- 2021年5月に登場した、AMD社のCPUとビデオカードで構成されたデスクトップPC
- 上位CPU(Ryzen 7)と新型ビデオカード(Radeon 6700XT)で最新ゲームも快適
- 同じメーカーのCPUとビデオカードの組み合わせで安心感がある
こんな人にオススメ!
- 最新の高性能ゲーミングパソコンを求めている方に
- パーツの相性問題を気にする人に
- GeForce が品薄で手に入らない! やたら高い! と困っている人に
レビューは公正に、忖度なく行っております。
本来、AMDにはAMDを
本機はAMD社のCPU「Ryzen」と、AMD社の新型ビデオカード「Radeon」を搭載した、ゲーミングモデルのデスクトップパソコンだ。
本来、パーツのメーカーはできるだけ同じところでそろえるべきで、その方が相性の問題(動作不良など)が起こりにくくなる。
パーツ本来のパワーも、異なるメーカーの組み合わせだと発揮できない場合がある。
しかし近年、AMD社のビデオカード「Radeon」はNVIDIA社のビデオカード「GeForce」に後れを取っており、製品自体も少ないため、AMDのCPUを搭載していてもビデオカードは GeForce、というのが当たり前になっていた。
だが本当は、この組合わせは変則的なものだ。
この春、ようやくAMD社ビデオカード Radeon の一般価格の新製品「Radeon RX 6700 XT」が発売された。
AMDファン待望の製品であり、やっとCPUとビデオカードの双方をAMDで(高すぎない価格で)統一することが可能になった。
本機「GALLERIA XA7R-67XT」はそのひとつである。
本機のCPUは一世代前(第三世代)であり、ビデオカードも最新ながらミドルクラスだ。
だがそのため、価格は税込194,980円と、20万円以下に抑えられている。
最新CPUと上位ビデオカードだと25万円以上のコースになるため、本機の構成が一般的だろう。
Radeon はやはり、GeForce と比べると不得手な点も見られるのだが……
その辺も含め、本機の特徴を解説していきたい。
ケースと外観
デザインと端子
ドスパラのゲーミングモデル「ガレリア」のデスクトップ用ケースには中型(microATX)と、大型(ATX)の2種類があるが、本機は大型の方だ。
高さ480mm、幅220mm、奥行き440mm。
他社のケース(一般的なミドルタワーサイズ)よりも奥行きは短いが、高さと幅がある。
ゲート型ライトが映えるガレリア本体
通気穴がデザインにもなっている印象
黒を基調とした四角いケースだが、前面上部がナナメに面取りされており、ここに電源ボタンやUSB端子などがナナメ上向きに配置されている。
床置きを想定したデザインだ。
表面に梨地(ザラザラ)加工が施されたツヤ消しブラックだが、端子の周囲はガンメタリック(光沢のある暗いグレー)となっている。
ゲーミングモデルらしく通気を重視した設計で、前部の側面に吸気口があるのに加え、天井にも排気のための網目がある。
このため工業製品のような印象を受けるが、前部に施されたゲート型のLEDライトが無骨さを和らげており、ゲーミングモデルらしさも醸し出している。
側面にのぞき窓があるのもパソコンファンには嬉しい。
しかも本機の(標準構成の)CPUファンにはライトが施されており、起動中は美しく光る。
のぞき窓から見えるクーラーが美しい
USBは干渉しにくい縦向きになっている
端子は前面にUSBが4つと、マイク、イヤホンのジャックが。
背面にはUSBが6つあり、ビデオカードには HDMI 端子が1つと、Display Port 端子が3つ付いている。
前面のUSBは黒く、背面のUSBは青いのだが、転送速度を調べてみたところ、どちらも USB3.0 のようだった。
USB-C はないので、必要なら外付けのUSBハブが必要になる。
有線LAN端子は一般的な1Gb(1000BASE-T)となっていた。
エアフロー(通気性)と内部構造
前部の左右にある穴から吸気を行い、後部と天井から排気を行う構造。
横幅が大きい分、大型(14cm)のケースファンが取り付けられており、内部の通気スペースも十分で、いかにも通気性が良い。
ドスパラの開発部の方によると「従来ケースの300%の吸気力がある」とのこと。
