- 2025年1月に発売された ASUS の14型ビジネスノートパソコン
- AIを利用した議事録作成、同時翻訳などの独自機能を持つ、実用的 AI PC
- ビジネスに要求される高いセキュリティと耐久性、システムの信頼性を持つ
こんな人にオススメ!
- 最新のビジネスノートを探している人
- 高性能な次世代CPU搭載機が欲しい人
- 会議めんどくさい、録音したい、でも聞き直すのもめんどくさい、という人
(提供元:ASUS JAPAN株式会社)
AIで即時翻訳&議事録作製
2024年は AI 機能を内蔵する「AI PC」の元年だった。
しかし実際のところ、CPU内蔵のAI機能(NPU)を有効活用できている事例は、皆無と言えた。
文章や画像のAI生成などはネットワークの先にあるサーバーコンピューターで行われ、結果だけを受信して表示する「クラウドAI」ばかりであり、パソコン側のAI機能はほとんど使われていなかったからだ。
しかし ASUS はその技術力で、AIアルバムやアイデアツリーなどを開発・実装。
パソコン側の NPU を活用する「エッジAI」を独自に進めようとしていた。
そんな ASUS がAIによる音声認識とリアルタイム翻訳を活用し、議事録自動作成などの独自の機能を盛り込んだ、最新のビジネスノートを発売した。
ASUS ExpertBook P5(P5405CSA)だ。
CPU には最新の Core Ultra シリーズ2、俗に言う「Lunar Lake」が採用されており、高性能な AI 処理機能(NPU)を持つ。
14型で1.27kg、ACアダプタも小型で携帯性が良く、もちろん長時間駆動。
ビジネスモデルなので耐久性や信頼性、セキュリティも高められている。
そして独自のオンライン会議補助機能 ASUS AI ExpertMeet を備える。
マイクロソフトが提供する AI 機能「Copilot」は諸事情で遅れている場合が多いが、ASUS 独自の機能なら状況を問わずに利用可能だ。
Core Ultra 7 と Core Ultra 5 を搭載するモデルがあり、Core Ultra 7 搭載機はメモリ32GBで税込249,800円。
Core Ultra
5 搭載機はメモリ16GBで199,800円、メモリ32GBで219,800円となっている。
以下、本機の詳細なレビューをお伝えしていきたい。
AI 機能
ASUS AI ExpertMeet
まずは本機の最大のウリである、AI を活用したビジネスサポート機能からレビューしよう。
これらはまとめて「ASUS AI ExpertMeet」と呼ばれており、そのコントロールパネルがタスクバーに常駐している。
特筆しておきたいのは、ASUS AI ExpertMeet の各機能は、ネットワークに接続されていなくても利用できること。
Copilot を始め、現行の AI 機能の多くはネットワークに接続していないと利用できないものが多いが、本機の機能の多くは接続必須ではないので、どこでも使えるし、セキュリティの面でも安心だ。
音声認識や翻訳の精度はネットに接続されていれば、アップデートで更新される。
今後、その精度はさらに高まっていくだろう。
AI ミーティング議事録
マイクで拾った音声や、保存している動画/録音ファイルの音声を AI で自動認識し、文章として書き出していく機能。
対応言語は(2025年1月10日時点で)日本語、英語、中国語 (繁体字)、フランス語、スペイン語。
完璧という訳ではないが、かなり精度の高い音声認識を行ってくれる。
前後の文脈を AI で判断しながら違和感がないよう文書化しているようで、ネット上でネタ的に使われている、トンチンカンな誤訳を連発する AI 字幕のようなことはない。
話者を区別したり、短く要約した文章を AI に作らせることも可能で、任意の言語に翻訳した文書を併記することもできる。
もちろん文書はテキストファイルで出力可能。
会議の内容を書面で素早く目を通すことができ、非常に便利だ。
これさえあれば、その場でメモする必要も、あとで最初から聞きなおす必要もなくなるだろう。
AI 翻訳字幕
