- 2024年9月に発売された ASUS の13.3インチ セパレート型(分離型)2in1 PC
- Snapdragon X Plus 搭載で Copilot+ PC 認定を受けたクリエイター向けモバイル機
- ARM版Windows タブレットという新タイプの製品
こんな人にオススメ!
- 最新の処理能力とAIを持つ 2in1 が欲しい人
- PC版 Photoshop が動くタブレットが欲しいクリエイター
- 手軽に使える高性能モバイル機が欲しい人
※この製品は現在、ASUS 公式ストアから削除されています。Amazon では購入可能です。
注意:本機は Snapdragon X(ARMプロセッサ)搭載機であるため、使えるソフトウェアに制限があります。 詳しくは ARMプロセッサの長所と欠点 をご覧ください。
(提供元:ASUS JAPAN株式会社)
ARM版Windows タブレット
第2世代の AI CPU である「Snapdragon X」は高性能だが、動くソフトウェアが少ないという欠点がある。
その欠点のない AMD の Ryzen AI 300 シリーズが登場し、Intel の Core Ultra 200V シリーズの発売も迫る中、Snapdragon X の用途を改めて考えてみると……
他の CPU にはない、スリープ中のネット接続機能や待機電力の少なさを活かした、スマホのような使いやすさのある PC が向いていると言える。
そうなると挙がってくるのは、タブレットであり、2in1 だ。
今回取り上げるのは、そんな Snapdragon X Plus を搭載した分離型 2in1 タブレットPC、
「ASUS ProArt PZ13 HT5306」だ。
タブレット本体のみで約850gというのは、Windows タブレットとしては標準的だが、このクラスの性能としては最軽量級。
最新CPUである Snapdragon X Plus なら処理能力も従来のタブレット(分離型2in1)より大幅に高く、Copilot+ PC 認定機のみ使える数々の AI 機能も利用できる。
モニターは ASUS が得意とする有機ELディスプレイ(OLED)で、圧倒的に美しいその画面はクリエイターはもちろん、出先で動画を見るのにも最適だ。
価格は税込みで 249,800円。
ノートPCとしては安い方ではないが、高性能 Windows タブレットとしても、第二世代 AI PC としても最安値クラス。
以下、本機の特性と性能、外観や対応ソフトなどを検証していきたい。
外観と特性
デザインと機能性
ProArt PZ13(HT5306)はクリエイターノートPCとして販売されているが、前述したように13.3インチのタブレットが本体で、キーボードはカバーを兼ねた付属品である。
もちろん画面はタッチパネルで、MPP2.0対応のペン「ASUS Pen 2.0」を使って、高級お絵かきタブレットとして活用することもできる。
本体の裏面に専用カバーを貼り付けることで、自立させることが可能だ。
そして何より素晴らしいのは、これらのカバーとキーボードとペンが付属品なこと。
他の Windows タブレットのような別売りではなく、全部付いている。
ドッキング時のノートPCスタイル
分離時のタブレットスタイル
本体はブラックだが、専用カバーはグレーで、ちょっとミリタリー風。
厚さは9mmと Windows タブレットとしては薄く、キーボードもかなり薄型。
前述したように本体は約850gだが、カバーを付けると実測で1130g、キーボード&カバー込みだと1500gとなり、あまり軽量とは言えなくなってしまう。
カバーであるからには耐久性が必要なので、仕方ないところだろうか……
耐久力は非常に高く、米軍基準(MIL-STD 810H)の数々のテストをクリアした堅牢性に加え、IP52基準の防塵防水性能を備えている。
これは粉塵の侵入を防ぎ、軽い雨に耐えられる程度の保護となる。
野外で写真家がその場で編集を行える、アウトドアを想定した作りになっているようだ。
マグネットで張り付く裏面カバー
アウトドアグッズを意識したデザインか
フル装備だと約1.5kg。その分、本体をガッチリ守る。表面は革っぽい触感
モニターとキーボードは近付けるだけでマグネットでパチッとくっ付き、着脱は簡単。
キーボードは薄い分、指に来る衝撃が強めなのは否めないが、このタイプの付属キーボードとしてはかなり良い。
キーにはしっかりした硬めの感触と、強い反発があり、バックライトも備えている。
また、タッチパッドは上部をスライドすることで動画の早送りや巻き戻し、右端をスライドすることで明るさの調整、左端をスライドすることでボリュームの調整を行える。
