- マウスコンピューターのスタンダードノートPC「mouse B5」の2022年更新型
- 15型としては軽量、テンキーがあって在宅ワークに向く
- CPU は Ryzen 5 の低電力型で、意外とハイパフォーマンス
こんな人にオススメ!
- 安くて相応の処理性能を持つノートPCが欲しい方に
- 持ち運ぶこともあるけど、自宅で使うのがメインの人に
- 仕事で使える贅沢すぎないノートPCが必要な方に
レビューは公正に、忖度なく行っております。
コスパ重視のワーキングPC
今回取り上げる「mouse B5-R5」の「B」は、ベーシック(標準)の略だ。
マウスコンピューターの一般的なノートパソコンの中では、2022年秋の時点でもっとも安いモデルとなる。
もっと安いものに「mouse C」シリーズがあるが、こちらは処理性能(CPU)が Celeron などの下位クラスのものであり、用途が限られるため、標準モデルとは言えない。
本機は Ryzen 5 を搭載しており、定番の Core シリーズではないが、十分な性能を持つコストパフォーマンスの高い製品だ。
15型ノートPCは外に持ち出すにはやや大きいが、画面が見やすく、テンキーもある。
約1.6kgと軽めのボディで、屋内での移動は苦にならない。
公式サイトでは在宅ワーク向けとアピールされている。
価格は(2022年11月時点で)税込109,800円。
半導体不足でPC価格が高騰を続けている昨今としては、かなりリーズナブル。
以下、そんな本機の特徴をレビューしていきたい。
外観
デザインとモバイル性能
天板には軽くて剛性に優れるアルミニウム素材が使われており、色はそれを活かしたメタリックシルバーとなっている。
表面にかすれ模様のようなヘアライン加工が入っており、金属感が強い。
触感はツルツルしており、光沢もあるが、指紋や手の跡は付きにくい。
内部のデザインは黒とシルバーの2色で、天板以外は樹脂素材となっている。
アルミらしいメタリックシルバーの天板
ヘアライン加工で傷が目立ちにくい
15.6インチのノートパソコンで、横は約36cm、縦は約24cm、厚さは約2cm。
15型としては標準的なサイズだ。
重さは約1.62kgと、15型としては軽め。
ACアダプタも以前より小型軽量の318gで、両方合わせても2kgいかない。
バッテリー持続時間は公称7.5時間で、これも15型ノートとしては標準的だ。
長いという程ではないが、屋内での使用なら困ることはないだろう。
バッテリー容量は約36Whと小さめだが、省電力CPUを使うなどして電力の消耗を抑えている。
中は黒とグレーの二色で梨地加工がある
A4とセミB5サイズとの大きさ比較
インターフェイス(接続端子)は、右側に USB3.0(5Gbps)と USB-C、HDMI がある。
電源の接続も右側だ。
左側には USB2.0 が2つと micro カードリーダー、有線LAN端子、イヤホンジャックが備わる。
左右両方にUSB端子があるのは良いが、マウスを繋げることが多い USB2.0 が左に、USBメモリを刺すことが多い USB3.0 が右にあるのは、逆のように感じる。
USB-C は速度10Gbps(USB3.1)で、映像出力(USB-ALT)と充電(USB-PD)の双方に対応しており、モバイルバッテリー(65W以上)での充電が可能だ。
左側面の接続端子。こちらのUSBは2.0なのでUSBメモリ等には向かない
右側面の接続端子。サイズに余裕があるので一通りの端子はそろっている
通信は最新のもの(Wi-Fi 6 と Bluetooth 5)に対応。
LTE通信モジュールの取り付けも可能で、契約していればモバイル通信もできるが、モジュールの追加には約27000円かかる。
本機のような安価モデルに付けるのは、ちょっと勿体ない気はする。
モニター / カメラ / サウンド
モニターは非光沢のフルHD液晶(1920x1080)だ。
韓国LG社の液晶パネルが使われているが、高価な製品ではない模様。
発色を示す sRGB カバー率は約66%とそこそこで、輝度も 250nit とやや低め。
視野角は全方位80度、コントラスト比は 700:1 と、こちらも昨今のパネルとしては、悪くはないが良くもないといったところ。
