• 2023年3月にリニューアルされたDellのモニター一体型パソコン
  • 新型CPUを搭載、Ryzen(AMD)搭載機なら10万円を切る製品も
  • モニター一体型なので当然モニター不要で設置しやすい
Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)

こんな人にオススメ!

  • 安いパソコンを探している方
  • 安くても Celeron や旧型 CPU はイヤ、という方
  • 設置しやすい事務向けの据え置きPCが欲しい人
このレビューは実機の貸出を受けて作成しており、リンクにはアフィリエイトが含まれています。
レビューは公正に、忖度なく行っております。

据え置きで安さ重視ならコレ

モニター一体型パソコンは、日本では性能に対して割高なイメージがある。
しかしそれはNECや富士通など、国内家電メーカー製のものが多いからであって、本来は技術的なコストはノートパソコンより低いはずである。

本機は割安な製品も多く開発しているデルのモニター一体型PCであり、搭載するCPUにもよるが、なんと最安なら税込・送料込の約85,980円

今回はそんな最安構成の「Inspiron 24 オールインワン」をレビューしたい。
ちなみに、オールインワンと言うのは海外のモニター一体型PCの呼称である。

Dell Inspiron 24 All-In-One(5415)

今回のレビュー機が搭載するCPUは Ryzen 3 7330U。
Ryzen の中では下位の省電力CPUだが、新型である Ryzen 7000 シリーズのひとつであり、2023年に登場したばかりのものだ。
8万円台のパソコンだと Celeron などの性能の低いCPUか、旧型のものを使っている場合が多いが、本機はそうではない。

メモリ8GB、ストレージ256GBと最低限の構成ではあるが、NVMe SSD や Wi-Fi 6 などを備えている、今どきのマシンである。

Inspiron 24 オールインワン には Intel モデルや、もっと上位の構成のものもあるが、もちろん価格は高くなる。
あえて、このコストパフォーマンス重視の構成でどれだけ動くか、その辺りを中心にレビューしていきたい。

外観

デザインとインターフェース

当たり前だが、モニター一体型のパソコンなので、外観は24型モニターそのままである。
色は白と黒(パールホワイトファブリック と ダークシャドウグレー)で、今回の試用機は黒の方だが、即納モデルは(4月時点で)白しか用意されていない。

外観に大きな特徴はなく、大型スピーカー付きの普通のモニターといった見た目だが、どんな部屋にもマッチするだろう。

Dell Inspiron 24 オールインワン 黒 外観

ぱっと見はモニター以外の何者でもない

Dell Inspiron 24 オールインワン 黒 キーボードとモニター付き外観

付属キーボードとマウスを並べたところ

高さは約41.5cm、幅は約54cmで、狭額縁の24型モニターの一般的なサイズ。
重さは5.5kgほどあり、当然普通のモニターよりは重い。

電源ボタンは右下の下部に付いており、正面からだと場所がわかりにくいが、他のモニターと大差はない。
電源ボタンの横にはPCモードとHDMI(モニター)モードを切り替えるスイッチが付いていて、単なるモニターとしても活用できる。

USBなどの接続端子(インターフェース)は、右下の側面に USB-C が1つ付いているが、他の端子はすべて後部にある。
後部のものは使うときに後ろをのぞき込む必要があるため、正直使いやすいとは言えない。
USBハブは用意しておきたいところだ。

端子は一通りそろっており、側面のUSB-C、3つのUSB、SDカードリーダー、入力用と出力用のHDMI、有線LAN端子などが備わっている。
Display Port端子はない。
無線LANも内蔵しており、Wi-Fi 6 による通信が可能だ。

Dell Inspiron 24 オールインワン(5415、2023年春AMDモデル)背面端子

背面の接続端子。でも裏側なので……
USB-C は1つ側面にある

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)の足

着脱式の足。安定感はバッチリ
モニターアームは取り付けられない

足の形状は白と黒で少し違うようだが、どちらも左右に2つ取り付けるタイプ。
上下の角度調整が可能だが、高さの調整や、左右の角度調整はできない。

モニター / カメラ / サウンド等

モニターはフルHD解像度(1920x1080)の非光沢液晶。
目の疲れや不眠に影響すると言われているブルーライトを軽減する機能が備わっている。

モニターの詳細なスペックはわからないが、見た目の発色は悪くなく、視野角も広い。
リフレッシュレートは一般的な60Hzで、写真や映像の映りなどは問題ない。

ただ個人的には、細かい文字がところどころかすれて見えるのが気になった。
文字が読みづらいといったことはなく、違和感を感じる程度だが……
専門的な話になるが、強めにシャープをかけた感じ、と言えばわかる人にはわかるだろうか?
慣れるまでは、同様に気になる人はいるかもしれない。

