- 2024年3月に発売された ASUS の14型ゲーミング ノートパソコン
- 最新 Ryzen 9 と GeForce 4070 搭載のハイスペックで1.5kgの軽量という驚愕の設計
- モニターも有機EL、6つのスピーカーと高度なチューニング機能も備える高級機
こんな人にオススメ!
- 持ち運びできるゲーミングノートが欲しい人
- 何でもできる万能ノートPCを求めている人
- 写真や動画を出先で快適に編集できる創作用PCが欲しい方
(提供元:ASUS JAPAN株式会社)
軽いゲームPCという夢が実現
このノートパソコンは、PCに詳しい人ほど驚くことだろう。
高性能なCPUとビデオカードを搭載しながら、14型で重さが1.5kg、厚さも16mmしかないという、常識外れのゲーミングノートだからだ。
同様のスペックのゲーミングノートは、2.5kgとか3kg近いのが普通である。
部材の重さはもちろん、高性能なら相応の冷却機構が必要となり、バッテリーも大きくしなければならない。
「軽いゲーミングノート」というのは物理的に無理がある。
だが、そんな無理を ASUS は実現させてしまった。
それが今回レビューする ROG Zephyrus G14(GA403、2024年春モデル)だ。
CPUには登場したばかりの最新型 Ryzen 9 8945HS を使用。
2024年モデルの AMD Ryzen で、詳しくは後述するがピーク性能と省電力性能に優れており、Core Ultra よりゲーミングPCに向いている。
ビデオカードは GeForce RTX 4070 Laptop を搭載。
ノートPC用のビデオカードとしては上位に位置するもので、これを搭載するゲーミングノートはヘビー級なのが普通だ。
つまり本機は、軽量ながらヘビー級のパワーを持つ。
さらに非常に美しい3K解像度で高速描画(120Hz)の有機ELディスプレイを持ち、4つのスピーカーと2つのウーハーによる高度なサウンド、さらに独自のチューニング機能を備える。
価格は高く、Ryzen 9 + GeForce 4070 搭載機で税込349,800円。
(Ryzen 7 + GeForce 4060 の機種もあるが、約33万円とあまり変わらない)
軽量化には高級素材が必要で、技術的な難しさもあるため、価格とのトレードオフになるのは仕方ないところか。
以下、見どころの多い本機の詳細をお伝えしていきたい。
外観
デザインとモバイル性能
本機は天板の見た目がすでに特徴的だ。
目立つナナメのラインが配されており、鏡面仕上げになっていて光が反射する。
そしてLEDライトが仕込まれており、電源を入れるとキラキラと光る。
発光色は白のみだが、光が往復したり、ノイズのように輝くなど、豊富な発光パターンを持ち、好みに設定することができる。
使用している本人はまったく見えないのだが…… 周囲の人は「おおっ!?」と思うことだろう。
ライトは OFF にしたり、明るさを抑えることもできるので、恥ずかしいという人もご安心を。
ナナメのラインはゲーマーの向上心を表現している、とのこと
発光パターンの一例
なんだかガラケーを思い出します……
内部はキーボード周辺がホワイト(及びグレー)、モニター周辺はブラック。
清潔感のある外観で、パッと見はゲーミングPCっぽくない。
そして大きな特徴は、冒頭から述べているように、ビデオカードを搭載するゲーミングノートでありながら、重量1.5kgという軽量であることだ。
一般の14型ノートPCと同等の重さで、ゲーミングモデルとしては破格の軽さ。
しかも低スペックではなく、Ryzen 9 と GeForce RTX 4070 というハイパワーなパーツを搭載して、この軽さである。
パソコンに詳しい人だと「冷却どうなってるんだ!? 発熱とか大丈夫なのか?」と心配になると思うが、液体金属グリスや独自のファン&ヒートパイプで、ASUSいわく「最強の冷却システム」を構築しているとのこと。
※内覧会で公開されていた冷却システムの概要。多数の羽を持つ3基のファンで強力な冷却を施している。
※兄弟機「Zephyrus G16」の冷却構造の展示。G14と同じ第2世代のARC FLOWファンを搭載する。
ヒートパイプも新繊維を使用した新型になっていて、効率が上がっているとのこと。
また、本体は軽くて丈夫な航空アルミニウム合金を精密加工して作られており、軽さと堅牢性を両立しているとアピールされている。
サイズは14型としてはやや小さめで、横は約31cm、縦は22cm。
そして厚さ約16mmと、ゲーミングノートなのに一般的なノートPCより薄いという異常さ。
その理由はモニターの薄さにあり、約4mmという極薄の作りになっている。