大型の静音ファンを使って風量を保ちつつ、回転数を抑えているため、このクラスのゲーミングモデルとしてはファンの音も小さめだ。
天井からも排気を行うため、上に物を乗せるのは避けた方が良い。
気付きにくいが、底面にも吸気口があるため、カーペットの上に設置する場合は下に板を敷くなどして、吸気を妨げないようにしよう。
側面の吸気口のメッシュ(網)はサイドカバーに張り付いている。
天井のメッシュは左右のカバーと後部のネジを外さないと取れず、掃除したいときは一手間が必要だ。
一方、底面のメッシュはワンタッチで外すことができる。
ホコリを防ぐ側面カバーのメッシュ
底からの吸気は電源用なので重要だ
内部の様子は以下の通り。
ビデオカード「Radeon RX 6700 XT」は横長だが、このケースなら問題なく収まっている。
ビデオカードの真横に前面ファンがあり、ゲーミングモデルらしい、ビデオカードの冷却を優先した配置。
背面だけでなく天井にも排気ファンがあり、これでエアフロー(通気)と自然吸気が強化されているようだ。
NVMe SSD にかぶさるようにビデオカードが装着されており、メインの SSD はビデオカードに隠れて見えない。
これだと NVMe SSD の冷却が心配になるが、このマザーボードのメーカー(ASRock)は他にも同じ構造のマザーボードを市販しているため、これでも問題はないのだろう。
なお、本機のマザーボードはドスパラ特注品のようだ。
リア+トップのW排気はガレリアの特徴
ビデオカードに直接風を当てて冷やす
本機の内部の特徴として、拡張性の高さがある。
ビデオカードの下部に PCI Express x1 スロットが2つ、PCI Express x4 スロットが1つ、さらに M.2 SSD のスロットがある。
ビデオカード直下のスロットは通気のため使わない方が良いとしても、まだ空いた拡張スロットは2本あって、周囲の物理的な干渉も少ない。
※ビデオカードと1つ目のM.2 SSDは最新の PCIe 4.0 だが、空きスロットは全て PCIe 3.0。
また、1つ目のM.2は4レーンだが、2つ目は2レーンで、速度は落ちる。
M.2 key-E は wifi や Bluetooth 用。
昨今は拡張カードを使う機会は減っているが、 それでもスロットがあれば、必要なときに対応ができる。
M.2 SSD を追加できるのも嬉しい。
初心者にはやや難しいが、自力での拡張を考えている方にとっては見逃せない点だろう。
下部のカバーの上にはHDDやSSDのマウンタ(固定器具)があり、カスタマイズで追加した場合はここに取り付けられる。
カバーの中には電源ユニットがあり、電源の熱はケース内には行かないようになっている。
電源ユニットは標準構成で750W、80PLUS GOLDの製品が使われている。
80PLUSは安定性や省エネ性能の基準で、GOLDなら高品質、出力も構成を考えると余裕があり、標準のものでも問題はないだろう。
電源には経年劣化があるため、もし拡張を考えていたり、長く使いたいなら、もう多めに出力のあるものを選ぶと安心だ。
なお、PLATINUM(プラチナ)や TITANIUM(チタン)の製品は、GOLDよりさらに安定性や省エネ性能が高い。
パーツ性能
処理性能(CPU)
本機にはAMD社のCPU「 」が搭載されている。
2019年7月から販売されている第三世代の Ryzen で、Ryzen 7 は一般モデルの上位型。
Intel 社の第10世代 Core のライバルであり、性能はかなり高い。
同時に行える作業の数(マルチスレッド)も、作業ひとつの速度(シングルスレッド)も優秀で、性能不足を感じることは全くないだろう。
なお、2021年夏現在、すでに第四世代の Ryzen も登場しているが、まだ高価であり、ミドルクラスの本機には使用されていない。
8コア/16スレッドのCPUで、8つのコア(頭脳)で、最大16の作業を同時に行うことができる。
クロック数(速度の目安)は3.6GHz、最大4.4GHz。
以下はCPUの性能測定ソフト「CINEBENCH R23」の結果だ。
マルチスレッド(複数同時作業)のスコアは約12200。非常に高速だ。
シングルスレッド(単一作業)も1280を越えており、世代平均の1200を上回る。
デスクトップ用のCPUであるため、ノートパソコン用よりもかなり速い。