これは ASUS の他の機種にも導入されていて、とても便利だったが、クリエイターモデルなら尚更だろう。
この薄さの付属キーボードでバックライトがあるのは驚きだ
端をスライドすればメディアコントロールが出来るパッドはアイデア賞もの
一応タブレットなので、縦持ちにしてX(Twitter)などを見ることもできる。
だが、手持ちのタブレットとして使うには13インチは大きすぎるし、850gでも重すぎる。
また、横向きで持つとベゼル(外枠)の狭さが災いし、持ち手の指が画面に当たって、誤操作がかなり起きやすい。
タブレットとして使うときは、机かひざの上に置いて使用するものだと思おう。
縦持ちでSNSを見ることも出来なくはないが…… さすがに手が疲れる
裏面カバーはスタンドになるので、動画などを見るときは持つ必要はない
Snapdragon X 搭載の Windows タブレット 2in1 としては、6月に発売されたマイクロソフトの「第11世代 Surface Pro」がライバルとなる。
ただ、Snapdragon X Plus 搭載の Surface Pro は画面が普通の液晶で、データ容量も256GBか512GBと少なめ(ASUS PZ13 は 1TB)。
価格も512GBでキーボード込みだと約28.5万円となる。
また、タブレット本体の重量は900gで、Surface Pro の方がちょっと重い。
Surface Pro も作りの良いパソコンだが、やはり後発なぶん ASUS PZ13 の方が全体的なスペックとモニター・価格で優れている。
タブレットとしての使い勝手は、やはり iPad には遠く及ばない。
本機を iPad の代わりとすることは、さすがに無理だ。
だが、iPad ではPC版の Photoshop は動かない。
iPad にも Photoshop アプリはあるが、機能が大幅に簡易化された別物で、仕事や本格作業に使えるようなものではない。
ASUS PZ13 は ARM版Windows だが、Photoshop や Acrobat Reader は ARM に正式対応しているため、PC版を遜色なく動かすことができる。
クリエイターにとってそれがどれだけ重要かは、言うまでもないだろう。
Office、Zoom も ARM版Windows に対応済みなので、表計算や書類作成、WEB会議、写真編集などの用途は、Snapdragon X 搭載機でも不便はない。
もちろんSNSや動画、WEBサイトやブログの閲覧/編集といった一般用途は、非常に快適だ。
9月時点で Adobe の Illustrator はベータテスト中。
出版編集の InDesign や、動画編集の Premiere Pro もARM版の開発が進んでいる。
これらのPC版を2in1で扱えるようになるのが、本機の大きなメリットと言える。
ただ、お絵かきソフトの CLIP STUDIO PAINT は ARM に対応していない。
※これらは Snapdragon X(ARM版Windows)に対応済み。本機には Adobe のソフトウェアの3ヵ月利用権も付属している。
モニター、カメラ、サウンド
モニターは超高発色で非常に美しい OLED(有機ELディスプレイ)が使用されている。
解像度も 2880x1800(3K)と高く、細密で色鮮やか。色の精度も正確だ。
縦横比は流行りの 16:10 で、横長の 16:9 より作業しやすい。
OLED は焼け付きやすい、チラつきやすいといった難点もあり、技術力のないメーカーでは扱いきれないが、ASUS は OLED 搭載ノートで業界 No.1 の販売数を誇っており、それらの欠点を克服する技術を持っている。
専門的な数値を言うと、発色は DCI-P3 基準で100%で、色域のカスタマイズも可能。
コントラスト比は100万:1と液晶の比ではなく、色精度も最高レベルの Delta-E <1。
視野角は全方位85度(170度)だが、非常に高画質のため、横から見ても液晶より綺麗だ。
輝度は最大500nitで、野外でも使える明るさがあり、自動調整機能を備える。
リフレッシュレートは一般的な 60Hz。
なお、色精度を落とすことなくブルーライトを約70%低減できるという。
※高解像度用の映画や画像がとても美しい。明るく、くっきり、鮮やかなモニターだ。
モニターは高耐久で高い透明度を誇るゴリラガラスで覆われている。
グレア(光沢)液晶なので写り込みは生じるが、高発色の OLED は発色が落ちるノングレアパネルは使用しないのが普通だ。
本体がタブレットなので、外向きのアウトカメラと顔を映すインカメラが両方付いており、アウトカメラは1324万画素でオートフォーカス対応。
インカメラは491万画素で顔認証用のIRカメラを内蔵する。