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)モニター外観

大きくて高視野角の液晶画面
Dell はモニターの販売でも大手だ

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)モニター下部

一部の小さな文字がかすれている気が
表示の微調整の影響だろうか

カメラは通常、モニター内部に格納されていて、押し込むと飛び出してくる形式になっている。
格納していれば映らないため、プライバシーシャッター(盗撮防止)も兼ねている。
さらにカメラ部は前後に若干(20度)傾くので、最適な角度に調整できる。

WEBカメラは200万画素と高画質で、光量を自動調整してくれるワイドダイナミックレンジ機能を持つ。
マイクは中央下部にあり、デュアルアレイマイク(2方向マイク)ではないようだが、デルのパソコンに備わっているサウンド機能「MaxxAudio」によるノイズキャンセリングを利用できる。

カメラ周りの作りは洗練されており、この辺りはコロナ前からオンライン会議が当たり前で、そのノウハウで先行していたアメリカのメーカーらしい。
ただし、安価構成のモデルには顔認証は備わっていない。(備わっているモデルもある)

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)カメラ部

押すと出てくるカメラ部分
収納式なのがとても良い

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)ノイズキャンセリング

付属ソフトでマイクとスピーカーに個別にノイズキャンセリングをかけられる

サウンドはイスラエルに本社がある Waves Audio 社の「Waves MaxxAudio Pro」のイコライザー(音響調整ソフト)を備えている。
MaxxAudio はデルの他には、富士通のパソコンにも使用されている。

聴いてみた感じでは、音の広がりがとても豊かで、低音もそれほど弱くなく、かなり高音質な印象だ。
これはモニターの下に付いている大型スピーカーの影響も大きいだろう。
これだけの横サイズがあれば音を広げやすいので、サラウンドを効かせやすい。

モニター付属のスピーカーの性能は大したことない場合が多いのだが、本機は例外だ。

ただ、負荷が高い時に音が少し途切れたり、ノイズが入る場合がある。
これはサウンド機能の問題ではなく、CPUの処理能力やメモリが足りないときに発生するものなので、安価機だと仕方ないかもしれない。

Dell Cinema, Waves MaxxAudio Pro
※Dell Cinema というソフトが入っており、サウンドの調整の他にモニターの色設定も行える。

もうひとつ、付属のキーボードとマウスにも触れておきたい。
本機にはワイヤレスのキーボードとマウスが付いており、USBの受信機をモニターに刺して使用する。
マウスは単3乾電池が1本、キーボードは単4乾電池が2本必要になる。(電池は付属されていた)

使い心地は、まあ…… 普通。
キーボードには割としっかりした打鍵感があり、デスクトップ用なので大きさやキーストローク(深さ)も問題ない。
マウスも違和感なく使用できる。

ただ、質感や機能はいかにも「付属品」といった感じなので、いずれは好みや手の大きさに合わせたものを別途購入した方が良いだろう。
特にマウスは、乾電池1本のワイヤレスタイプはすぐ電池が切れるので、有線or充電タイプにするのをお勧めしたい。

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)キーボード

当然だがノートPCのキーボードより余裕があり、カーソルキーやテンキーも大きい

Dell Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)マウスの中

マウスは上部を外して電池を入れる
レシーバー収納部が中にあるのが良い

パーツ性能

処理性能(CPU)

「Inspiron 24 オールインワン」には Intel機AMD機New Intel機(13世代)の各種があって、搭載するCPUやメモリ・ストレージが異なる。

それぞれの価格と構成は Dell のサイトを見て頂くとして、ここではもっとも安い Ryzen 3 7330U 搭載機の性能をレビューしていきたい。

Ryzen 3 7330U は、2023年に入って普及し始めた新型の CPU「Ryzen 7000 シリーズ」のノートパソコン用だ。
(本機はモニター一体型でありノートPCではないが、一体型には普通ノート用CPUが使われる)