ただ、コストパフォーマンスは高いと思われる。
実際に見た感じではそれほど劣っている印象はなく、視野角が相応にあるので見る角度による劣化もあまり感じない。
輝度も 250nit あれば室内なら問題ないし、数値的にもひと昔前の標準的な品質だ。
高発色ではないが及第点の性能を持ち、十分きれいに見えるモニター
ヒンジは180度、平らになるまで開く
ミーティングなどで活用しやすい
モニターの上部にはHD画質(約92万画素)のフェイスカメラと2つのマイクが付いている。
ただ、顔認証や指紋認証のようなセキュリティ機能は存在しない。
コストダウンのため、省けるものは出来るだけ省いているようだ。
サウンドにはフランス
多方向から聞こえるように感じるサラウンド技術に優れた、映画やゲームの没入感が重視されたイコライザーで、最近急に採用機が増えている。
※最近のノートPCは高級機に Dolby Atmos、廉価機に Nahimic を使用することが多く、Sound Blaster はあまり見かけなくなっている。
音質はこのソフトの設定でかなり変わる。
元のスピーカーがノートパソコンらしい軽い音のためか、私的には標準のままだと低音が弱く、カチャカチャした音の印象を受けた。
しかし「音声の明瞭度」や「高音強調」の設定を下げれば軽い印象は薄まる。
低音が響く方が良い人は「バスブースト」を上げつつ、イコライザーの詳細設定で低音を強くしてみよう。
適当な調整でもそうヘンな音にはならないので、好みの音を探すことができるはずだ。
キーボード
15.6インチのノートPCであるため、キーボードの広さ、大きさ、キーの間隔などは十分。
テンキーも備わっており、データ入力がしやすい。
キーの反発はかなり強めで、人によっては硬く感じるかもしれないが、そのぶん打鍵感がしっかりしていて、キーストローク(深さ)も大きい。
違和感や窮屈さを感じることのない、軽快なタイピングができた。
全体的にキーが大きいだけに、カーソルキーの小ささは気になったが、NumLock が OFF ならテンキーをカーソルキーの代わりにできる。
キーボードバックライトは備わっていないが、必須ではないだろう。
やはり15型はキーボードも余裕がある
電源ボタンは左上にある
事務に使うならテンキーは欲しい。カーソルキーが妙に小さいのもカバーできる
本機には4つの動作モードがあるが、ボタンやキーで切り替えられないのは少し不便に感じた。
動作モードの切り替えは、タスクに常駐している Control Center というソフトウェアを通してのみ行える。
タッチパッドは大きめで使いやすく、指の滑り具合や押し込みの硬さもちょうど良い。
ジェスチャ操作のカスタマイズ(高精度タッチパッド)にも対応しており、操作感は上々だ。
触り心地も含め、特に文句の付けようがない普通のタッチパッドという印象
動作モードはトレイアイコンにあるこのソフトで切り替える
パーツ性能
処理性能(CPU)
2022年モデルの mouse B5-R5 は CPU に「 」を搭載している。
低電力型のノートパソコン用CPUだが、消費電力と発熱の低さの割にはパワーを出せる。
CPUは Intel 社の Core シリーズが定番だが、AMD 社の Ryzen の方が割安だ。
登場は2022年の1月で、「
6つの頭脳で12の作業を行える「6コア12スレッド」のCPUだ。
本機には
の4つの動作モードがあり、それに応じてCPUと冷却ファンの動作が変わる。以下はパフォーマンスモードで性能測定(Cinebench R23)を行った結果と、他のノート用CPUとの比較グラフだ。
パフォーマンスモード
測定中の再現(パフォーマンス)
・マルチコア性能(Cinebench R23)
Core i7-12700H:14900
Core i7-11800H:10800
Core i7-1260P:8650
Core i7-1255U:8300
Core i5-11400H:8250
Ryzen 5 5625U:8050
Core i7-1165G7:5800
Core i5-1235U:5000
Core i5-1135G7:3850
Core i7-1165G7(15W):3600