マイクで拾う音声や、オンライン会議の発言、再生中の動画の音声などを AI がリアルタイムで翻訳していく機能。
今のところ(2025年1月10日時点で)日本語に翻訳できるのは英語と中国語のみ。
日本語を他の言語に翻訳することはできず、イタリア語、ドイツ語、ポルトガル語は、英語か中国語にしか訳せない。
とは言え、英語と中国語を日本語にできれば、十分に実用的だ。
ポルトガル語 → 英語にしたものを書き出して、あとから日本語にするといったこともできる。
リアルタイム翻訳だが、前後のセリフを AI で判断しながら、意味の分かる文章にすることを優先しているようだ。
そのためか翻訳がワンテンポ遅れるが、機械同時翻訳としては精度は高い。
日本語への翻訳はまだ拙いところがあるが、現状でも英語のニュースや発表会を見るとき便利。
今後の更なるアップデートにも期待したい。
ASUS AI Audio
声以外の雑音(ノイズ)を消去して、会議の発言を聞き取りやすくする機能。
ASUS は AI ノイズキャンセリングをいち早く導入したメーカーのひとつだ。
音声認識は「どれが音声か、どの声が対象か」を判別することが重要なので、議事録や同時翻訳の基礎となる技術でもある。
本機は発言者の声を録音しておくことで、AI がその声以外の音声をフィルタリングし、よりクリアに伝える機能も備えている。
他にも反響音を除去する AI エコーキャンセレーション、人の声の方向を正確に捉える AI ビームフォーミングなど、細かい会議用サウンド技術が数多く盛り込まれている。
なお、ノイズキャンセリングが ON だとCPUの負荷とバッテリー消費が上がるため、ASUS ExpertPanel にあるボタンで手軽に ON/OFF できるようになっている。
透かし機能(ウォーターマーク)
動画や画像に所有者や著作権情報を透かしとして追加し、無断使用や不正改ざんなどを防止するもの。
一般にはウォーターマークと呼ばれている。
画像の場合は全面、もしくは中央に指定の文字列の透かしを入れられる。
動画の場合は氏名・電話番号・メールアドレスが記入された「名刺」を透かしとして貼り付けられる。
画像の透かし。透明度などを調整可能
名刺にはロゴ画像やQRコードも付けられる
AI を使う特別な機能ではないが、ビジネスにおいて動画や資料の添付に役に立つだろう。
ビジネス向けセキュリティ
AI 機能ではないが、合わせて紹介。
本機はビジネスモデルであるため、一般向けよりセキュリティが高い。
まず、指紋と顔のダブル認証で、顔認証機能を活用した離籍自動ログオフなどに対応。
指紋センサーは電源ボタンに組み込まれていて、電源を入れれば指紋も読み取ってくれる。
本体は高耐久アルミニウムで成形されており、米軍規格の耐久テスト(MIL-STD810H)も、衝撃・振動・温度変化など複数の項目でクリアしている。
ビジネス機用の ASUS Business Manager というソフトウェアも備わっており、USBメモリや光学ドライブの使用制限、ストレージの暗号化、ファイルの完全削除、レジストリ編集ロックなどに対応。
業務使用時の安心感を提供してくれる。
また、アメリカの技術研究所が発行している BIOS の安全性とセキュリティを保証する規格「NIST SP 800-155」に準拠しており、ビジネスモデルに相応しいシステム面の信頼性も持つ。
Copilot+ PC 機能
ASUS 独自の機能ではないが…… 第2世代の「AI PC」であるため、マイクロソフトの AI 機能が使用できる「Copilot+ PC」でもある。
ただ、本機は Copilot+ PC に必要な性能を十分満たしているものの、Copilot+ PC の機能提供の遅れがあって、2025年1月時点ではまだ関連機能を十分に活用することはできなかった。
Copilot+ PC の機能提供はマイクロソフトの自社製品(Surface)と Snapdragon X 搭載機が優先されており、正直言って、マイクロソフトの販売戦略に使われている感がある。
よって Copilot+ PC を名乗りながらも(2025年1月時点では)機能を活用できない製品が多い。