下位モデルである Ryzen 3 であり、さらに省電力型(U)の製品であるため、処理性能は高くはないが、価格は安い。

コアの設計は Zen3 であり、最新型の Zen4 でも Zen3+ でもなく、Ryzen 5000 シリーズの改修版と言えるのだが、そのぶん使いやすいのか、搭載製品はかなり多い。
2023年春のノートパソコン用CPUとしては主流の1つである。

Ryzen 3 7330U, CPU-Z

4コア8スレッドの CPU で、TDP(発熱と消費電力の目安)は 15W
ただブーストがあるので、高負荷なときには一時的に性能(投入電力)が引き上げられる。

以下はベンチマーク(性能測定)ソフト Cinebench R23 の結果と、他のノート用CPUとの性能比較グラフだ。

Ryzen 7 7330U, CINEBENCH R23, Inspiron 24 AIO

Ryzen 3 7330U 測定結果

測定中(非ブースト時 開始8~18秒)

・マルチコア性能(Cinebench R23)

Core i7-12700H:12500

Core i7-11800H:10800

Core i7-1360P:9700

Core i5-1340P:9500

Core i7-1260P:8700

Core i5-1240P:8400

Core i5-11400H:8250

Ryzen 5 5625U:8050

Core i7-1165G7:5800

Core i3-1215U:5500

Ryzen 3 7330U:4950

Core i5-1135G7:3850

Core i3-1115G4:2600

Celeron N5100:1400

Celeron N4100:950

・シングルコア性能(Cinebench R23

Core i7-1360P:1820

Core i7-12700H:1810

Core i7-1260P:1735

Core i5-1340P:1720

Core i5-1240P:1680

Core i3-1215U:1550

Core i7-11800H:1520

Core i7-1165G7:1500

Core i5-11400H:1480

Ryzen 5 5625U:1400

Ryzen 3 7330U:1370

Core i5-1135G7:1350

Core i3-1115G4:1300

Celeron N5100:580

Celeron N4100:380

マルチコアのスコアは約4950。 シングルコアのスコアは約1370
これは第11世代Coreの Core i5 よりは高いが、第12世代Coreの Core i3-1215U よりは低い。
ただ、値段も Core i3-1215U より安いので、価格相応と言える。

同じ Inspiron 24 オールインワンで比較すると(2023年4月時点で)、Ryzen 3 7730U 搭載機は 85980円、Core i3-1215U 搭載機は 89980円だ。
マルチコアのスコアは大差ないが、シングルコアのスコアが200近く違うので、ソフトウェアの実行速度にはそこそこ差があるだろう。

ただ一般用途、インターネットや Youtube 動画の閲覧、SNS の利用やブログ書きなどには有意な差はないと思われる。
そして、こうした軽作業なら本機の処理性能でも特に問題はないはずだ。

Ryzen 7 7330U, PCMark10
※PCMark10による作業速度測定。3Dと映像編集以外は問題ない評価。表計算のスコアがやたら高いのは Ryzen の特徴で、エクセルを多用する人は Ryzen 向きだ。

省電力CPUだけあって、動作音はとても静かだった。
性能測定時には1分ほど長めにブーストがかかり、電力は25W~30Wに上昇していたが、コア温度は65℃前後で落ち着いており、冷却ファンの音はわずかしか聞こえなかった。

グラフィック性能(GPU)

本機はビデオカードを搭載しておらず、グラフィック機能はCPU内蔵のものが使われる。
よって描画性能もCPUに左右されるのだが……

Ryzen 3 7330U の内蔵グラフィック性能は一世代前の Ryzen 5000 シリーズと大差ない。
それでなくても昨今の AMD のCPU内蔵グラフィック機能は Intel Core に劣るため、もしゲームなど3D描画性能が関わる用途を考慮しているのであれば、Core i7、最低でも Core i5 搭載型を選んだ方がいい。
(ただし、Core でも省電力型CPUの内蔵グラフィック性能は良いとは言えない)

以下は 3D Mark: Time Spy で調べた Ryzen 3 7330U のグラフィック性能だ。

Ryzen 3 7330U, 3DMark TimeSpy
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。

本機のグラフィックスコアは約580
昨今のCPUとしては、かなり低いと言わざるを得ない。

「エルデンリング」や「龍が如く」などのゲームは低画質でもまともに動作せず、FF15(ファイナルファンタジー15)はもちろん、FF14 のベンチマークも「ノートPC 標準画質」のテストで「設定変更を推奨」の評価(つまり標準画質では無理)だった。

