のビデオカードでもデスクトップパソコン用とノートパソコン用では性能や形状が異なり、ノートパソコン用は消費電力や発熱が少ない分、能力は控えめである。
TDP
サーマル デザイン パワーの略で、直訳すると熱設計電力。これが120Wだと、最大120Wの電力を消費し、その分の熱も発しますよという意味。ビデオカードは消費電力と発熱がとても大きいパーツで、それに応じた出力の電源ユニットを用意しなければならない。また、ノートパソコンだと冷却時の騒音がかなり大きくなり、バッテリーの持続時間も減る。そのためTDPを絞っているノートパソコンも多いが、それだと最大性能は下がる。
TGP / TBP
上記のTDPは、正確にはGPU(コア)の温度と消費電力の目安であり、ビデオメモリやファンなどを含む、ビデオカード全体の消費電力を表していない。それを意味するのがこちらで、TGP は GeForce の、TBP は Radeon の総消費電力である。TDP +30W~60W の場合が多い。
PCI Express / PCIe
データ転送の規格で、PCIeと略される。3.0や4.0、5.0といった世代があり、新世代になるごとに最大速度が倍になっている。
PCIeの取り付け部はPCIeスロットと言い、ビデオカードはPCIe x16スロットに装着する。
他に、短めのx8やx4スロット、小さなx1スロットがあるが、x8やx4のスロットにx1用のパーツ(拡張カード)を差しても動く。
PCIe レーン数
PCI Express(PCIe)のデータ伝送路の数。つまりデータの通り道の本数で、多いほどたくさんのデータを速く運ぶことができる。通常、x16スロットに付けられたビデオカードには16レーンが割り当てられ、これだけあればPCIeの世代が多少古くても十分な速度を保てる。
ただしレーンの総数には上限があって、CPUとマザーボードが持つレーン数の合計となる。
もし他のパーツ(例えば4レーン使うNVMe SSD)がたくさんあって総レーン数が足りなくなると、ビデオカードが8レーンに減ったりする。8レーンでもすごく高性能なものでない限り影響は少ないが、4レーンまで減ると最大速度は大きく下がる。
2スロット占有 / 3スロット占有
厚みがあって、取付部(PCIeスロット)を2つや3つぶん占有してしまうこと。近年のビデオカードは大型の冷却装置が付いているため、2スロット占有が普通になっている。3スロット占有だとかなりの厚みで、もはやビデオカードではなくビデオブロックである。ノートパソコンには無関係で、自分でパーツを着脱しない人も気にしなくて良い。
補助電源
ビデオカードに電気を供給するケーブルで、電源ユニットに繋がっている。6pinと8pinがあり、6pinは75W、8pinは150Wの電気を送れるのだが、ビデオカードを取り付けるPCIeスロットも75Wの送電が可能なので、8pinが1本でも75+150で225Wの電力を供給できる。
75W以下で動くビデオカードなら不要。6+2pinという、6pinにも8pinにもなる端子もある。
最近、12VHPWRという600Wも電気を送れるケーブルが登場したが、大電流すぎて燃える事故が多発したため、あまり使われなくなった。
SLI / CrossFire
ビデオカードを2つ付けて能力をさらにアップさせる合体技。利用条件が厳しく、お金もメチャかかる。SLIはNVIDIA(GeForce)の、CrossFireはAMD(Radeon)の技術。最初から2枚セットになっている製品もあるが、セレブしか買えないお値段。
dGPU / ディスクリートGPU
CPUの外にあるグラフィック機能。つまりビデオカードのことだが、マザーボードに搭載されている場合(オンボード)もある。これに対し、CPU内蔵のグラフィック機能をiGPU(インテグレーテッドGPU)、パソコンの外にある外付けグラフィック機能をeGPU(エクスターナルGPU)と言う。主に海外で使われる用語であり、日本人にはどの英単語も解り辛い。
DLSS
ディープ ラーニング スーパー サンプリングの略称。NVIDIA社(GeForce)の技術。AIで映像を分析し、細密に描画しなくても良いところは荒めに表示して負荷を軽減、処理を高速化させるもの。ただしゲームによって効果は異なり、表示の劣化が目立つこともあるため、対応のゲームでも最初はOFFになっていることが多い。他社も似た技術を導入しており、RadeonのものはFSR、Intel ArcのものはXeSSと呼ぶ。
GeForce 2000 シリーズから追加された機能で、最新の DLSS3 には GeForce 4000 が必要。
リアルタイム レイトレーシング
光(Ray)を追跡(Tracing)する技術。陰影・逆光・反射・屈折といった光の表現を行うもので、GeForce RTX 2000シリーズから追加された。負荷が高くなるため活用されているゲームは多くないが、3D CG の作成など、創作分野でも利用されている。
フレーム生成 / フレーム補間技術
コマとコマ(フレームとフレーム)の間に、新しい画像を生成して挿入する技術。これにより30fps(秒間30コマ)の映像は最大60fpsに、60fpsなら最大120fpsになる。ただしGPUの負荷が高くなるため、逆に速度が落ちる場合が多く、まだ発展途上。元は映像用だったが、2023年からゲームに応用したものが登場。GeForce は DLSS3 に含まれ、Radeon のものは AFMF、Intel のものは ExtraSS と呼ばれている。
DirectX / OpenGL(API)