ただ、ASUS 独自の AI 機能はマイクロソフトの意向に関わらず使えるので、それがあることは本機の長所と言える。
※ぶっちゃけ ASUS の AI 機能は、アテにならない Microsoft の Copilot に対するアンチテーゼのようにも感じる。
とりあえず Copilot キーがあり、Copilot の検索は可能だ。
それを通した例文作成、画像生成なども行えるが、これらはサーバー上のコンピューターで処理を行うクラウドAIなので、ネットワークに接続していないと利用できない。
他の Copilot 機能は(2025年1月時点では)カメラの背景ぼかしぐらいしか使えなかった。
今後提供が予定されている Copilot+ PC の機能はマイクロソフトの こちら のページを参考にして欲しい。
外装とインターフェイス
デザインとキーボード
ビジネスモデルであるためか、シルバーの落ち着いた見た目。
ボディは軽量高耐久のアルミニウム素材で作られており、メタリックでひんやりした触感だ。
表面にはつや消しの梨地加工が施されており、サラサラで指紋は全く付かない。
天板には機種名が書かれた光沢のあるプレートが埋め込まれている。
金属の色と触感が活かされた天板
反射するロゴプレートが唯一のアクセント
キーボードは角ばっていて、プロモデルらしいシャープな印象だ。
かなり反発が強いキーで、硬くはないが、指が跳ね返されるような感覚もある。
これはこれで、薄型ノートの割にしっかりしたタイプ感を得られ、慣れればリズミカルなタイピングができるだろう。
もちろんキーボードにはバックライトが備わっており、暗所でも使いやすい。
タイピングをしていて違和感を感じることはなかったが、ファンクションキーは機能優先。
Fn キーと併用で F5 や F6 の役割となる。ただ、これは設定ソフト(MyASUS)で変更可能だ。
内部の様子。シルバーとブラックの配色
四角いキーがクールな印象を与える
特記したいのはタッチパッド。
メディアコントロール機能が備わっていて、右端を上下にスライドすることで画面の明るさを、左端をスライドすることで音量を、上部を左右にスライドすることで動画の早送り/巻き戻しをすることができる。
最近の ASUS のノートPCに備わっている、特に動画を見ているときに便利な機能だ。
タッチパッドの触感はしっとり系で、触り心地が良く、指もよく滑る。
14型としてはかなり大きいため、指がはみ出ることは少なく、使い勝手は良い。
もちろんジェスチャ操作(指を3本以上使う操作)にも対応している。
暗所でバックライト点灯時の様子
エンターキー周辺は一般的な配列だ
最大限の大きさのパッド。ボタンなしパッドの操作については こちら を
モバイル性能(携帯性・バッテリー)
サイズは横が約31cm、縦は約22cmで、14型のノートパソコンとしてはやや小さめ。
厚さは閉じた状態で18mmの薄型だ。
重さは1.27kg。14型ノートPCとしては、約1.3kgは標準と言ったところ。
最近は 1kg を切る Core Ultra シリーズ2 搭載ノートも出てきているので、比較すると軽い方ではないが、堅牢性重視で、大きめのバッテリーも搭載しているためだろう。
持ち運ぶのには困らない重さだ。
ACアダプタも小型で軽いが、安全性のためかしっかりした太くて長いコードが付いているので、重量はコード込みだと 300g ほどになる。
USB-C で接続し、出力は 65W。
コードが太くて長めなのは、ビジネスに必要な耐久性のためか
資料動画より。底面から強力な吸気を行い、背部から排気する形式
バッテリーは 63Wh と、前述したように14型ノートPCとしては大きめ。
そのぶん長時間駆動が可能で、新基準(JEITA3.0)の測定でアイドル時は公称18時間、動画再生時で10.9時間。
旧基準(JEITA2.0)だと公称22.7時間に及ぶ。
インターフェイス(接続端子)はちょっと変わっていて、右側には USB ひとつだけしかない。
右側に端子があるとマウスを使ったりメモを取るときに邪魔になるからのようだが…… 現場からそうした要望があったのだろうか?
