• 2023年6月14日に発売されたASUSの携帯ゲームPC
  • パソコンのゲームをどこでも手軽に楽しめる
  • 実はモニターやキーボードを付ければ高性能な Windows パソコンと化す
ASUS ROG ALLY

こんな人にオススメ!

  • 好きな場所でPCゲームをしたい人
  • もっと手軽にPCゲームができる手段が欲しい人
  • 処理能力の高い超小型PCを探している人
このレビューは実機の貸出を受けて作成しており、リンクにはアフィリエイトが含まれています。
レビューは公正に、忖度なく行っております。

予想以上に Windows 機

ASUS が足かけ5年に渡る歳月をかけて開発し、新機軸の性能を持つ AMD の最新CPUを搭載する、ゲーム界隈ならずとも注目されている小型携帯PCゲーム機。
それが2023年6月に発売されたばかりの「ROG ALLY」だ。

このマシン、見た目は Nintendo Switch のようなゲーム機なのだが、使ってみると思っていた以上に Windows 搭載パソコンだった。
しかもその処理性能は、そこいらの最先端ノートPCを超えるほど。

そんな訳で、別枠で扱おうと思っていたが、いつも通りパソコンのレビューとして、その特性と性能を紹介したいと思う。

ASUS ROG ALLY

基本的には携帯用のゲーム機だが、Bluetooth と映像出力が可能な USB-C が付いており、モニター・マウス・キーボードを接続すればパソコンとしても使用可能だ。

搭載されている CPU は新世代の携帯ゲームPCのために開発された Ryzen Z1 Extreme
AMD の最新設計 Zen4 と、RDNA3 と呼ばれる新型内蔵グラフィック機能を併せ持つ。
その設計は Phoenix と呼ばれ、それを流用したノートパソコン用のCPUの開発が進んでおり、今後のパソコンの動向を占う意味でも重要なマシンである。

価格は税込109,800円。性能を考えるとかなり安い。
今回はゲーム機としての概要や使い勝手をレビューし、それからパソコンとしての能力を検証していきたい。

製品の概要

デザインと使い勝手、注意点など

7インチのモニターの両脇に2本のスティックとボタン、十字キーが付いた、パソコンゲーム用の携帯ゲーム機だ。
Nintendo Switch はモニターが6.2インチなので、こちらの方が一回り大きい。

とても手になじむ、違和感のない握りやすさで、ASUS が無数のモックアップの末に完成させたという苦労が偲ばれる。

電源を入れるとスティックの周りに七色の美しいライトアップが施される。
重さは 608g と、Switch や昨今の iPad よりは重いが、基本的に両手で持つのでそんなに重さを感じたことはない。

ASUS ROG ALLY 外観

白く美しいフォルムの ROG Ally
一部が七色に光るのはゲームPCのお約束

ROG ALLY と Nintendo Switch の大きさ比較

Nintendo Switch との大きさ比較

モニターは120Hzリフレッシュレートに対応しており、タッチ操作に対応。
さらに高耐久で美しく、写り込み防止も備わったゴリラガラスでカバーされている。
サウンドも Dolby Atmos 対応だ。

何度も言うように Windows 機なので、初回起動時には Windows のセットアップが行われる。
Windows のデスクトップもあり、モニターの小さいパソコンとしても使える。

ただ、起動時にはまず Armoury Crete SE と呼ばれる専用のソフトウェアが表示される。
これはインストールしたゲームを簡単に選択・起動できる、いわゆるゲームランチャーで、Steam や Xbox Game はもちろん、Epic Games や Battle.net のソフトもストアアプリを通さず起動できる。

また、このソフトで ROG ALLY の各種設定を行うことができ、ゲームごとの操作、動作パフォーマンス、光り方なども変更可能。インターフェイスの見た目も良い。

ROG Ally Armoury Crete SE

起動後はゲームメニューが表示される
ボタン一つでいつでも呼び出せる

ROG Ally 設定画面

ゲーム単位の設定が可能
UIがカッコイイことも重要だ

さらに専用ボタンで起動できるコマンドセンターというソフトが備わっており、これで動作モード、リフレッシュレート、解像度、RSR(Radeon の描画高速化機能)など、ゲームに関わるシステムを簡単に変更できる。