ACアダプタは180Wの高出力であるため、大きめで重さも約550gと、本体ほど軽量ではない。
ただ、こちらも出力を考えると軽い方である。
ゲーミングらしくないお洒落な外観
本体の重さは実測で約1480gだった
ACアダプタは約550g。やや薄型
インターフェイス(接続端子)も軽量薄型の割に豊富。
左右両方に USB-C と普通の USB(10Gbps)を備えていて使い勝手がよく、HDMI やイヤホン/マイク共用ジャックもある。
意外にも Thunderbolt 4 はないが、USB-C のひとつは USB4 で、充電と映像出力に対応。
ただし、有線LAN端子は備わっていない。
また、意外にもデジカメなどで多用される microSDカードリーダー が付いている。
「持ち運びできる高性能ビデオカード搭載機」である本機は、出先で写真や動画の編集をするのにも向いており、クリエイター向けの用途も考慮されているようだ。
左側面。こちらの USB-C は USB4
普通の USB も備わっているのが嬉しい
右側面。こちらの USB-C は映像出力に対応するが充電は不可
無線通信は Wi-Fi 6E に対応、Bluetooth も 5.3 で、通信関連も新型。
バッテリーは73Whで、14型としては大型のものを搭載、公称駆動時間は約13時間。
バッテリーは大容量ほど重くなるので、軽量ノートだと小さい場合が多いのだが、本機は軽量でもバッテリーに妥協はない。
これでもフルパワーでゲームをしていると数十分で尽きてしまうが、本機にはビデオカードをOFFにしたり、投入電力を下げたりして節電する機能があり、それらを使えば外出中に長時間の作業を行うことも可能だろう。
なお、本機は省電力モードでも高い処理能力を発揮できる。これについては後述する。
ASUS独自の高速充電も備わっており、ACアダプタが大出力なこともあって、約2時間でのフル充電が可能だ。
モニター / サウンド
ASUS は昨年から OLED(有機ELディスプレイ)搭載のノートパソコンに注力している。
本機もそのひとつで、従来の液晶パネルとは比べ物にならない美しさのモニターを持つ。
しかも解像度2880x1800、いわゆる「3K」の高精細画面で、縦横比も16:10で作業しやすい。
発色の目安となるDCI-P3は100%(sRGB比133%相当)で、コントラスト比も一般の液晶が1000:1なのに対し、本機は100万:1。
輝度も最大500nitと高く、野外でも問題なく扱えるだろう。
難しい数値はともかく、一目見て段違いの美しさであることがわかるレベルだ。
※有機ELディスプレイならゲームも動画も綺麗でクッキリ。しかも本機は3K画質。
OLED(有機EL)は高性能だが、高価で消費電力が多く、焼き付きやすい、チラつきやすい、青みがかかるといった弱点もある。
だが、ASUS はそれらに対処できる技術を持っており、わずかに表示を動かして焼き付きを抑えるピクセルシフト、チラつきを抑制するフリッカーディミングといった、OLED 保護機能が備わっている。
さらに米PANTONE社の色調整により、青みの解消はもちろん、高い色精度を誇る。
色の誤差を示す Delta E は1以下で、これ以上ないほど正確だ。
よって高発色と色精度が要求される、写真や出版に携わる人の作業用マシンにも向いている。
リフレッシュレートも 120Hz あり、120fps(秒間120コマ)で動くゲームを遜色なく滑らかに表示できる。
ゲーミングPCとしては 120Hz は高い方ではないが、OLEDとしては速い方であり、140Hz 以上を認識できるかは人にもよる。 私的には 120Hz あれば十分だと思う。
応答速度も 0.2ms と超高速なので、残像が生じることはない。
光沢液晶なので写り込みはあるが、OLEDを非光沢にして発色を落としてしまうのは本末転倒なので、ここは許容したいところだ。
高発色で高色精度、ビデオカード搭載なのでクリエイターノートとしても一級品
ヒンジの角度は最大45度と一般的
モニターの薄さにも注目して欲しい
さらに本機は、サウンドが非常に優れている。
左右底面に加え、キーボードの両側にも音の出る穴が開いており、合計4つのスピーカーによるサラウンドを奏でてくれる。
加えて2つのウーハー(重低音用スピーカー)を持ち、低音もとても良く響く。
ノートパソコンは振動の影響を抑えるため、重低音が弱いものが少なくないが、本機はウーハーを交えた4.2chスピーカーで低音も力強い。
6つのスピーカーがある(しかもウーハーがある)ノートパソコンに触れたのは私も初めてで、本当に他の製品と比べると音の広がりと低音の響きが全然違う。