「モンスターハンターライズ」は画質:低なら 30fps 前後(秒間30コマ)で動くので、なんとか遊べるのだが、24インチの大きな画面で低画質だと表示はかなり荒い。

総じて、3D描画のあるゲームやソフトウェアは、よほど負荷の軽いもの以外、期待できないと思って良い。

Ryzen 7 7330U, Inspiron 24 オールインワン(5415), FF14ベンチマーク

少し古いFF14の測定でも厳しい結果
FF15のベンチは軽画質でスコア1100

モンハンライズは低画質なら……
でも低画質だと大画面はむしろ辛い

CPUの処理性能はそれなりにあるので、3D描画がない2Dのゲームなら普通に遊べる。
また、マインクラフトのような軽いゲームなら3Dでも動かすことはできる。
もちろん、写真の表示や動画の視聴、オンライン会議の映像表示などは何も問題はない。

だが、最新のゲームや設計などをこれでやるのは考えない方がいいだろう。

ストレージ(記録装置)とメモリ

ストレージ(データ記録装置)には高速で小型の NVMe SSD が使用されている。
容量は 256GB か 512GB で、本機(Ryzen 3 7330U 搭載モデル)は 256GB
第3世代(Gen3)の NVMe SSD のようで、変更や増設はできない。

試用機で使われていたのは SK hynix の BC711 という省電力型の製品。
ベンチマークソフトで調べた性能は以下の通りだ。

Dell Inspiron 24 オールインワン(5415、2023年春AMDモデル)CrystalDiskMark 標準測定

標準設定での測定

Dell Inspiron 24 オールインワン(5415、2023年春AMDモデル)CrystalDiskMark NVMe SSD測定

NVMe SSD 設定の測定

読み込み速度が 3200~3300MB/s と第3世代 NVMe SSD としては素晴らしく、書き込みも 1600MB/s と悪くないスコアが出ている。
ただしランダムアクセス(バラバラのデータの処理。3段目)は振るわず、普通の(NVMe ではない旧来型の)SSD と大差ない速度しか出ていない。

得手不得手がある印象だが、合わせて考えれば標準といったところか。

メモリ8GBしか搭載されておらず、しかも8GBが1本だけなので、2本のメモリにデータを分散して高速化するデュアルチャネルで動作していない。
よってメモリの速度は他より落ちる。

16GB搭載モデルは8GBが2本なのでデュアルチャネルに対応しているが、Core i7 や Ryzen 7 を積んだ高めのモデルになるので、ウリの安さは乏しくなってしまう。
メモリの種類は主流である DDR4-3200 なので、特に問題はない。

総評

性能については厳しいところも述べたが、Ryzen 3 モデルなら約8万5千円である。
この安さでこの性能ならコストパフォーマンスとしては十分で、同じ費用で Celeron 搭載機や旧型機を買うぐらいなら、こちらの方が断然コスパに勝る。

一体型なので配線がいらず、コンセントに繋げるだけで良いので初心者でも安心だ。
ノートパソコンより画面とキーボードが大きく、当然モニターを別途購入する必要もない。

軽作業は無難にこなせ、Ryzen は表計算を得意とするので事務用にも向いている。
モニター一体型は場所を取らないので、机の上を広く使えるだろう。
サウンドやカメラは高品質と言える。

できるだけ安く買いたい人で、ゲームなどを考えないなら、外資系メーカーの割安な一体型も選択肢に入れてみると良いだろう。

Inspiron 24 オールインワン(2023年春モデル)

Inspiron 24 オールインワン(AMDモデル)

※以下のスペックは Ryzen 3 7330U 選択時のものです
形式:24インチ モニター一体型パソコン
CPU:Ryzen 3 7330U(4コア8スレッド)
グラフィックス:CPU内蔵
メモリ:8GB(DDR4-3200、8GBx1)
ストレージ:NVMe SSD 256GB(Gen3)
モニター:解像度1920x1080
サウンド:モニター一体、Waves MaxxAudio Pro
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5
カメラ:約200万画素、角度・光量調整
その他:白と黒の2色、ブルーライト軽減
価格:税込 85,980円

※詳細は Dell の公式サイト をご覧ください。
※即納モデルは白のみです。
※AMD機の他に、Intel(第12世代 Core)、New Intel(第13世代 Core)搭載機もあります。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。

執筆:2023年4月30日