とりあえず USB はあるので、有線マウスや外付けテンキーは繋げられる。
左側には普通の USB が1つと、USB-C が2つ、HDMI と オーディオジャックも備わっている。
普通の USB は 10Gbps で、USB-C はどちらも Thunderbolt 4 だ。
SDカードリーダーはなく、USB-C の1つは充電端子も兼ねるが、一通りのものはそろっている。
左側面。端子はこちらに集中させている
右側面は、奥に USB が1つのみ!
Wi-Fi は、日本で発売されるものは Wi-Fi 6E のようだ。 Bluetooth は 5.3。
最新の Wi-Fi 7 はまだ対応ルーターが高価で、日本では認可も遅かったためか、本機では採用されていない。
Wi-Fi 7 環境で使うことが当分ないなら、Wi-Fi 6E でも問題はないだろう。
モニター / サウンド / カメラ
ASUS と言えば OLED(有機ELディスプレイ)搭載ノートPCで知られているが……
本機はビジネスモデルだからか、従来の非光沢 液晶モニターを搭載している。
ビジネスモデルは一般的に、写り込みがなくて見やすいノングレア(非光沢)が好まれる。
しかし超高発色の OLED は、色がくすむノングレアでは真価を発揮できない。
本機は OLED の発色よりも、作業しやすさを重視したようだ。
とは言え、解像度は2560x1600、俗に「2.5K」と呼ばれる高精細画質。
発色も sRGB比 100% と液晶としては最上級で、コントラスト比も 1200:1 と高め。
縦横比は作業がしやすい 16:10 で、縦幅が大きく、画面サイズの割に広く感じる。
視野角 も全方位89度とかなり広い。輝度 は最大400nit。
そして意外なことに、リフレッシュレートが最大 144Hz もある。
ゲームで注目される性能だが、高いとカーソルの動きが滑らかになるので、画像加工や表計算などの作業にも意外と影響はある。
ただ、バッテリーの持ちを優先するなら、一般的な 60Hz で使う方が良いだろう。
液晶としてはとても高品質で高精細
ブルーライトを軽減する機能もある
ヒンジは180度、平らになるまで開ける
ミーティングやプレゼンに便利だ
スピーカーは特にブランドものという訳ではないようだが、Dolby Atmos のイコライザー(音響調整ソフト)が備わっており、音質はとても良かった。
ドルビーらしい音の広がりがあり、低音も意外なほどしっかり響く。
最初から最適な設定が施されているのか、自動調整(ダイナミック)にしたり、設定を変えたりしてみても、あまり良くならなかった。
本機のサウンドはそのままで使うのが良さそうだ。
もちろんドルビー対応のヘッドホンなどを使えば、立体音響も楽しめる。
なお、海外はオンライン会議がコロナ禍以前から一般的であったため、発言者の声がよく聴こえるよう、ビジネスモデルでもサウンドを重視している場合が多い。
※細かい音響設定は Dolby Atmos のソフトで行える。が、変える必要はなさそう。
Webカメラは FHD(200万画素)で、顔認証用のIRカメラも内蔵している。
第2世代の AI PC であるため、Windows スタジオエフェクトと呼ばれるWEB会議用の映像補正機能を使うことができるが、マイクロソフトの機能提供の遅れがあり、(2025年1月時点では)すべての関連機能を使うことはできない。
だが、 背景ぼかし、顔の位置補正といった、一般的な機能は利用できるので不自由はない。
以前は機能提供が行われていないと、背景ぼかしさえ使えなかったりしたのだが……
本機はそういうことはないので安心して欲しい。
※2025年1月時点で使えたのは自動フレーミング、アイコンタクト、背景効果の3つ。
パーツ性能
処理性能(CPU)
ASUS ExpertBook P5 の2025年発売モデルは、CPU に Core Ultra シリーズ2(Lunar Lake)を搭載している。
2024年の秋に発売された最新のノート用CPUで、ピーク性能よりも省電力性能を優先しており、低発熱と長時間駆動がウリだ。
AI専用コア(NPU)の能力は 47TOPS で、第2世代の AI PC「Copilot+ PC」の要件である 40TOPS を満たしている。
ExpertBook P5 の2025年型には Core Ultra 7 搭載モデルと Core Ultra 5 搭載モデルがあるが、今回の試用機はメモリ32GBを内蔵する上位モデル「Core Ultra 7 258V」を搭載している。
コア構成 はPコア4、Eコア4の、計8コア。
これは近年のCPUとしては少なく、しかも1つのコアで複数の処理を行うハイパースレッディングが廃止されているため、スレッド数もコア数と同じ8。