※サウンドユニットの図解。旧モデルよりウーハーが大型化、音量も向上したとのこと。
本機には Dolby Atmos のイコライザー(音質調整ソフト)が備わっており、好みの音に変えられるが、ASUS のゲーミングノートは最初から最適なチューニングが施されていて、特にいじらなくても深みのある音を響かせてくれる。
ただ、本機の場合、調整ソフト(Dolby Access)で設定を「ダイナミック」にするのも良い。
初期設定だとライブハウスのような、深みと音響があるが、若干曇った音が聞こえる。
ダイナミックだと音がクリアになり、深みは減るが、クッキリした音になる。
スピーカーが良くて調整に良い音で応えてくれるため、色々いじってみるのも楽しいだろう。
フェイスカメラは約200万画素の高画質。
最近はもっと高画質なカメラを持つノートパソコンも出てきているが、オンライン会議用のソフトや回線が200万画素までしか対応していないため、会議についてはこれで十分だ。
顔認証に使われるIR(赤外線)カメラも装備。
そしてマイクは非常に高機能で、AIノイズキャンセリングはもちろん、前方に収音範囲を集中させ、周囲からのノイズを軽減する指向性録音モードを備えている。
オンライン会議はもちろん、ゲーム時のボイスチャットにも有用だろう。
背景ぼかしや自動フレーミングといったオンライン会議用のカメラ機能は、ASUS 独自のものではなく、Windows を通して使うようになっていた。
Windows のこうした機能はCPU内蔵のAI処理装置に対応しており、最新の Ryzen が持つ Ryzen AI を活用して、負荷を軽減できるようになっているはずなのだが……
有効になっているのかは、ちょっと判別できなかった。
ともあれ、背景ぼかしなどのオンライン会議用の機能は、本機でも利用できる。
キーボード
今回の検証機はホワイトモデルだったため、キーボードも白一色。
上品で清潔感のある見た目で、あまりゲーミングらしくない。
機能性は非常に高く、薄型ノートでありながら1.7mmのキーストローク(深さ)を持ち、大きめのキーキャップで打鍵ミスを防止、さらに打鍵音を軽減した静音キーボードとなっている。
また、240Hzのポーリングレート(秒間240回の打鍵判定)を持ち、素早い応答が可能、さらに2000万回の打鍵に耐える耐久性を持っている。
ゲーム時の反応を速くするためか、打鍵感は柔らかめで、そのためキーストロークの割には、強く打つと指に相応の衝撃が来る。
タイピング時にはソフトなタッチを心がけた方が良いだろう。
反発は強い印象で、リズミカルなタイピングが可能。
文章を入力していて、違和感を感じたりすることはなかった。
キーボード外観。全体的に一般用途も意識したデザインになっている
エンターキー周辺。バックライトはちょっと滲んだように光る
14型ノートのためテンキーはないが、上部に4つの「ホットキー」が備わっている。
これは初期状態では音量の増減とマイクのON/OFF、チューニングソフト(Armoury Crate)の起動になっているが、他の機能に変更することも可能。
マクロ機能(記録したキー入力の再生)に割り当てることもできる。
ただ、Print Screen(Prt Scr)キーと Insert(INS)キーが本機には備わっていない。
これらを使用する機会は減っているが、画面撮影に使う Print Screen がないおかげで、レビュー時に少々手間がかかった。
ゲーム中に画面を保存したいと思うことは間々あるので、Print Screen を削ってしまったのは、ちょっとどうかと思う。
マクロ設定まで行える4つのホットキー
目立つ場所にあるので使いやすい
ホットキーの機能設定画面。Print Screen に出来れば良かったのだが……
そして、ゲーミングモデルであるため、キーボードは七色に光る。
キー単位の色の設定はできないが、複数の発光パターンが用意されており、独自の Aura 機能によって壁紙や周辺機器と連動させて光らせることもできる。
タッチパッドは最大限の大きさがあり、上下に余白がないほど広い。
タッチパッドは大きいほど指の置き直しが減って操作性が増すので、限界まで大きいのは長所と言える。
指がよく滑るツルツル系の表面で、押し込みの硬さも適度、押し込まない操作にももちろん対応していて、使い勝手は良好だ。
14型ノートとしては最大級のパッド。上下ギリギリまで使っている
裏面の様子。ほぼ全面が通気口になっており、冷却優先なのがわかる
パーツ性能
性能調整アプリ Armoury Crate
CPUやビデオカードの性能報告の前に……
ASUSのゲーミングモデルに備わっているチューニングソフト「Armoury Crate」について少し解説しておきたい。