Core i5-10210U:3100
Core i3-1115G4:2600
Celeron N4100:950
・シングルコア性能(Cinebench R23)
Core i7-12700H:1810
Core i7-1260P:1750
Core i7-1255U:1750
Core i7-11800H:1520
Core i7-1165G7:1500
Core i5-11400H:1480
Ryzen 5 5625U:1400
Core i5-1135G7:1350
Core i5-1235U:1340
Core i7-1165G7:1300(15W)
Core i3-1115G4:1300
Core i5-10210U:1050
Celeron N4100:380
マルチコアのスコアは約8000と、省電力CPUとしては高い数値が出た。
第11世代 Core や、第12世代の Core i5 の省電力型より優れており、後期型 Zen3 のマルチコア性能の高さがわかる。
一方、シングルコア性能は約1400で、低くはないが Core i5 と同等だ。
どちらかと言うと、単体のソフトの動作より、並行作業や画像・動画の編集、Office などマルチコアに最適化されたソフトを得意とする。
ともあれ、Ryzen 5 5625U で Core i5 に勝るとも劣らない性能を得られるのは確かだ。
ただ、パフォーマンスモードで高負荷をかけ続けていると、冷却ファンが高速で回るため、相応の動作音がある。
では、他の3つの動作モード「エンターテイメント」「省電力」「静音」ではどうなのか?
各モードのCPUの動作状況と、その測定結果は以下の通り。
モード | 投入電力 | マルチコア | シングルコア | コア温度 | 高負荷時 動作音 |
パフォーマンス | 27W | 8000 | 1400 | 77℃前後 | 大きめ |
エンターテイメント | 20W | 7250 | 1400 | 67℃前後 | 大きめ |
省電力 | 15W | 6400 | 1400 | 57℃前後 | 大きめ |
静音 | 15W | 6400 | 1400 | 63℃前後 | 静か |
エンターテイメントモード
測定中の再現(エンターテイメント)
省電力 / 静音モード
測定中の再現(省電力 / 静音)
本機の動作モードはそれほど大きく性能は変わらない。
エンターテイメントモードは投入電力が 27W から 20W に下がるが、このぐらいの差だと処理性能もファンの音も大して違わない。
夏に暑い部屋で使うならエンターテイメントの方が良さそう…… というぐらいだろうか。
また、省電力モードにしても意外とファンの騒音は変わらなかった。
むしろ省電力モードはしっかり冷却することを重視しているようで、そのため温度の割には、音はむしろ大きい。
一方、静音モードは省電力モードと処理速度は同じだが、段違いに静かである。
ファンの回転数が抑えられているため冷却力が低く、CPU温度は高くなるが、そもそも低電力で低発熱のCPUが使われているため、大した温度にはならない。
静音モードでも第11世代 Core クラスの性能を発揮でき、バッテリーの消費も抑えられるので、普段は静音で使うのがオススメだ。
重めの処理をするときだけパフォーマンスにするのが良いだろう。
グラフィック性能(GPU)
AMD社の Ryzen のCPU内蔵グラフィック機能(3D描画性能)は、Intel社の Core シリーズと比べると低い。
また、Ryzen 5 5625U は低電力型なので、その点においても期待はできないが……
以下は 3D Mark(Time Spy)で調べた、本機のグラフィック性能だ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
グラフィックスコアは750。
動作モードの影響は受けないようで、パフォーマンスモードでも静音モードでも評価値は変わらなかった。
この性能だと3D描画のあるゲームは厳しい。
「ファイナルファンタジー15」は標準画質でも「動作困難」の評価。(スコア1430)
「モンスターハンターライズ」はメモリ不足なのか、エラーが出て起動しなかった。