輝度やボリュームの調整、電源のON/OFFをここから行うこともできるので、ゲーム以外でも多用することになるだろう。

ROG Ally コマンドセンター
※重要項目をタッチで切り替えられるスマホライクな操作。これもボタン1つで呼び出せる。

グラフィック性能は「現行最高のCPU内蔵グラフィック機能だが、まだビデオカードには及ばない」といったところ。
普通の(ビデオカードを搭載した)ゲーミングPCにはかなわない。(詳しい性能は後述)

ただ、こんなに小さな画面なので、解像度が低くてもきれいに見える。
24型モニターの1/3、ノートパソコンの1/2ぐらいであるため、画素(ドット)の細かさも同様の比率となり、解像度が1280x720でも、実質2.5Kや3.8Kの緻密さとなる。

そして1280x720なら動作が軽いので、その分だけ描画速度はアップする。
低解像度でプレイするものだと考えれば、その速度は GeForce GTX 1650 ぐらいの低クラスビデオカードに比肩する。

ROG Ally 解像度の画像
※同解像度なら画面が小さいほど画素は細密になる。解像度が低い=表示が荒い、とは限らない。

ただし、画面の小ささはデメリットもある。
パソコンのゲームというものは、パソコンのモニターとキーボードとマウスでプレイすることを前提に作られているので、こんなに小さな画面では文字が見え辛いことも多く、コントローラー操作に対応していないケースも多い。

本機のモニターはタッチパネルなので、コントローラーで選べないボタンでも指で直接押せるのだが、画面が小さいとボタンも小さくなりがち。

贅沢を言えば、ノートパソコンのタッチパッドのようなものを備えているか、画面スライドでのカーソル移動やエイム(照準合わせ)を可能にして欲しかった。

ROG Ally, Civilization IV

戦略ゲーム シヴィライゼーション6
動作は問題ないが文字が小さすぎ!

ROG Ally, Apex Legends

FPSはエイムがスティック操作になる
スマホFPSのような操作ができれば…

一方、最初からコントローラーと低解像度のテレビ画面で遊ばれるのを想定して作られている、ゲーム機からの移植作や、ゲーム機版と同時発売のPCゲームは、何も問題はない。
モンスターハンターやストリートファイターのようなゲームはとても快適だ。

そして本機の大きな長所は、Windows ソフトが動くことだ。
先行している携帯ゲームPC「Steam Deck」はオリジナルOSのため、Steamのゲームしかプレイできないが、こちらは Windows で動くものは全部使える。
大手のストアで売っていないゲームはもちろん、同人ソフトも動く。

ゲーム以外のソフトウェアも動き、CPUがマルチコアや表計算に強いので、外部モニターに繋げれば Photoshop や Office も軽快に扱える。

ROG Ally, Street Fighter VI

ストリートファイター6 はゲーム機版もあるのでコントローラー対応は完璧

ROG Ally, 東方妖々夢

有名な同人ソフト、東方妖々夢。動かせるのは市販ゲームに限らない

大きな欠点はバッテリーだろう。
ヘビーゲームでの公称駆動時間は2時間しかない。
しかも実際に使った感じでは、ターボモードで使用していると1時間で切れる。2時間はムリ。

バッテリー容量は40WHrで、大きさを考えると少なくはなく、ノートPC基準の公称駆動時間は10.2時間あるのだが、やはり消費電力が大きい模様。
出先で使う場合は、ちょっと抑えめの動作モードにして、不必要に高い輝度やリフレッシュレートにはしない、ヘビーすぎるゲームは控える、といった使い方をした方がいいだろう。

家で充電しながら使う場合や、電源に付けたままモニター出力で使う場合は問題ない。
電源が付いている状態だとターボモードがよりフルパワーになり、最大限の力を発揮できる。
大きな画面だと解像度は1920x1080でないと画質が辛いので、その分で相殺されるが、モニターとキーボード&マウスがそろえば、前述した画面の小ささやコントローラー操作から来る問題は解消される。