初代 Core Ultra の Core Ultra 7 155H は16コア22スレッドだったので、だいぶ減っている。
よってスレッド数が多いほど有利な マルチコア性能 は弱いのだが、その分 シングルコア性能 が強化されており、発熱の低減にも繋がっている。
この影響で、やや得手不得手が見られるが、ほとんどの処理で初代 Core Ultra(Meteor Lake)より実働性能では勝る。
基準の TDP(電力の目安)は 17W となっているが、これは「ファンモード」で変化する。
ファンモードが「パフォーマンスモード」だと 30W 以上の電力を投入してフルパワーで動くが、本機の場合、コンセントに繋がっている時しかこのモードは選べない。
「スタンダードモード」は標準的な設定で、「ウィスパーモード」にすると 15W 以下の省電力となり、パワーは下がるが静かに動作、バッテリーも長持ちする。
ファンモードは Fn+F キーで簡単に切り替えられるので、用途に合わせて使い分けよう。
名前が「ファンモード」なのでファンの速度が変わるだけだと思ってしまいそうだが、CPUの性能、すなわちパソコンの処理速度自体が変わるのでお間違えなく。
以下はパフォーマンスモードで測定したCPUベンチマークソフト Cinebench R23 の結果と、主要ノートPC用CPUとの比較グラフだ。
パフォーマンスモード 10分測定
ウィスパーモード 10分測定
マルチコア性能(Cinebench R23)
Core i9-14900HX(125W):24000
Ryzen AI 9 HX370 (65W):22900
Core i9-13900HX(100W):22000
Ryzen AI 9 HX370 (20-50W) 21100
Core i7-13700HX:20000
Ryzen 9 8945HS(75W):17000
Ryzen 7 7840HS(80W):16900
Core i7-13700H:13500
Core Ultra 7 155H (45W):12000
Core Ultra 5 125H:10500
Core Ultra 7 258V (32.5W):10380 (パフォーマンス)
Core Ultra 7 258V (27W):9800 (スタンダード)
Ryzen 5 6600H:9750
Core i7-1360P:9700
Ryzen 7 7730U:9600
Core Ultra 7 258V (14W):7200 (ウィスパー)
Core i7-1355U:7000
Ryzen 3 7330U:4950
Intel U300:4050
Celeron N5100:1400
シングルコア性能(Cinebench R23)
Core i9-14900HX:2150
Ryzen AI 9 HX370:2020
Core i9-13900HX:2020
Core Ultra 7 258V:1900
Core i7-13700HX:1850
Core i7-13700H:1850
Core i7-1360P:1820
Ryzen 9 8945HS:1800
Core Ultra 7 155H:1760
Ryzen 7 7840HS:1760
Core Ultra 5 125H:1740
Core i7-1355U:1720
Intel U300:1560
Ryzen 5 6600H:1480
Ryzen 7 7730U:1430
Ryzen 3 7330U:1370
Celeron N5100:580
※近年の全CPUとの比較は こちら をご覧ください。
マルチコアのスコアはパフォーマンスモードで約10380。投入電力は 32.5W。
最新CPUとしては、やはりマルチコアの性能は高くない。
ただ、投入電力の低さとコアの数を考えると割高なスコアであり、電力効率の高さを伺える。
そしてシングルコアは約1900と、十分な数値だ。
特筆しておきたいのは、パフォーマンスモード時の動作音。
通常、フルパワーで動かすと結構なファンの騒音が生じるのだが、本機はそこまでうるさくなく(40~45db)、標準的な動作音だった。
CPU温度は80℃まで上がっていたのだが、冷却設計が優れているのか、最低限のファンの回転で放熱が可能なようだ。
スタンダードモードにすると電力は25~27W、高負荷時のCPU温度は70℃前後に下がった。
だが、マルチコアのスコアは9800と、大して変わらなかった。シングルコアも変化なし。
騒音はさらに減ったので(40db以下)、より効率的に使用できる。
ウィスパーモードだと電力は14Wとなり、さすがにマルチコアのスコアは相応に低下したが、シングルコアは変わらない。
CPU温度は50℃台まで低下し、動作音はほとんど聞こえなくなる。
では、この性能で作業がどのぐらいの速度で動くのか?