ちなみに iPad のアウトカメラは1200万画素なので、ほぼ同等。
インカメラもWEB会議用としては非常に高い画素数を誇る。
(通常は200万画素あれば十分。それ以上はWEB会議用ソフトが対応していない)
マイクも低ノイズマイクを3カ所に備えており、AIノイズキャンセリングによってクリアな音声を伝えられるとのこと。
さらに本機は Copilot+ PC 認定機であるため、様々なWEB会議用の映像補正機能を使えるのだが、これについてはAI機能の項目で説明したい。
※資料画像より。iPad Pro のようなデュアルカメラではないが、十分な性能だ。
サウンドは Dolby Atmos のイコライザー(音響調整ソフト)を備えているが、SoC である Snapdragon X には Snapdragon Sound と呼ばれるクアルコム独自の音響システムも内蔵されている。
スピーカーは音を強化しつつ調整を行う、独自のスマートアンプを搭載。
聴いてみた感じでは、かなり音響効果に優れ、周辺から深みのある音が聞こえてくるサラウンド効果に秀でていた印象だ。
低音もタブレットの割には響くし、かなり良い音と言っていい。
映画などを視聴するときでも臨場感を得られるだろう。
端子、通信、バッテリー
タブレットなので、一般のノートPCより接続端子は少なめだ。
左側面に USB4(40Gbps)に対応した USB-C 端子が2つと、SDカードリーダーがあるのみ。
USB-C は映像出力(USB-ALT)と充電(USB-PD)に対応しており、付属ACアダプタでの充電も USB-C で行う。
USBが2つあれば困ることは少ないが、もし充電しながら映像出力しつつUSBメモリを指したい、みたいな使い方をするのであれば、USBハブが必要。
なお、付属のペンも USB-C で充電する。
右側面には音量ボタンが付いており、上部左端には電源(スリープ)ボタンがある。
通信は最新の Wi-Fi 7 に対応。 Bluetooth は 5.3。
Wi-Fi 7 は日本では実用が始まったばかりで、まだ対応ルーターは高価だが、Wi-Fi 6 の2倍以上の速度が出る。
普及に伴って安くなるだろうから、対応しているのは嬉しい。
なお、Snapdragon を作っているクアルコム社は元は通信技術のメーカーで、こうした Wi-Fi などの開発の方が本業だ。
バッテリーは70Whと、タブレットとしてはかなりの大容量。
省電力なCPUであることもあり、駆動時間は新基準(JEITA3.0)でアイドル時は約25時間、動画再生時でも約16.5時間を誇る。
外に持ち出しても、バッテリーを気にせず使うことが出来るだろう。
充電も速く、ゼロからフル充電まで約2.2時間で行える。
クアルコムの Wi-Fi 7 の資料
Wi-Fi 7 は通信の安定性も高い
アダプタはすごく小さく軽量
ポケットにも入れられるサイズだ
Copilot+PC と AI機能
本機はマイクロソフトが制定した第二世代 AI PC の認定「Copilot+ PC」を受けており、Windows に備わっている専用機能を使うことができる。
ちなみに認定を受けるには、NPU(CPU内にあるAI専用処理装置)が 40TOPS 以上あり、メモリ16GB以上、ストレージ256GB以上であることが必要だ。
Windows の AI アシスタント機能 Copilot(コパイロット)は、実はネットワークで繋がった外部のサーバーで処理されているので、NPU は関係ない。
だが Copilot 以外にも、カメラ映像に様々な補正を加えられるWEB会議補助機能「Windows スタジオエフェクト」や、ペイントソフトに備わっているイラストから AI 生成画像を生み出す「Cocreator」などを活用できる。
Windows スタジオエフェクトは背景ぼかしや、カメラ位置を修正する自動フレーミング、顔の明るさを調整するポートレートライトなどの基本機能の他に、カンペを読んでいても目線を正面にするテレプロンプター、水彩画やアニメ風にしてシワ・シミなどを補正するクリエイティブフィルターなどがある。
重要なのは、Windows スタジオエフェクトが登場したが故に、最近のノートPCにはメーカー独自のカメラ補正が入っていない場合が多いことで、Copilot+ 未認定の機種だと、以前は当たり前だった背景ぼかしさえも使えない、といったケースがある。
しかし本機ならその心配はなく、すべてのカメラ機能を利用できる。
ちなみに、第一世代の AI PC(初代 Core Ultra や Ryzen 7000/8000 シリーズ)だと、ポートレートライト、テレプロンプター、クリエイティブフィルターは使用できない。
イラストから AI 生成を生み出す Cocreator には創造性という項目があり、どれだけ AI 補正を強めるかを設定できる。 以下はその一例だ。