もう一つの難点は、汎用のインターフェイス(接続端子)が USB-C 1個なことだ。
パソコンとして使うなら USB-C ハブは必須だ。

ROG Ally デスクトップパソコン形態
※USB-Cハブ、モニター、キーボード&マウスがあれば、完全にパソコンになる。
キーボードとマウスが Bluetooth 接続なら、コードのごちゃごちゃ感はかなり減る。

USB-C ハブは私は こちら を使用しているが、HDMIなどの映像出力端子があって、65W以上の充電が可能なものならどれでも良いはずだ。
公認の 接続ドッグ外付けGPUモジュール も用意されているが、安くはない。
なお、本機の USB-C のデータ転送速度は 10Gbps のようだ。

無線通信は最新規格である Wi-Fi 6E に対応。
電源ボタンには指紋センサーが内蔵されており、なにげに指紋認証によるセキュリティ対策も備わっている。

パーツ性能

処理性能(CPU)

本機は AMD が携帯ゲームPCのために開発した「Ryzen Z1 Extreme」を搭載する。
Ryzen の最新設計「Zen4」で作られ、さらに新世代の内蔵グラフィック機能「RDNA3」を持つという、2023年最新の CPU だ。

夏に下位版の Ryzen Z1 を搭載する低価格機も登場する予定だが、グラフィック性能はかなり落ちる模様。

Zen4 はノートPC用がぜんぜん普及しておらず、デスクトップ用は Intel の第13世代 Core に完全に負けているため、鳴かず飛ばずの状態が続いていた。
だが、この Ryzen Z1 Extreme の性能は、小型機用としては極めて優秀だ。

すでにその設計「Phoenix APU」を使うノート用CPUの発売が公表されており、Intel が準備中の Meteor Lake とどんな勝負になるのか、今から楽しみである。

6月の時点では、当面のノートPCや携帯機の市場を席巻できる能力がある。

Ryzen Z1 Extreme, CPU-Z
※CPU情報表示ソフト「CPU-Z」が動かなかったので、上記の画像はCPU-Zの背景に、データをこちらで記入したものです。

8コア16スレッドのCPUで、TDP(電力と発熱の目安)は 9W~30W。
ただ、最大TDPは 45W のようで、実際にフルパワーのときは 40W 以上で動作していた。
共有キャッシュは 16MB で、ノート用の第13世代 Core i7(Core i7-1360P)の 18MB と同じぐらい。
プロセスルールは 4nm と、現行最高クラス。

本機は TURBO(ターボ)、パフォーマンス、サイレンス の3つの動作モードを選択できる。
さらにターボは電源接続時とバッテリー駆動時で最大電力が変わるため、実質4つのモードがある。

以下はターボで電源を繋げている時に測定したCPUの性能(Cinebench R23 の計測結果)と、他のノート用CPUとの比較グラフだ。

Ryzen Z1 Extreme, CINEBENCH R23, ROG Ally

Ryzen Z1 Extreme

測定中の再現

・マルチコア性能(Cinebench R23)

Ryzen Z1 Extreme:14000

Core i9-13900H:13700

Core i7-13700H:13500

Core i7-12700H:12500

Core i7-11800H:10800

Core i7-1360P:9700

Core i5-1340P:9500

Core i7-1260P:8700

Core i5-1240P:8400

Core i7-1255U:8300

Ryzen 5 5625U:8050

Core i5-1235U:7500

Core i7-1165G7:5800

Core i3-1215U:5500

Ryzen 3 7330U:4950

Core i3-N300:4100

Core i5-1135G7:3850

Core i3-1115G4:2600

Celeron N5100:1400

Celeron N4100:950

・シングルコア性能(Cinebench R23

Core i9-13900H:1900

Core i7-13700H:1850

Core i7-1360P:1820

Core i7-12700H:1810

Ryzen Z1 Extreme:1800

Core i7-1260P:1735

Core i7-1255U:1730

Core i5-1340P:1720

Core i5-1240P:1680

Core i5-1235U:1650

Core i3-1215U:1550

Core i7-1165G7:1500

Ryzen 5 5625U:1400

Ryzen 3 7330U:1370

Core i5-1135G7:1350

Core i3-1115G4:1300

Core i3-N300:980

Celeron N5100:580

Celeron N4100:380

マルチコアの測定結果は約14000。 なんと第13世代 Core i9 を超えてしまった。
ノート用CPUとしては、現行最高クラスである。 こんな小さなゲーム機なのに。
最後発だけあって Phoenix は本気で凄いようだ。