古いゲーム、例えば「ドラゴンクエストX」なら高画質で快適の評価となったが、最新のものは厳しいと考えた方が無難だろう。
FF14の標準画質でも厳しい評価
ドラクエXやマインクラフトは何とか…
もちろん、2D(平面)画像のみのゲームやソフトウェアは問題なく動作する。
CPU自体は一般的な処理能力を持つので、3D描画がなければ支障はなく、Youtube 動画の視聴など映像の表示については問題はない。
また、グーグルマップの3D表示ぐらいなら快適に行える。
ただ、基本的には一般用途、及び事務向けなので、ゲームや設計(3D CAD や CG)は考慮されていないと思っておこう。
ストレージ(記録装置)とメモリ
ストレージ(データ記録装置)には256GBの が使用されている。
昨今主流の小型で高速な SSD だ。
カスタマイズで 512GB や 1TB の NVMe SSD に変えてもらうことも可能。
すべて Gen3(第3世代)の製品で、より高速な Gen4 は選べないが、Gen3 でも十分速い。
また、サイズに余裕があるからか、1TB か 2TB の HDD を追加できる。
HDD は速度は遅いが、安価に大容量化できるのでありがたい。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト Crystal Disk Mark の測定結果だ。
標準設定での測定
NVMe SSD 設定の測定
試用機には ADATA 社の こちら の製品が使われていた。
読み込み 2400MB/s、書き込み 1470MB/s という性能は、第3世代(Gen3)の NVMe SSD としては標準的。
ランダムアクセス(3段目)も普通と言ったところで、とりあえず欠点はない。
5年間の長期保証があるので、耐久性には優れていそうだ。
メモリは標準構成だと 8GB しか搭載されていない。
また、1本しか付いていないため、2本のメモリにデータを分散して高速化するデュアルチャネルで動作していない。
安さがウリの機種なので高くするのは本末転倒だが、予算があれば 16GB(8GBx2、+7700円)にした方が、大きな作業をする時でも安定して使えるだろう。
メモリの種類は現在の主流である「
」が使用されており、特に問題はない。なお、「プレミアムモデル」はメモリ 16GB で、512GB の NVMe SSD を搭載している。
総評
PC価格の高騰が続く中、標準的に使えて、できるだけ価格を抑えたモデルと言える。
コストパフォーマンス重視の部品で構成されているが、及第点のモニターを持ち、キーボードなど直接触れる部分に手抜き感はなく、CPUも価格と消費電力の割に能力が高いため、劣っている印象は受けない。
10万円を越えているため低価格機とは言い辛いが、CPU が Core i3 や Celeron の機種と比べれば、動作の機敏さは段違いだ。
HDD を増設できるのも何気に嬉しい。
普段使いできる性能で、事務などにも向いていて、できるだけ安い、そんなスタンダードノートPCが欲しいなら、有力な候補と言えるだろう。
・mouse B5-R5(2022年モデル)
※販売終了。近いモデルは mouse X5-R5 になります
形式:15.6インチ ノートパソコン
CPU:Ryzen 5 5625U(Zen3、6コア)
グラフィックス:CPU内蔵
メモリ:8GB(DDR4-3200、8GBx1)
ストレージ:256GB NVMe SSD(Gen3)
モニター:解像度1920x1080
サウンド:Nahimic 搭載
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5
モバイル性能:約1.62kg、バッテリー公称7.5時間
その他:4段階の動作モード、180度開閉
価格:税込109,800円
※詳細はマウスコンピューター公式サイトをご覧下さい。
※プレミアムモデルはメモリ16GB、SSDが512GBになっています。
※同名の旧モデルがあるのでご注意ください。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2022年11月19日