DirectXはWindowsのグラフィック用ソフトウェアの規格で、ゲームなどの娯楽を想定して作られており、一般のビデオカード(GeForce など)はこのDirectXでの使用を想定している。
一方、主に仕事に使われているOpenGLという規格もあり、設計(CAD)や3D造形ソフトの多くはこちらで動いていて、OpenGL用ビデオカード(NVIDIA RTX、Radeon Pro)が存在する。
専門としていない方は動作速度が低下するが、どの程度かは使うソフトや製品による。
ドライバ
ビデオカードを制御するソフトウェア。普通はパソコンを買ったら最初から入っているが、自分でビデオカードを付けた場合はメーカーのサイトからダウンロードする必要がある。これを最新にしておくことで動作が改善し、トラブルも解消されたりする。NVIDIA社はドライバの更新に力を入れることで、AMD/ATI社との差をつけた。
マイニング / GPGPU / LHR
性能とは直接関係ないが…… マイニングは仮想通貨を生成する作業。近年のビデオカードにはGPGPUと呼ばれる、その処理能力を他の用途にも活用できる機能が備わっているが、それがマイニングに有効だったため仮想通貨で一儲けしたい人がビデオカードを買い占めてしまい、世界的に不足する事態を引き起こしてしまった。近年のパソコン価格の高騰要因の一つで、マイニングに使われることを防止する「LHR」という機能が備わっている製品もある。
生成AI / ディープラーニング / CUDA
2023年頃から文章や画像、資料やコンピュータープログラムなどをAI(人工知能)で作り出す生成AI(ジェネレーティブAI)が注目され始めた。
ディープラーニングはそれに使われるAI手法の一つで、たくさんのデータの中から良さそうなものを選び、それを元にまたたくさんのデータを作って、また良さげなものを抽出する…… という過程を繰り返して正解に近づく、総当たり的な方法である。これには大量の単純計算を並行して行うことが必要で、それがビデオカードのGPUを一般利用するGPGPUにマッチしていた。
CUDAはNVIDIA社のGPGPU技術で、ディープラーニングに向いていたためAI生成を速く行え、マイニング流行時ほどではないが、GeForce品薄の要因になっている。
ビデオカードの世代と呼称
GeForce 1000 シリーズ / Pascal
NVIDIA社が2016年に発売したビデオカードで、型番が4桁になった最初の GeForce。当時最新のビデオメモリ GDDR5 を採用し、メモリの使い方とシステムが改善された。プロセスルール(GPUの内部の細かさ)は14~16nm。
コアの名前である Pascal(パスカル)は、初期の機械式計算機を作ったフランスの数学者であり哲学者でもあるブレーズ・パスカルにちなむ。
GeForce 2000 シリーズ / Turing
NVIDIA社が2018年に登場させたビデオカードで、性能と電力効率を改善、一時的に性能を引き上げるGPUブーストも強化された。プロセスルールは12nm。ビデオメモリは GDDR6 が使われ始め、DLSSとリアルタイムレイトレーシングも初導入された。
コアの名前は Turing(チューリング)で、暗号解読機を開発してコンピューター科学の父と言われた数学者アラン・チューリングにちなんでいる。
GeForce 1600 シリーズ
NVIDIA社が2019年に GeForce 2000 シリーズの技術を応用して開発した下位モデル。DLSSとリアルタイムレイトレーシングは利用できないが、低価格でコストパフォーマンスに優れ、長く下位ビデオカードの主流を務め続けている。
コアは2000シリーズと同じ Turing で、よって4桁目の数字は1だが、1000シリーズではない。
GeForce 3000 シリーズ / Ampere
NVIDIA社が2020年から発売したビデオカードで、設計が刷新され、プレセスルールが8nmに。ビデオメモリは GDDR6X が使われ始め、性能が大幅に向上したが、上位モデルの発熱と消費電力も増加した。
コアの名前は Ampere(アンペール)で、アンペア(電流)の語源となった電磁気学者アンドレ=マリ・アンペールにちなんでいる。
GeForce 4000 シリーズ / Ada Lovelace
NVIDIA社が2022年に発売、2023年から普及し始めたビデオカードで、各種技術が新世代となって性能が全体的に向上、さらに電力効率が大幅に改善され、発熱・消費電力・動作音が軽減された。プロセスルールは 5nm と 6nm の混成と言われている。
コアの名前は Ada Lovelace(エイダ・ラブレス)で、世界初のプログラマーと言われる同名の数学者にちなんでいる。
Vega / RDNA
AMD社のビデオカード Radeon、及びCPUの Ryzen に内蔵されているGPUコアの名前。Vega は2017年に登場し、ビデオカードとしては注目されなかったが、Ryzen(Zen2 / Zen3)の内蔵グラフィック機能として長く使われている。
RDNA は Radeon DNA の略で2019年から使用されており、パソコンのGPUとしては苦戦しているが、RDNA2 が PS5 や Xbox series X/S などのゲーム機に使用されるなど、パソコン以外での採用例が多い。2023年、RDNA3 も登場した。
グラフィック用語のうち、モニターに接続する映像端子については こちら を、画面表示関連(モニター / ディスプレイ)の用語は こちら をご覧ください。
ビデオカードの性能(ベンチマークスコア)の一覧は こちら に掲載しています。