ゲームの動作に影響するシングルコア性能は約1800
第12世代 Core と第13世代 Core の間ぐらいで、こちらはトップクラスではないが、やはり十分な能力。

既存の Ryzen と同じくマルチコアが強いので、どちらかと言うとゲームより作業向けである。
まあ、これだけ総合的に高ければ、処理速度において不得手なものはない。

サイズと操作がコレなので周辺機器がないと作業に使うのはムリがあるが、持ち出し用の小型機としても、とても面白い製品と言える。

パソコン測定用ソフト PCMark 10 の結果は以下の通りだが、このクラスになるとウェブサイト閲覧などの軽作業は数値が頭打ちとなる。

ROG Ally, PCMark10

表計算の評価値が特に優れているが、これは Ryzen の特性だ。
マルチコアが良いため写真/画像加工の数値も高く、CPU だけで考えると前述したように Photoshop や Office を使うのに向いている。

ただ、ここまでの評価は電源を繋げてターボモードにした、フルパワー時の評価。
他のモードやバッテリー駆動時はどうなのか?
その結果は以下の通りだ。

ROG Ally, CINEBENCH R23, バッテリー駆動ターボモード

バッテリー駆動ターボ

ROG Ally, CINEBENCH R23, パフォーマンスモード

パフォーマンス

ROG Ally, CINEBENCH R23, サイレントモード

サイレンス

電源に繋がっているときのターボモードは投入電力が一時的に40Wを超えることもあり、主に37W前後で動作していた。
アイコンには30Wと書いてあるが、最大電力はもっと高い。平均値ということなのだろうか?
高負荷時のCPU温度は95℃に達する。

バッテリー駆動時のターボーモードは最大30W、CPU温度は80℃となる。
アイコンには25Wと書いてあり、電源が繋がっているときより控えめだ。
スコアはマルチコアが 12700、シングルコアが 1740 で、そこまで大きな差はなく、十分に高性能である。

パフォーマンスモードは20W、CPU温度はMAX65℃ぐらいになる。
アイコンには15Wと書いているが、高負荷時の電力はもう少し高い。
マルチコアのスコアは 9500 まで落ちたが、シングルコアは 1775 と、誤差程度だった。

現行のゲームでマルチコアに最適化されているものはほとんどなく、基本的にシングルコア性能が影響するため、シングルコアを落とさずに消費電力を減らせるのはゲームに向いている。
バッテリー駆動時は、普段はパフォーマンスで使うのが良さそうだ。

サイレンスモードは9W、CPU温度はMAX55℃ぐらい。
スコアはマルチコア 6000、シングルコア 1500 と、大きく下がる。
それでも第11世代の Core i7 ぐらいあるので普段使いには問題ないが、ゲーム機なので「普段使い」はあまりしないか…?

サイレンスモードだと冷却ファンの音はほとんど聴こえなくなり、すごく静かになる。
だが、本機はターボでもそこまで大きな音がするわけではない。
ゲームの音でかき消される程度の駆動音なので、騒音を減らすためにモード調整するということはほぼないだろう。

また、CPUの熱はコントローラー側に伝わらないようになっているため、CPU温度が95℃になっても、熱はほとんど感じない。
ただ、上部に付いている排気口に手をかざすと、結構な熱さの風が吹き付けてくる。

なお、発表会では Apple のCPUとの比較がアピールされていたようなので、それも掲載しておきたい。
Geekbench 5 でのCPU測定結果と比較グラフは以下のようになる。