50%だと若干の修正程度だが、70%になると完全な生成画像となる。
そして生成された絵から、さらにイラスト作成を進めていくことができる。
本機はクリエイター用PCであり、高性能ペンが付属するお絵かきタブレットでもあるので、この機能は面白そうだ。
ASUS 独自の AI 機能としては、Story Cube という AI アルバムが用意されている。
写真を AI で分析し、自動で分類してくれるもので、簡単な画像&動画の編集が可能、スマホやSNSと連携する機能も付いている。
最新のスマホや iPad にある高機能アルバムを、AI を利用して Windows でも利用できるもの、と思えば良いだろう。
本機は写真家をメインターゲットにしているようなので、このアプリもメイン機能として、最初からタスクバーに固定されていた。
まだ AI 機能は、今のパソコンでは有効活用されているとは言い難い。
だが、Photoshop でも生成 AI を利用した画像修正機能が次々と導入されている。
クリエイターならそれらの恩恵を真っ先に受けることができるだろう。
パーツ性能
処理性能(CPU)
ProArt PZ13 HT5306 は、CPUに「Snapdragon X Plus - X1P-42-100」を搭載している。
Qualcomm(クアルコム)が開発したARMプロセッサで、サウンドや通信制御、カメラ制御など、様々な機能をまとめた SoC と呼ばれる製品になる。
Snapdragon は元はスマホ用のCPUだったので、消費電力、特にスリープ中の待機電力が低く、スリープからの復帰が早く、スリープ中でも通信を維持できるのが特徴だ。
Snapdragon X には上位型の Elite と、下位型の Plus があるが、本機に使われている X1P-42 は、その中でも一番下となる。
だが、実は新型で、この9月に登場したばかり。
より安く第2世代 AI PC を提供するために新造されたもので、性能は低めだが、消費電力と発熱もさらに低い。
本機には発熱の低さで選択されていると思われる。
本機には3つのオペレーティングモードがあり、これによってファンの速度(冷却力と騒音)だけでなく、CPUへの投入電力も変化する。
このモードは付属ソフトの MyASUS か ProArt Creator Hub、もしくはFn+F キーで切り替えられる。
一番パワーを出せるのはパフォーマンスモードだが、充電時(付属ACアダプタ接続時)しか使えない。
2in1 タブレットである本機はスタンダードモードか、無音もしくは最小限の音で動作するウィスパーモードで使うのがメインになるだろう。
以下はCPUのベンチマーク(性能測定)ソフト Cinebench 2024 ARM版 の結果だ。
いつも使っている Cinebench R23 は動作はするが、測定結果がおかしくなるので、ARMプロセッサ機では参考にしていない。
このため比較対象が限られているのでご了承いただきたい。
クアルコムは Apple をライバル視しているので、比較グラフには Apple のタブレット用CPUも含めている。
Snapdragon X Plus P42 パフォーマンス
スタンダードでの測定結果
・マルチコア性能(ノート用CPU、ARM込み)
Core i9-13900HX(135W):1485
Ryzen AI 9 HX370(65W):1200
Snapdragon X Elite X1-E78:1070
Ryzen 9 8945HS(75W):950
Ryzen 7 7840HS(80W):945
Core i7-13620H(85W):880
Snapdragon X Plus X1-P64-100:845
Core Ultra 7 155H (45W):670
Apple M3:650
Snapdragon X Plus X1-P42:628 (パフォーマンス)
Apple M2:550
Core i7-1360P(28W):545
Snapdragon X Plus X1-P42:536 (スタンダード)
Snapdragon X Plus X1-P42:508 (ウィスパー)
Apple M1:500
Core Ultra 7 155U (20W):380
・シングルコア性能(ノート用CPU、ARM込み)
Apple M3:135
Apple M2:120
Core i9-13900HX:118
Ryzen AI 9 HX370:115
Apple M1:112
Core i7-13620H:111
Snapdragon X Elite X1-E78-100:108
Snapdragon X Plus X1-P64-100:108