これは動作モードの切り替え、ビデオカードのON/OFF、ゲームごとの設定登録など、多くの機能を持つ専用ソフトウェアであり、ゲーマーのための「武器箱」だ。
重要なのは下部にある動作モード(オペレーティングモード)の切り替えだ。
これは Fn+F5(風車のキー)でも変更できる。
Turbo(ターボ)、パフォーマンス、サイレントの3種類が用意されており、この設定に応じてCPUとビデオカードのパワー、ファンの回転数が変化、性能・消費電力・動作音が変わる。
※ファンモードと呼んでいる機種もあり、切り替えキーも風車マークだが、ファン速度だけでなく動作自体も変化する。
「Windows」は Windows 側のバッテリー設定に応じたモードになる。
高負荷な作業をするときはターボでフルパワーを出し、持ち出して使うときはバッテリーが消耗しにくいサイレントにする、といった使い分けが可能だ。
また、本機には「0dbテクノロジー」が備わっており、サイレントモードで軽負荷な状態が長く続くとファンの回転が止まり、完全に無音になる。
それでも本機の冷却機構なら、少しずつ放熱が可能なようだ。
「手動」で CPU の投入電力(PL1/PL2)やファン速度などを好みに設定することも可能だが、あまり大きな変更はできないようになっている。
もうひとつ重要なのは「GPUモード」で、ビデオカードの使い方を決められる。
標準設定である「スタンダード」は、ゲーム時など高いグラフィック能力を必要とするときだけビデオカードがONになり、それ以外のときはOFFにして消費電力と動作音を軽減する。
これを「最適化」に変えるとコンセントに繋がっているときはスタンダードとなり、バッテリー駆動時は常にビデオカードはOFFとなる。
「Ultimate」は常にビデオカードがON、「エコモード」は常にビデオカードOFFだ。
ビデオカードの ON/OFF 切り替え時には、数秒だがパソコンの動きが止まる。
頻繁に起こると煩わしいので、ずっとコンセントに繋げて使うなら Ultimate にしておいた方が良いだろう。
だが、本機は「持ち運べる軽さのゲーミングノート」である。
バッテリー駆動で活用する機会も多いだろうから、スタンダードか最適化の設定にして、切り替えながら使うのを勧めたい。
本機が搭載するCPU「Ryzen 9 8945HS」はビデオカードには及ばないが、CPU内蔵機能としては非常に高いグラフィック性能を持つ。
ビデオカードを切っていても動画再生はもちろん、軽いゲームや写真/映像の編集を快適に行えるぐらいの能力がある。
他にも電飾の設定や、ゲームごとに動作モードとGPUモードを決めておき、起動時に自動適用させるといったこともできる。
使いこなすには相応のPC知識が必要なので、利用していない人も多いようだが、Armoury Crate を使えるのは ASUS のゲーミングモデルの大きな長所と言えるので、ぜひ活用して欲しい。
処理性能(CPU)
ROG Zephyrus G14(GA403、2024年モデル)には、Ryzen 7 8845HS を搭載するモデルと、Ryzen 9 8945HS を搭載するモデルがある。
どちらもAMD社の最新型CPUで、俗に「Ryzen 8040 シリーズ」と呼ばれるタイプ。
Ryzen は新型でも中身が旧設計の場合があったりして、初心者にはわかり辛いのだが、本機に使われているものは正真正銘、上位設計 Zen4 の2024年型 Hawk Point の製品である。
まだ登場したばかりだが、本機はそれを最速で採用している機種のひとつだ。
特徴としては、高いピーク性能、優れた内蔵グラフィック機能、良好な省電力性能を持つ。
末尾に付いている「HS」は性能重視型を意味するが、超性能重視の「HX」ほどではなく、消費電力は常識的なレベル。
Intel 社の Core シリーズの「H」に相当する。
今回の検証機は Ryzen 9 8945HS を搭載している。
8コア16スレッドのCPUで、最近の Core シリーズとは違い Pコア/Eコア の区別はない。
基準の TDP は45Wとなっているが、実際の投入電力は動作モードと温度により変化する。
なお、Zen4 Hawk Point は2023年に公開された Zen4 Phoenix のマイナーチェンジ版と言え、性能はやや上がっているが、基本的な性質は変わっていない。
以下はターボモードで測定したベンチマーク(性能測定)ソフト Cinebench R23 の結果と、他のノート用CPUとの比較グラフだ。
Ryzen 9 8945HS(Turbo モード)
Cinebench 2024 の測定結果
・マルチコア性能(Cinebench R23、10分測定)