Ryzen Z1 Extreme, ROG Ally, Geekbench 5

・マルチコア性能(Geekbench 5)

ROG Ally(Ryzen Z1 Extreme)10300

iPad Pro 12.9″ 6th(Apple M2)8450

iPad Air 5th(Apple M1)7200

Surface Pro 9 5G (Snapdragon 8cx Gen3) 5700

iPad mini 6th(Apple A15)4400

iPad 10th(Apple A14)4200

Galaxy Tab S8(Snapdragon 8 Gen1)3000

Surface Go 3(Core i3-10100Y)1600

Galaxy Tab A 2019(Snapdragon 429)550

・シングルコア性能(Geekbench 5)

ROG Ally(Ryzen Z1 Extreme)1880

iPad Pro 12.9″ 6th(Apple M2)1850

iPad Air 5th(Apple M1)1700

iPad mini 6th(Apple A15)1580

iPad 10th(Apple A14)1570

Galaxy Tab S8(Snapdragon 8 Gen1)1180

Surface Pro 9 5G (Snapdragon 8cx Gen3) 1100

Surface Go 3(Core i3-10100Y)980

Galaxy Tab A 2019(Snapdragon 429)230

発表通り、特にマルチコア性能において Apple M2 より優れている。
Apple はファンレス(ファンなし機)のために省電力と低発熱を重視しており、本機のようなファンでの冷却が前提のCPUとはコンセプトが異なるが……

ともあれ小型機向けのCPUとして、現行最強クラスの性能を持っていることがわかる。

グラフィック性能とメモリ等

ゲーム機であるからにはグラフィック性能が非常に重要だ。
本機はCPU「Ryzen Z1 Extreme」に内蔵されているグラフィック機能を使用する。
つまり、CPU内蔵グラフィック機能であり、ビデオカードを備えているわけではない。
よってビデオカードを搭載するゲーミングモデルには及ばない。

しかし新世代の RDNA3 で設計されたグラフィック機能は、旧来のCPU内蔵のグラフィック機能を大きく超える。

以下は 3D Mark : Time Spy で調べた本機の3Dグラフィック性能と、他のグラフィック機能との比較グラフだ。

Ryzen Z1 Extreme, ROG Ally, 3Dmark TimeSpy
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。

・3D Mark: TimeSpy(CPU内蔵と下位VGA)

GeForce RTX 4050 Laptop:8500

GeForce RTX 3060(note):8350

GeForce RTX 1660Ti(note):5550

GeForce RTX 1660:5400

GeForce RTX 3050(note):4850

GeForce GTX 1650Ti(note):3680

GeForce GTX 1650(note):3400

Ryzen Z1 Extreme(CPU内蔵):2850

GeForce GTX MX550:2650

GeForce GTX 1050Ti:2200

Iris Xe(第13世代 Core 内蔵):1800

Iris Xe(第12世代 Core 内蔵):1700

Iris Xe(第11世代 Core 内蔵):1400

Ryzen 5 5700G(CPU内蔵、Vega 8):1350

Core i3-1115G4(CPU内蔵、Intel UHD):700

Ryzen 3 7330U(CPU内蔵、Vega 6):580

グラフィックスコアは約2850
ビデオカード GeForce GTX 1650 に肉薄しており、補助的なビデオカードである GeForce MX550 より高い。
また、ひと昔前の低価格ゲームPCによく使われていた GeForce GTX 1050Ti よりも高い。

インテルの自慢だったCPU内蔵グラフィック機能 Iris Xe は、もう完全に超えてしまった。
第13世代 Core のものと比べてもスコア差は1.6倍くらいある。
ノートPC開発メーカーがざわつきそうな性能差だ。

さらに、最新の Radeon(AMDのグラフィック機能)なので、新機能「RSR」を利用できる。
これは描画をいい感じに省略して負荷を軽くする機能 FSR(GeForce の DLSS に相当)を、FSR に対応していないゲームにも適用できるもので、本家 FSR には及ばないが、どんなゲームやソフトウェアでも描画を高速化できる。