ちなみに、ライバルの「Core i7-10700」も同じようなスコアであり、つまりこの世代のIntelとAMDに、ほとんど差はない。
現行のメインストリーム(主力製品)と言え、性能重視なら定番の選択のひとつだ。
グラフィック性能(VGA)
本機は「ビデオカード(VGA)を搭載している。
2021年の春に公開された、やっと出てきたAMDの新型かつ一般価格のビデオカードだ。
ビデオメモリ(VRAM、専用データ置き場)は 12GB で、かなり大容量。
冒頭で述べたように、CPU を AMD の Ryzen にするのであれば、グラフィックも AMD の Radeon にするのが望ましい。
テストや調整は自社製品を中心に行われるし、ドライバ(パーツを動かすためのソフトウェア)の改善も、自社の製品の組み合わせが優先される。
ドライバのアップデートによる新技術の導入も、それが AMD の独自技術であるなら、AMD 同士の組合わせでないと働かない場合がある。
ただ Radeon は、ドライバの完成度が NVIDIA 社の GeForce よりも伝統的に弱い。
また、GeForce 主流の時代が長く続いたため、多くのソフトウェア(特にゲーム)は GeForce に最適化されているという現状もある。
それでも Radeon は GeForce に大きく劣るわけではない。
Radeon の新製品が後れていたのは、最新ゲーム機(PlayStation 5 や Xbox Series S)に採用され、そちらに開発力を向けていたからとも言われており、つまりそれだけの技術力を持つということだ。
ともあれ、ベンチマーク(性能測定)の結果を報告しよう。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
3D Mark:Time Spy のグラフィックスコアは約11800。
総合スコアは約11400だった。
他のビデオカードのグラフィックスコアは、GeForce の GTX1660 だと約5500、RTX3060 は約8600、RTX3060Ti は約11500、RTX3070 だと約13400になる。(全てデスクトップ用)
よって Radeon RX 6700 XT は GeForce RTX 3060Ti と同等で、GeForce RTX 3060 以上、GeForce RTX 3070 以下と言える。
ただ、現在の Radeon には GeForce より、やや劣っている点がある。
「 」だ。
これは光の屈折と反射をリアルに表現する新技術で、対応しているゲームがより美しくなる。
※銀色の宇宙船に周囲の風景が映り込んでいる。こうした処理を行うのがレイトレーシング。
このレイトレーシングのテスト(3D Mark:Port Royal)の結果は以下になる。
Radeon RX 6700 XT の測定スコアは約5800。
一方、GeForce だと RTX3060 で約5100、RTX3060Ti だと約6800、RTX3070 だと約8200ほどになる。
先ほど Radeon RX 6700 XT の性能は GeForce RTX 3060Ti と同等と述べたが、レイトレーシングについては RTX3060Ti より下位になる。
まだレイトレーシングを活用できるゲームは多くなく、対応しているゲームでも、それほど大きな変化はない。
今の時点ではあまり気にする必要はないのだが、今後発売されるゲームは対応してくるであろうことを考えると、やや弱いのは気になるところだ。
また、チラホラとおかしかった点が見られたことも追記しておく。
古いモニターに繋げようとしたら正常に認識してくれなかったり、ベンチマークで一部の表示が崩れたり……
どれも致命的なものではないが、GeForce でこういうことは少なく、元々「得手不得手」がある製品であることは述べておきたい。
人気ゲーム「Apex Legends」を動作させたところ、すべてのグラフィックの設定を最高にした状態で、190fps~250fps で動作。
ほぼ 200fps(秒間200コマ)以上をキープした。平均は 210fps ほど。
画質を少し下げれば240fpsの高性能ゲーミングモニターでのプレイにも耐えられるだろう。
※fps上限を解除したうえでトレーニングステージをプレイして動作速度を確認。