Core i7-13700HX:20000
Ryzen 9 8945HS:17100(本機、ターボ)
Ryzen 9 8945HS:16200(パフォーマンス)
Ryzen 7 7840HS:15500
Ryzen 9 8945HS:15100(サイレント)
Core i9-13900H:13700
Core i7-13700H:13500
Core Ultra 7 155H:12000
Core i5-13500H:12000
Core Ultra 5 125H:10500
Core i7-1360P:9700
Ryzen 7 7730U:9600
Core i7-1355U:7000
Ryzen 3 7330U:4950
Celeron N5100:1400
Celeron N4100:950
・シングルコア性能(Cinebench R23)
Core i9-13900H:1900
Core i7-13700HX:1850
Core i7-13700H:1850
Core i7-1360P:1820
Ryzen 9 8945HS:1800(本機)
Core i5-13500H:1780
Core Ultra 7 155H:1760
Ryzen 7 7840HS:1760
Core Ultra 5 125H:1740
Core i7-1355U:1720
Ryzen 7 7730U:1430
Ryzen 3 7330U:1370
Celeron N5100:580
Celeron N4100:380
※近年の全CPUとの比較は こちら をご覧ください。
ターボモードでのマルチコアの測定結果は約17100。
非常に高いスコアで、第13世代 Core i9 より大幅に上、HX(超性能重視型)にも迫る。
ノート用の第14世代 Core がまだ普及していないため、そちらとの比較はできないが、おそらくマルチコアは Ryzen 8040 シリーズが勝ると思われる。
ただ、シングルコア性能は約1800で、こちらは第13世代 Core と同じぐらい。おそらく第14世代 Core には劣る。
要するに、同世代・同クラスの Core にマルチで勝り、シングルで劣るという、従来通りの関係である。
かなり高性能と言えるが、ターボモードだと投入電力は75W、コア温度は常に90℃前後で、冷却ファンの回転音は非常に大きかった(55db前後)。
また、ターボモードだと常にファンが回り続け、高負荷でなくても相応の音がする。
パフォーマンスモードなら、投入電力は45W~65Wの間となり、温度は最初こそ90℃近かったが、徐々に75℃辺りまで下がった。
測定値はマルチコア16200、シングルコアは変わらず1800で、高い性能を維持。
ファンの音はベンチマーク中で45dbほどと、静かとは言えないが大分マシになり、低負荷時の音はかなり小さくなる。
特筆すべきはサイレントモードで、投入電力は35W~55W。コア温度は測定開始時で約80℃、落ち着くと60℃台前半まで下がる。
そしてここまで投入電力を落としているにも関わらず、マルチ15100、シングルはやはり1800と、処理性能はあまり落ちていない。
ファンの音は40dbほどまで下がり、無音ではないが、ほぼ気にならなくなる。
そして前述した通り、低温で低負荷時には「0dbテクノロジー」が働くため、ファンが止まって無音となる。
ターボでマルチ17100、サイレントでマルチ15100、シングルは変わらないのなら、もうずっとサイレントで使った方が良い気がする。
その方が省電力で、静かで、熱くならない。
この省電力性能は Core Ultra に勝るとも劣らないレベルで、ちょっと驚きだ。
以下は定番のパソコン測定ソフト PCMark10 の結果。
ターボでの測定はビデオカードON、サイレントの測定はビデオカードOFFにしている。
ターボ+ビデオカードON
サイレント+ビデオカードOFF
アプリの起動速度やウェブサイトの閲覧といった基本の処理は、誤差程度の差しかない。
さらに、表計算と書類作成の測定でも、若干の差しか出なかった。
やはり一般用途や事務においては、ターボとサイレントで体感できる違いはないようだ。
写真/画像加工については、ビデオカードの使用/不使用による差が出ている。
18000を超えるスコアは、さすが GeForce RTX 4070 というほかない。
ただ、ビデオカードOFFのサイレントモードでも14000という高い数値が出ており、これはこれで、さすが内蔵グラフィック機能に優れる Zen4 の Ryzen と言える。
3D描画や動画編集も、内蔵GPUとしてはかなり良い数値だ。