Snapdragon X Plus X1-P42-100:108
Core i7-1360P:106
Core Ultra 7 155H (45W):105
Ryzen 9 8945HS:104
Ryzen 7 7840HS:104
Core Ultra 7 155U (20W):96
パフォーマンスモードの場合、処理能力は(電力45Wの)Core Ultra 155H と大体同じだ。
ただ、本機のカタログには TDP 20Wという表記がある。
電力20Wで同等なら、電力効率(ワットパフォーマンス)はかなり良いと言える。
(ただし、正確な電力は Snapdragon は使用中の電力を表示しないため不明)
スタンダードモード、ウィスパーモードだとマルチコア性能は Core i7-1360P と同じぐらいになるが、より省電力のはずだ。
シングルコア性能はどのモードでも変わらず、そして Snapdragon X Elite とも同じである。
能力としては第一世代 AI PC や第13世代 Core i7 に近いが、それをタブレットで発揮できるところが本機の利点だ。
測定中のコア温度と動作音は、パフォーマンスモードだと78℃、音は45~48dbで、相応の熱と音があった。
しかしスタンダードなら温度は70℃前後まで低下。音も40db以下になり、若干シューと聞こえる程度。
ウィスパーモードは冷却ファンを極力回さないため、低負荷時には完全に無音、高負荷でもごくわずかに音が聞こえる程度になる。
ただ、CPU温度は80℃以上まで上がり、発熱に関しては最も高かった。
できるだけ音を出したくないときに使うモードで、普段はスタンダードにした方が良いだろう。
グラフィック性能(内蔵GPU)
本機のグラフィック機能(GPU)は、Snapdragon X Plus - X1P-42-100 に内蔵されているものが使用される。
Snapdragon X の内蔵グラフィック機能は従来のものより高性能ではあるが、本機が搭載する Snapdragon X Plus - X1P-42 は下位モデルなので、内蔵GPUの性能は抑えられている。
また、ARM版Windows なので、3D描画が必要なソフトウェアは動作しないものが多い。
以下は ARM プロセッサにも対応している測定ソフト 3DMark:Wild Life Extreme の結果と、他のCPUとの比較グラフだ。
・3D Mark: Wild Life Extreme(ARM中心)
GeForce RTX 3050 4GB 40W:54fps
Apple M3:50fps
Ryzen AI 9 HX370(Zen5):42fps
Apple M2 (10core GPU):40fps
Snapdragon X Elite X1-E78-100:39fps
Core Ultra 7 155H(Intel Arc):34fps
Apple M2 (8core GPU):33fps
Apple M1:30fps
Ryzen 7840U(Zen4):27fps
Core i7-1360P(Iris Xe):24fps
Core i7-1260P(Iris Xe):23fps
Snapdragon X Plus X1-P42-100:19fps
3D描画能力は、最近測定したCPU内蔵グラフィック機能の中では、かなり低い結果となった。
そもそも動かせるソフトが少ないので、あまり考慮されていないのかもしれない。
実際に動かしてみた結果だが、ARM版Windows での動作を確認していたゲーム「龍が如く(1)極」でも、低画質でギリギリ遊べるといった状態。
「ストリートファイター6」は最低画質(LOWEST、解像度1280x720)でも厳しかった。
ストリートファイター6は速度が安定せず、ほぼスローになる
龍が如くは7以降でなければARMで動くが、低画質でも25fps程度となる
DirectX12 が使われた新しいソフトウェアは、ARM版Windows ではそもそも動かない。
モンスターハンターライズ、ゴースト オブ ツシマ、アーマードコアといった近年のゲームは動作しない。
少し古い DirectX11 で動く、負荷が軽めのゲームソフトなら、64bit アプリでなければ3D描画があっても動作する。
Final Fantasy 11 のベンチマークはノートPC用 標準画質で「普通」の評価。
3D負荷の低い人気ゲーム デイヴ ザ ダイバー も、本機でプレイ可能だ。
FF14は本機でもプレイ可能なレベルだ
3D描画の負荷が低い、DirectXが11以前のソフトなら動作する…… 場合が多い
他に、3D描画のないテラリアや、ARM対応版があるマインクラフトなどのゲームは動作する。