本機はコントロールセンターに RSR の ON/OFF ボタンが付いており、基本的に ON にして使用しよう。

AMD RSR
※ちなみに Radeon スーパー レゾリューション の略。

なお、グラフィックスコア 2800 は電源接続でターボモードの場合。
バッテリー駆動でのターボだと 2550(91%)、パフォーマンスだと 2250(80%)、サイレントだと 950(34%)となった。

では、実際にゲームがどのぐらいの速度で動くのか?
手持ちプレイを想定した「解像度1280x720、パフォーマンスモード」と、テレビやモニターに接続した場合を想定した「解像度1920x1080、ターボモード、電源接続あり」での、各ゲームの動作速度は以下の通りだ。


(高画質 30fps)

1280x720・パフォーマンス:高画質の戦闘中で40fps前後、中画質で50~60fps辺り
1920x1080・ターボ・電源:高画質の戦闘中で40~50fps、中画質で70fps前後

高画質でも30fps以上が安定して出るので、60fpsにこだわらないなら高画質で楽しめる。
画質より60fpsにこだわるなら中画質で。いずれにせよ快適に遊べる。


(中画質 30fps)

1280x720・パフォーマンス:低画質40fps、中画質35fps、高画質32fps前後
1920x1080・ターボ・電源:低画質45fps、中画質37fps、高画質33fps前後

低画質は解像度1280x720でも荒いので、中画質で遊びたいところだが、なんとか30fpsを維持できるぐらいだ。
だが、普通に遊ぶことはできる。


(高画質 30fps)

1280x720・パフォーマンス:高画質35~45fps、AMD FSR 2.1 使用で60fps以上
1920x1080・ターボ・電源:高画質35~45fps、AMD FSR 2.1 使用で60fps以上

高画質で 40fps 前後の動作だが、このゲームは FSR 2.1 に対応しており、これを ON にすると描画速度が大幅に速くなる。

Ultra Performance(速度重視)なら70fps前後で動作するため、その効果を実感することができるだろう。
ただ、FSR を効かせていると旋回時に若干の乱れが生じるため、メリットばかりではない。
なお、RSR と併用すると画質の低下が生じることがあるので、FSR ON なら RSR は切ろう。


(クオリティ LOW 動画は30fps)

1280x720・パフォーマンス:クオリティ LOW でないとバトルがスローになる
1920x1080・ターボ・電源:クオリティ LOW でないとバトルがスローになる

このゲームは60fpsに達しない場合、その分だけバトルがスローモーションになってしまう。
よって60fpsを維持できる設定にしなければならず、そのためにはクオリティは LOW にするしかない。
ただ、LOW でもそんなに見た目が劣るわけではない。
ターボ+電源ありで解像度1280x720なら NORMAL でも50fps以上で動くので、一人で遊ぶならその設定でも良いかもしれない。


(高画質 30fps)

1280x760・パフォーマンス:ウルトラで40fps、高画質で45fps、中画質で55fps前後
1920x1080・ターボ・電源:高・ウルトラ画質で35fps前後、中画質で40fps前後

このゲームは解像度1280x720で中画質なら60fps近くの速度が出る。
一方、1920x1080だと、どの画質でもあまり差がない。
いずれにせよ30fpsは維持できるので、プレイするうえで困ることはないだろう。

もちろん平面(2D)画像のみのゲームなら、3D描画性能は無関係なので、本機のCPUの性能ならどんなものでも高速で動かせるはずだ。

ちなみに、他のゲーム機と比較すると、ROG Ally のグラフィック性能は8.6TFlops
Nintendo Switch は0.15~0.5TFlops、PS3 は0.2TFlops、Steam Deck は1.6TFlops、PS4 は1.8TFlops、PS4 Pro は4.2TFlops、PS5 は10.2TFlops、Xbox Series X は12TFlopsとなる。

この Flops という単位は曖昧で、そのまま描画速度に反映されるわけではないが、とりあえず ROG Ally のGPUは PS5 に近い能力を持っているようだ。