Intel のCPUと比べると、第14世代 Core クラスの処理性能と、Core Ultra 級の省電力性能、さらに Core Ultra より実力を発揮できる内蔵GPUを持つ、良いとこどりのCPUという印象だ。
Zen4 の Ryzen は価格が高いようで、コスパ面で判断し辛いところはあるが、性能面では文句のつけどころがない。
グラフィック機能(ゲーミング性能)
ROG Zephyrus G14(GA403)はビデオカードに、ノート用の GeForce RTX 4060 か 4070 を搭載している。
どちらも現在主流の高性能なビデオカードだ。
検証機は上位である GeForce RTX 4070 Laptop を使用しており、ビデオメモリは GDDR6 が 8GB 搭載されている。
GeForce 4000 シリーズは消費電力と発熱が低めだが、それでも GeForce RTX 4070 クラスになると高い電力と冷却力を必要とするため、搭載機の多くは重さ2.5kg前後、厚さ2.5cm前後のヘビー級ノートが一般的である。
よって、改めて述べるが、本機のような重さ1.5kg、厚さ16mmで GeForce RTX 4070 を搭載するノートPCというのは前例がなく、常識外れの薄さと軽さである。
また、本機が搭載している最新上位型(Zen4)の Ryzen は、CPU内蔵型としては高性能なグラフィック機能(GPU)を持つ。
ビデオカード使用時は内蔵GPUには意味はないが、本機はビデオカードをOFFにしてバッテリーを節約するモードがあり、その時にはCPU内蔵GPUが使われる。
よって今回は、ビデオカード GeForce RTX 4070 Laptop と、Ryzen 9 8945HS の内蔵グラフィック機能(Radeon 780M)の、双方の性能を検証していきたい。
まず、ターボモードで実行したベンチマーク(性能測定)ソフト 3D Mark:TimeSpy の、GeForce RTX 4070 Laptop 使用時の結果は以下の通りだ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
グラフィックスコアは約11730。ノート用 GeForce RTX 4070 の標準的なスコアと言える。
パフォーマンスモードで測定した場合は 10580 となり、約90%のスコア。
サイレントモードにした場合は 9400 となり、約80%のスコアとなった。
ビデオカードを OFF にして実行した場合、つまり Ryzen 9 8945HS のCPU内蔵グラフィック機能のスコアは、約2750となった。
内蔵GPUのグラフィックスコアは、ターボでもサイレントでも変化しなかった。
Intel の Core Ultra の内蔵GPUは3500以上のグラフィックスコアが出るので、それと比べると低い。
しかし Core Ultra は Intel Arc という新型GPUを搭載しているため、ソフト側の対応が進んでおらず、実力を発揮できないケースが多い。
一方、Ryzen の内蔵GPUは Radeon という昔ながらのものなので、ほとんどのソフトが適応しており、実力をそのまま発揮できる。
以下は、これらの結果を他のビデオカード/グラフィック機能と比較したグラフだ。
・3D Mark: TimeSpy(ノート用GPU)
GeForce RTX 4080 Laptop:19000
GeForce RTX 3080 mobile:12000
GeForce RTX 4070 Laptop:11730(本機 ターボ)
GeForce RTX 4070 Laptop:10580(パフォーマンス)
GeForce RTX 3070 mobile:10400
GeForce RTX 4060 Laptop:10300
GeForce RTX 4070 Laptop:9400(サイレント)
GeForce RTX 4050 Laptop:8500
GeForce RTX 3060 mobile:8350
GeForce GTX 1660Ti mobile:5550
GeForce RTX 3050 mobile:4850
Core Ultra 7 155H(CPU内蔵、Arc A):3550
GeForce GTX 1650 mobile:3400
Ryzen 9 8945HS (CPU内蔵、本機):2750
Ryzen 7 7840HS (CPU内蔵、Zen4):2500
第13世代 Core i7(CPU内蔵、Iris Xe):1800
Ryzen 7 7730U(CPU内蔵、Zen3):1200
Ryzen 3 7330U(CPU内蔵、Zen3):580
では実際に、ゲームがどのぐらい動くのか?