3Dモデリングソフトや、設計に使う 3D CAD などは無理だと思った方がよく、そもそもARMに対応しているものが少ない。
また、64bit アプリが動かないため、3D描画がなくても動くとは限らない。
例えば一般のソフトでは、宛名書き&住所録のソフトである筆王、筆まめは動かない。
ただ、ARM対応版がある宛名職人は動作する。
ARMに正式対応しているもの以外、動くソフトの判別は難しいので、基本的に Snapdragon X 搭載機はあれこれやろうとしない方が良いだろう。
ストレージ(記録装置)とメモリ
ストレージ(データ記録装置)には容量1TBの NVMe SSD が使用されている。
本体がタブレットであるにも関わらず、eMMC や UFS といった小型機用のストレージではないため、速度は十分だ。
高速な第4世代(Gen4)の製品で、タブレットで 1TB はかなり大容量。
本機に使われていたのは Western Digital の SN740 という、割と定番の製品。
2230 の小型サイズのようだが、品質は高い。
実機でのベンチマーク(性能測定)の結果は以下の通り。
標準設定での測定
NVMe SSD 設定の測定
読み込みは約5250MB/s、書き込みは約4950MB/s。
マザーボードの作りが良いのか、ASUSのノートPCはいつも読み込みが公称値より少し高いのだが、本機も同様だ。
そしてランダムアクセスも優れており、NVMe SSD用の測定(同時処理あり)で読み込み速度が1500MB/sに達する。
どの数値も高く、優秀なストレージ性能と言える。
メモリは LPDDR5X-8448 の省電力高速メモリを 16GB 搭載する。
クリエイター向けタブレットに相応しい質と量で、こちらも十分と言えるだろう。
総評
第2世代 AI PC の Windows タブレットと言う、かなりニッチな製品。
メインターゲットは写真家やイラストレーターだと思われ、PC版 Photoshop をタブレットで使いたい人にとっては、数少ない選択肢だ。
モニターも有機ELなので、プロレベルの確認・編集作業が可能だ。
分離型 2in1 である必要はないが、ビジネスマンにとっても Office を使える小型機として、使いやすいマシンである。
防塵/防滴性能はあるが、Snapdragon X は動くソフトが少ないので、工場や建設現場での使用は、互換性の点からちょっと難しいと思われる。
ただ、PDF で図面を確認する程度なら、Acrobat Reader がARMに正式対応しているため問題はない。 本機の性能なら、そこいらの業務用タブレットより軽快に動くだろう。
正直、安価モデルの Snapdragon X Plus 搭載機としては、割高感はある。
だが、安い製品は重いので、ここまで手軽には使えない。
かなり特殊なモデルであるだけに、これが必要な人にとって代用機のない製品だ。
・ASUS ProArt PZ13 HT5306
※この製品は現在、ASUS 公式ストアから削除されています。Amazon では購入可能です。
形式:13.3インチ 分離型 2in1(タブレット)
CPU:Snapdragon X Plus X1P-42-100
(ARMプロセッサ、8コア、NPU 45TOPS)
グラフィックス:Qualcomm Adreno GPU(CPU内蔵)
メモリ:16GB(LPDDR5X-8448)
ストレージ:1TB NVMe SSD(Gen4)
モニター:OLED(有機EL)、解像度2880x1800、16:10、タッチパネル、DCI-P3 100%(sRGB比 約133%)
カメラ:アウトカメラ1324万画素、インカメラ491万画素
サウンド:Dolby Atmos のイコライザー、Snapdragon Sound
通信:Wi-Fi 7、Bluetooth 5.3
重量:タブレット本体850g、カバー付属時 約1.1kg、カバー+キーボード付属時 約1.5kg
モバイル性能:バッテリー70Wh
(JEITA3.0でアイドル時 26時間、動画再生時 16.9時間)
その他:Copilot+ PC認定、カバー+キーボード+ペン付属、メディアコントロール付きタッチパッド、USB4 x2、独自のAIアルバム、3段階の動作モード、顔認証、色域調整
定価:249,800円(税込)
※詳細は ASUS 公式ページ もご覧下さい。
※Snapdragon X 搭載機は動かせないアプリがあります。
詳しくは ARMプロセッサ(ARM版Windows)の注意点 をご覧ください。
※キーボードカバーとペンは付属しており、別売りではありません。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。