以下はパソコンの速度測定ソフト PCMark10 の結果だ。
パフォーマンスモードとウィスパーモード、それぞれで測定している。
パフォーマンスモード(32.5W)
ウィスパーモード(14W)
アプリの起動速度やウェブサイトの閲覧といった基本の処理は、近年のCPUはどれも大差ない。
マルチコアの少ない Core Ultra シリーズ2(Lunar Lake)でも同様で、Windows の起動速度なども、体感的には差はなかった。
表計算は15000を越える、非常に高いスコアが出た。
ノート用の第13世代 Core だと 7000~8000 ぐらい、初代の Core Ultra で改善されて 12000 以上が出るようになったが、シリーズ2(Lunar Lake)でさらに高まっている。
表計算を得意とする Ryzen の最新型(Ryzen AI 9)と比べてもほぼ互角だ。
書類作成も以前は7000台が多かったが、8000を超えている。
しかも表計算と書類作成、どちらもパフォーマンスモードとウィスパーモードで差がない。
これなら普段はウィスパーモードで使う方が良いだろう。
画像/写真加工に関しても、Ryzen AI 9 を超えるほどの素晴らしいスコアが出ている。
詳しくは後述するが、12月に内蔵グラフィック機能が改善された影響もあるかもしれない。
もはやビデオカード搭載機と変わらないレベルである。
ただ、マルチコア性能が直接影響する動画編集は伸びておらず、第13世代 Core と変わらない。
全体として、非常に高いスコアが出ているのがわかる。
特にビジネスに影響する速度で、第13世代 Core や初代 Core Ultra を大きく超える。
それでいて消費電力は下がっているので、その優秀さがわかるはずだ。
グラフィック機能(GPU)
ASUS ExpertBook P5 はビデオカードを搭載していないため、グラフィック機能(GPU)は CPU に内蔵されたものが使われる。
Core Ultra 7 258V を含む Lunar Lake(ノート用 Core Ultra シリーズ2)は、Meteor Lake(初代 Core Ultra)の Xe-LPG を改良した「Xe2」というグラフィック機能を内蔵している。
能力が向上しているのはもちろん、動画をより省電力で再生でき、新しい動画圧縮規格 VVC も利用できるようになった。
GPU(グラフィック機能)を AI に使用した場合の処理性能は 64TOPS。
NPU の 47TOPS と合わせて、100TOPS を超えるとアピールされている。
ただ、このグラフィック機能は Intel Arc という新しいシステムであるため、発展途上なところがあり、ソフトウェア側の対応も GeForce や Radeon と比べると、まだ不十分だ。
よって実力を発揮できないケースもあるのだが……
以下はパフォーマンスモードで実行した、ベンチマークソフト 3D Mark:TimeSpy の結果だ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
・3D Mark: TimeSpy(下位/内蔵ノート用GPU)
GeForce RTX 4050 Laptop:8500
GeForce RTX 3060 mobile:8350
GeForce GTX 1660Ti mobile:5550
GeForce RTX 3050 4GB mobile:4850
Core Ultra 7 258V(CPU内蔵、Xe2):4000
Ryzen AI 9 HX370(CPU内蔵、Zen5):3500
Core Ultra 7 155H(CPU内蔵、Xe-LPG):3500
GeForce GTX 1650 mobile:3400
Ryzen 9 8945HS (CPU内蔵、Zen4 後期):2750
Ryzen 7 7840HS (CPU内蔵、Zen4):2500
第13世代 Core i7(CPU内蔵、Iris Xe):1800
Ryzen 7 7730U(CPU内蔵、Zen3):1200
Ryzen 3 7330U(CPU内蔵、Zen3):580