以下は各モードで測定した、最新ゲームの動作速度の一覧だ。
ビデオカードON、ビデオカードOFF、それぞれの結果を含めている。
なお、ROG Zephyrus G14(2024)はモニターの解像度が 2880x1800 なので、それに近い解像度でテストしている。
一般的な 1920x1080 より高負荷なので、その点を加味して見て欲しい。
※動画は検証機で録画したものですが、再生速度は30fpsです。
・モンスターハンターライズ
高画質の解像度2880x1800(実質2880x1620)、ビデオカードONのターボで 80~100fps。
パフォーマンスモードだと 80~90fps、サイレントモードでも 70~80fps で動く。
サイレントでも60fpsを超えており、高画質・高解像度で快適にプレイ可能だ。
ただしゲーム時は、サイレントモードでも相応の動作音がある。
DLSS は表現の劣化が大きいので効かせない方が良い。
ビデオカードOFFだと、高画質では厳しいが、中画質なら 45~60fps になる。
解像度 1920x1200 でも同様で、中画質の 1920x1200 なら 80~100fps が出る。
中画質でもそんなに見た目が劣る訳ではないので、CPU内蔵グラフィック機能でも遊べる。
・パルワールド
最高画質で解像度2880x1800、ビデオカードON、DLSS ON で、ターボモードは 60~75fps。
パフォーマンスモードだと 55~65fps、サイレントモードだと 40~60fps となる。
ターボはもちろん、サイレントでも30fpsは超えているので、普通に遊ぶことができる。
このゲームは GeForce 搭載機なら、DLSS は最初から ON になっている。
ビデオカードがOFFだと、かなり厳しい。
解像度1920x1080の低画質でも 15~30fps といったところで、1280x720の最低画質にしても fps はほぼ20台。
このゲームをCPU内蔵のグラフィック機能で遊ぶのは、まだ無理だ。
・龍が如く8
最高画質で解像度2880x1800(実質2880x1620)のビデオカードON、DLSS ON で、ターボモードだと 60~75fps。
パフォーマンスモードだと 55~70fps、サイレントモードだと 50~60fps となる。
高画質で快適に動作するが、このゲームは DLSS が最初は OFF になっているので、すぐにグラフィックの詳細設定で ON にしておこう。
なお、DLSS が OFF だとターボで 35~40fps、パフォーマンスは 30~35fps、サイレントだと 20~30fps 程度になってしまう。
ビデオカードOFFの場合、DLSS は使えないが、Radeon の DLSS と言える FSR が使える。
FSR 2.0 を Quality にして中画質にした場合、解像度 2880x1800 でも 30~40fps で動作。
解像度 1920x1200 なら高画質でも 50~65fps で快適に遊べる。FSR OFF だと 15fps 程度。
フレーム生成機能のある FSR 3 も利用できるが、処理が重くなるため使わない方が良い。
・鉄拳8
ターボモードでビデオカードONの場合、起動時のベンチマークスコアは477。
解像度 2880x1800 で最高画質だと 50~60fps。このゲームは60fps出ていないと動きが鈍くなってしまうのでちょっと厳しい。
高画質ならほぼ60fpsを維持できる。
パフォーマンスだとベンチスコア468、動作はターボ時とほぼ同じ。
サイレントだとベンチスコア361、高画質は 50~60fps で動きが鈍くなるが、中画質ならほぼ60fpsで動く。
ビデオカードがOFFの場合、ベンチマークスコアは250。解像度 2880x1800 ではムリ。
解像度 1920x1200 の中画質だと 55~60fps となり、演出が入るシーンで50fpsぐらいに落ちたりするが、ソロプレイならほぼ問題ない。
・ストリートファイター6(ベンチマーク)
HIGHEST(最高画質)の解像度 2560x1440 で、バトルはサイレントでも60fpsで動作。
街を散策するシーンもターボモードとパフォーマンスモードで 65~100fps、サイレントモードでも 60~80fps で動き、快適にプレイ可能。
ビデオカードOFFの場合、LOW(低画質)で解像度 1920x1080 なら、通常バトルはほぼ60fpsで動く。
ただ、街のシーンで速度が落ちるので、それを考慮すると解像度は 1600x900 にした方が無難。
GeForce RTX 4070 のパワーがあれば、3K解像度でも高画質で快適にゲームを楽しめる。
ターボモードでゲームをすると動作音はかなり大きいが、サイレントモードでも十分な速度が出るゲームが多い。
描画を軽めにしてサイレントでプレイすれば、かなり静かに遊べるだろう。
Ryzen 9 8945HS のCPU内蔵グラフィック機能も、なかなか優秀だ。
画質や解像度を調整すれば、ここに挙げたゲームはパルワールド以外はプレイ可能。