メモリは最新の省電力型 LPDDR5-640016GB 搭載している。
CPU内蔵グラフィック機能はメインメモリの一部をビデオメモリとして使うので、メモリの速度も重要で、LPDDR5 なら現状最良の選択だろう。

本機はビデオメモリ用に4GBを確保するが、この量は最大8GBまで増やすことができる。
メインメモリとの兼ね合いもあるので4GBで良いと思うが、ヘビー級のゲームをするときは増やした方が安定するかもしれない。

ストレージ512GB の NVMe SSD を搭載している。
使われていたのは Micron 2400 という市販もされている製品で、第4世代 PCIe(Gen4)の小型(22x30)のものが使われていた。

ベンチマーク(性能測定)の結果は以下の通りだ。

Micron 2400 2230, ROG Ally, Crystal Disk Mark, default

標準設定での測定

Micron 2400 2230, ROG Ally, Crystal Disk Mark, NVMe SSD mode

NVMe SSD 設定(同時処理あり)

結果は読み込み 4300MB/s、書き込み 1800MB/s と、ほぼメーカー公称通りの数値。
Gen4 の NVMe SSD としては遅く感じる人もいると思うが、小型だとこのぐらいである。

特筆点はランダムアクセスの読み込み(3段目左)が 1000MB/s を超えていることで、ゲームはこのランダムアクセスの方が影響する。
ここが優れているのはゲーム向きであり、本機にマッチした製品といえるだろう。

容量が 512GB というのは昨今のゲームPCとしては不足気味だが、使わないゲームを入れ替えたりして対処するしかない。
Steam など昨今の大手ゲームストアは、ゲームをアンインストールしてもプレイデータは保持してくれる。
また、micro SDカードリーダーが付いているので、SDカードでも容量を補填できる。

一応、本機の NVMe SSD は特別品でも基板に張り付いているわけでもないので、交換は可能なようだが、分解が必要なため保証外であり自己責任となる。
普通のパソコンとは構造が違うため、推奨はしない。

総評

携帯ゲームPCとしても小型のパソコンとしても、非常に面白い製品だ。

携帯ゲームPCとしての性能は現行最強であり、ライバルが格下の Steam Deck 以外は中国の小メーカーのものしかないため、信頼性やサポート面でも独壇場である。
持ったときのフィット感や、耐久性を感じるガッシリした作りも良く、まだ遊べないPCゲームも少なくないが、素晴らしい作りだ。

そしてモニターに繋げれば、完全な Windows パソコンと化す。
単に大きな画面でゲームができるだけではない。
本格的な作業を含む、あらゆる用途で活用でき、それが可能な高い処理性能を持つ。

安い据え置きパソコンを買うぐらいなら、こちらを買った方が性能が良いし、置き場所に困らないし、そんなに高くないし、必要なら持ち出せる。
安価なデスクトップPCにとって脅威となる製品だ。

パソコンのゲームをしたい人、手軽に遊べる携帯機が欲しい人はもちろん、これからパソコンを学びたい人や、持ち出せて単体起動もできる小型機が欲しい人にとっても注目の、多様な魅力が詰まった小型高性能機である。

ASUS ROG Ally

ROG Ally(RC71L-Z1E512)icon

形式:7インチ 携帯ゲームPC
OS:Windows 11
CPU:Ryzen Z1 Extreme(Zen4 の特殊型)
グラフィックス:CPU内蔵(RDNA3、8.6TFlops)
メモリ:16GB(LPDDR5-6800)
ストレージ:512GB NVMe SSD(Gen4x4)
モニター:解像度1920x1080、リフレッシュレート120Hz、タッチパネル、500nit、光沢
サウンド:ドルビーアトモスのイコライザー
通信:Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1
モバイル性能:重量608g、バッテリー公称10.2時間(ただしヘビーゲームプレイ時は公称2時間)
その他:コントローラー一体型(2スティック+方向キー+14ボタン)、加速度センサー、ジャイロセンサー、マイク内蔵、特殊強化ガラス、専用ゲームランチャー&設定ソフト、スティックにLED装飾、指紋認証
価格:税込109,800円

※詳細は ASUS Store をご覧ください。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。