※近年の全GPUとの比較は こちら をご覧ください。
少し驚きの結果が出た。 グラフィックスコアは(パフォーマンスモードで)約4000。
11月に同じCPUで計測した時は 3600 だったのだが、今回(1月)は大きく上がっていた。
他の測定でも同じぐらいの割合で増えていたので、測定誤差というわけではなさそうだ。
これは、本機の作りの良さもあるかもしれないが……
おそらく、2024年12月に Intel Arc の新型ビデオカードが発売され、それに合わせて関連の制御ソフトウェアやドライバが刷新された影響と思われる。
これにより Core Ultra シーズン2(Lunar Lake)の内蔵グラフィック性能は、少なくともこのベンチマークにおいては、市販CPUの中でトップとなった。
まだ現行のビデオカードには及ばないが、いよいよ脅かす性能になりつつある。
なお、スタンダードモードで測定しても、パフォーマンスモードとほとんど変わらなかった。
ウィスパーモードだとスコアは3280となり、パフォーマンスの82%程の性能となる。
では、この3D描画性能で実際にソフトウェアがどのぐらい動くのか?
以下は人気ゲームを実際に動かしてみた動作速度の結果だ。
なお、本機はモニターの解像度が 2560x1600 なので、それを基準に測定している。
一般的な 1920x1080 より高負荷での測定なので注意して欲しい。
※動画は検証機で録画したものですが再生速度は30fpsです。止まっている場合は長押しして下さい。
・モンスターハンターライズ
解像度 2560x1600(実質 2560x1440)の高画質で、戦闘中だと 35~45fps。
30fps を超えているので普通に動作可能。中画質だと 70~90fps となり、より滑らかに動く。
ウィスパーモードでも中画質なら 45~55fps 出るので、騒音を抑えて動かすことも可能だ。
なお、11月に同じCPUを搭載するノートPCで測った時は中画質で 60fps 前後だったので、その時より 10~30fps ほど上がっている。
・Ghost of Tsushima
解像度 2560x1600 の高画質、XeSS バランスで効かせた状態で 30~40fps。
中画質だと 35~45fps となる。30fps は超えるので、普通にプレイ可能。
ウィスパーモードでも解像度を一般的な 1920x1440 に下げれば、同程度で動作した。
なお、Intel Arc の XeSS は、GeForce の DLSS に相当する技術(アップスケーリング)である。
・龍が如く8
解像度 2560x1600 の高画質で 45~50fps。
高画質で普通に動作可能。 XeSS はバランスの設定で、最初から適用されていた。
11月に同じCPUを搭載するノートPCで測った時は 40~45fps だった。
なお、このゲームは DLSS や XeSS の効果が大きく、XeSS をオフにして測定してみると 20fps まで落ち込んだ。
新しい作品でも、中~高画質で問題なく動かすことができた。
本機はビジネスモデルなのでゲームは評価外だとは思うが、3D描画のあるソフトウェアも同様に動かすことができるはずだ。
ライバルである Ryzen AI 9 HX370(8月測定)と比較しても、モンスターハンターライズは同等で、Ghost of Tsushima や 龍が如く8 は(2025年1月の)Core Ultra 7 258V の方が、やや上回る。
省電力のCPUでこれだけの性能を発揮できるのは、さすが最新型という他ない。
なお、Core Ultra 5 は内蔵グラフィック機能の性能が Core Ultra 7 より少し低い。
ここでの測定結果は Core Ultra 7 258V 搭載機のものなのでご了承を。
ストレージ(記録装置)とメモリ
2025年モデルの ExpertBook P5 のストレージ(データ記録装置)は、Core Ultra 7 モデルが容量1TB、Core Ultra 5 モデルは容量512GBとなっている。
どちらも小型で高速な NVMe SSD を使用しており、より速い Gen4 対応品だ。