Core Ultra と比較しても、テストした全てのゲームで、今の時点では Ryzen 9 8945HS の方が上回っていた。
ゲームだけでなく、3D描画のある一般のソフトウェアでも GeForce や Radeon なら適応していることは間違いないので、性能通りのパワーを発揮できるだろう。
なお、やや余談だが……
最近正式に公開されたAMD社のフレーム生成技術 AFMF(AMD Fluid Motion Frames)は、Ryzen 9 8945HS の内蔵GPUではまともに動かなかった。
ゲーム内の設定で ON にできる龍が如く8でも、使用するとゲームが重くなって処理に遅延が生じ、軽めのモンスターハンターライズでも、過負荷で Windows ごと落ちてしまった。
今の時点では内蔵GPUに、描画しながらフレーム生成も同時にやらせるのは無理があるようだ。
GeForce RTX 4070 Laptop もフレーム生成が可能な DLSS 3 を利用できるが、DLSS 3 に対応しているゲームはまだ少ない。
フレーム生成もAIを活用した技術なので、これからのものと言えそうだ。
ストレージ(記録装置)とメモリ
ストレージ(データ記録装置)には容量1TBの NVMe SSD が使われている。
高速な小型ストレージで、新型の第4世代(Gen4)の製品を使用。
カスタマイズはできないが、1TB ならノートPCとしては大容量だ。
高価なゲーミングモデルとしては、もうちょっと欲しいのも本音ではあるが。
検証機に搭載されていたのは米ウエスタンデジタル(WD)社の SN560 という製品で、市販品ではなく、ASUS の特注品と思われるもの。
以前紹介した安めのゲーミングノート TUF Gaming FX507VV にも使われていたものだ。
実機でのベンチマーク(性能測定)の結果は以下の通り。
標準設定での測定
NVMe SSD 設定の測定
読み込みは約5000MB/s、書き込みは約3450MB/s。
Gen4 の NVMe SSD としては読み込み速度に優れる。書き込み速度は標準的。
ランダムアクセスの測定では、NVMe SSD 用の設定で読み込みが1230MB/sと、同時処理の効いた高い数値を叩き出した。
ゲームはランダムアクセスの影響が大きいので、この点は嬉しい。
全体として、読み込みとランダムアクセス重視の、ゲーミング向けらしい性能と言える。
メモリは LPDDR5(LPDDR5X-6400)を 32GB 搭載している。
オンボードメモリのようで交換はできないが、最新の省電力メモリであり、性能も速度も申し分ない。
総評
冒頭から何度も述べているが、このスペックでこの軽さの製品は他にはない。
軽量ゲーミングノートなんてトップクラスの技術力がないと作れず、DELLは作ろうともしていないし、HPやレノボには似ている機種はあるが、ここまでの性能ではない。
高性能で最新の軽量薄型ゲーミングノートが欲しいなら、これ一択と言っても過言ではない。
その分、価格は高い。
技術開発費はもちろん、軽量素材や流用の効かない特製パーツなどが必要となるため、軽量化にはとにかくコストがかかる。
こういった特殊機が大好きな技術者メーカー ASUS だからこそ、作れた製品とも言える。
改良型 Zen4 の Ryzen 9、GeForce RTX 4070、メモリ32GB、3Kで120Hzの有機ELなど、スペック面はこれ以上ないほど素晴らしい。
あとは軽さに対する価格の判断。
多少高くても、こんなに軽くて高性能なゲーミング及びクリエイターノートを手に入れられるなら最高だ! という人にとっては、唯一無二の製品だ。
(2024年3月モデル)
形式:14インチ ノートパソコン
CPU:Ryzen 9 8945HS(8コア16スレッド)
グラフィックス:GeForce RTX 4070 Laptop 8GB
メモリ:32GB(LPDDR5X)
ストレージ:1TB NVMe SSD(Gen4)
モニター:OLED(有機EL)、16:10、解像度2880x1800、DCI-P3 100%(sRGB133%相当)、リフレッシュレート120Hz、Delta E <1
サウンド:4.2ch(4スピーカー+2ウーハー)+Dolby Atmos
通信:Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
モバイル性能:約1.5kg、バッテリー73Wh、公称13時間
その他:性能調整ソフト(Armoury Crate)、3つの動作モード、USB4、高速充電、ビデオカード給電OFF機能、AIノイズキャンセリング、高反応キーボード
定価:税込349,800円
※詳細は ASUS 公式ストア もご覧下さい。
※ホワイトは約35万円、グレーは約38万5千円と、価格が異なりますが、グレーは家電量販店での取り扱いがあり、量販店価格になっているためのようです。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。