「ファイナルファンタジー15」のベンチマークは高画質の測定で「とても快適」の評価、スコアは11320。
動作環境が似ている「モンスターハンターワールド」も同じレベルで遊べるはずだ。
FF15 ベンチマーク 一般解像度測定
高解像度での測定。比較の参考に
Radeon RX 6700 XT は巷の評価はやや厳しい。
GeForce RTX3070 より下位であること、それなのに現在の価格が RTX3070 と同等であること、さらにレイトレーシングの評価が低いことが要因だ。
しかし十分なグラフィック性能を持つ製品であり、現行のゲームにとってはオーバースペックとさえ言える。
今後数年先のゲームでも快適に遊べるであろう高性能で、細かいことを気にしないのであれば、非常に優秀なビデオカードだ。
データ記録装置(HDD/SSD)とメモリ
データ記録装置は標準で1TBの「 」が搭載されている。
以前は 512GB だったが、5月末からガレリアのXシリーズ(ミドルクラスのゲーミングモデル)は 1TB を標準搭載するようになった。
そして NVMe SSD は、従来の SSD より大幅に高速だ。
ベンチマークソフト(Crystal Disk Mark)の測定結果は以下の通り。
読み込み(1段目の左)は約3400、書き込み(1段目の右)は約2500。
従来のSSD(SATA接続)だと読み込み500前後、書き込み200~500ぐらいで、HDDだとどちらも100~150ぐらいしか出ない。
NVMe SSD がどれだけ速いかわかるだろう。
読み込み3400、書き込み2500と言うのは、NVMe SSDとしても優秀だ。
3段目のランダムアクセス(データをバラバラに処理する速さ。こちらの方がより実行速度に影響する)も読み書き共に約600で、良い数値が出ている。
Windows の起動は非常に速く、ゲームプレイにおいてもデータを読み込む場面で、最小限の待ち時間で済むだろう。
ただ、本機の(1つ目の)M.2 スロットは、最新の PCI Express 4.0(PCIe Gen4、第4世代)に対応しているが、標準の NVMe SSD は PCI Express 3.0(第三世代)の製品なので、若干もったいない。
少し高くなるが、カスタマイズで最新のもの(Gen4)対応品に変えられるので、余裕があるならそちらをオススメしたい。
さらに高速化するはずだ。
また、最近のゲームはアップデートでデータ量がどんどん膨らんでいくので、できれば1TB以上のHDDかSSDも追加したいところだろう。
メモリは標準で16GBと、十分な量がある。
多いほど長時間の使用や、負荷のかかる作業を行うときでも安定するので、あればあるほど良いのだが、16GBあればそうそう困ることはないだろう。
メモリの種類も 高速なもので、ゲーム用途でも十分だ。
8GBのメモリが2つ搭載されており、データを分散して高速化する「デュアルチャネル」で動作している。
総評
Ryzen が好調になる一方で、相変わらずパッとしなかった Radeon に、ようやく出てきた普及モデルの新製品。
もはや「Ryzen + GeForce」でも違和感はなくなっているが、やはり同じ AMD 社の製品で固められるのは安心感がある。
一部の機能(レイトレーシング)が弱いなど、細かい欠点はあるものの、十分に高速な Radeon は、ゲーミングモデルの有力な選択肢と言える。
特に GeForce がマイニング(仮想通貨生成作業)に使用されるようになって以後、深刻な品薄となっており、そこに世界的な半導体不足が重なって、価格もどんどん高騰している。
そこに現れた新型で高すぎない Radeon は、ビデオカード不足を救う一手段になってくれるかもしれない。
本機の構成は現状、比較的手に入りやすく、パーツの相性も良い、ややハイクラスのゲーミングモデルとして、新たな定番と言っても良いだろう。
ケース:デスクトップ(ミドルタワー)
CPU:Ryzen 7 3700X
グラフィックス:Radeon RX 6700 XT 12GB
メモリ:16GB(DDR4-3200)
ストレージ:1TB NVMe SSD
価格:税込194,980円
※詳細はドスパラ公式サイトをご覧下さい。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2021年6月29日