今回の検証機が搭載していたのはウエスタンデジタル社の PC SN5000S という製品。
2024年に発売された新型で、1つのセル(格納庫)に4ビットのデータを詰め込む QLC という方式のもの。
QLC だと MLC(1セルに2ビット)や TLC(1セル3ビット)の製品より安い反面、速度が遅く、耐久性も低くなりがちだが、新技術によりその問題を克服したとアピールされている。
実機でのベンチマークの結果は以下の通りだ。
標準設定での測定
NVMe SSD 設定の測定
読み込みは約6380MB/s、書き込みは約5600MB/s。
メーカー公称値とほぼ同じだが、読み込みは少し速い。
Gen4 の NVMe SSD としては読み書き共に高い数値で、確かに「QLC だから遅い」みたいな印象は全くない。
5年間の保証があるため、寿命や信頼性も良いようだ。
ランダムアクセスはあまり速くないが、Core Ultra や Ryzen AI のような新型のノートPC用CPUは、節電のためかランダムアクセスを抑える傾向が見られる。
本機の場合、それでも読み込み速度が 800MB/s あったりするので、むしろ速い方だ。
メモリは最新型の LPDDR5X を 32GB、CPU の中に内蔵している。
これは Lunar Lake(Core Ultra シリーズ2)の特徴で、一緒にした方がメモリアクセスをより高速化できる。
メモリだけ交換することはできなくなるが、どのみち LPDDR5X は交換できない直付け用メモリだし、32GB あれば容量は十分だ。速度も申し分ない。
ただし Core Ultra 5 搭載機には、メモリが32GBのもの(Core Ultra 5 228V)と、16GBのもの(Core Ultra 5 226V)があるので注意して欲しい。
総評
なんと言っても本機は、独自のAI議事録作成とAI翻訳字幕を使えることが長所だ。
無料で、オフラインで、手軽に、月額数万円クラスの議事録作成ツールや自動翻訳を使えるのはお得であり、便利である。
PC自体もビジネスモデルらしく、備品も含めてしっかりした作り。
BIOS の安全性を保証する規格に適合しているのも安心感がある。
価格も20万円台前半で、Lunar Lake 搭載機としては高くない。
その実働性能はやはり素晴らしく、今回の検証ではドライバなどのアップデートで、より良くなっているのを感じた。
ただの宣伝文句ではない、ちゃんと AI を実用できるノートPCで、ビジネスや学習はもちろん、多用途できる高性能を持つ。
メインPCとして便利に、安心して使えるノートパソコンだ。
※以下は Core Ultra 7 搭載モデルのスペックです。
形式:14インチ ノートパソコン
CPU:Core Ultra 7 258V(Lunar Lake)
NPU:47TOPS(第2世代)
グラフィックス:CPU内蔵(Intel Arc 140V)
メモリ:32GB(LPDDR5x、CPU内蔵)
ストレージ:1TB NVMe SSD(Gen4)
モニター:縦横比16:10、解像度2560x1600、リフレッシュレート144Hz、sRGB 約100%
通信:Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
重量:約1.27kg、ACアダプタ コード込み約300g(65W)
バッテリー:63Wh
ビジネス機能:AI会議補助機能(議事録自動作成、翻訳字幕など)、AIマイク機能、PC保護ツール、BIOS安全規格準拠、指紋認証、顔認証、離籍ログオフ等
その他:3つの動作モード、メディアコントロール付きパッド、Thunderbolt 4 x2
定価:249,800円(税込)
※詳細は ASUS ストア と 公式案内ページ もご覧下さい。
※以下の Core Ultra 5 モデルもあります。
・Core Ultra 5 228V 搭載:メモリ32GB、ストレージ512GB、219,800円
・Core Ultra 5 226V 搭載:メモリ16GB、ストレージ512GB、199,800円
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。