※このページは2018年末のイベントのレポートです。
最新の2019年末のレポートは こちら をご覧下さい。
2018年11月の末日、「楽天クリムゾンハウス」にて「PC・デジタルフェア 2018」が開催されました。
これは毎年開催されているリンクシェア主催のイベントで、大手パソコンメーカーの広報が一堂に会し、来場者に製品や会社のアピールを行っているものです。
そこで今回、各社の製品の特徴や、開発方針、今期の傾向などをうかがってきました。
お話を聞けたのは、「富士通」、「東芝」、「VAIO」、「マウスコンピューター」、「パソコン工房」、「HP」、「Dell」、「ASUS」、「マイクロソフト」の各社様。
それぞれがどんなコンセプトで製品を開発しているのか、それを知る参考にして頂ければと思います。
なお、このページは一般向け・ビジネス向けのパソコンについてのお話をまとめたものです。
ゲーミングモデル(ゲーム用のPC)についてのお話は こちらのページ に記載しています。
※楽天クリムゾンハウスで開催されたイベントの一角。
東芝(Dynabook)
誰もが知る日本の電機メーカーだが、2018 年は破綻の危機で世間を騒がせた「東芝」。
その東芝のパソコン部門(東芝クライアントソリューション)は2018年10月、シャープに買収され、その傘下となった。
シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)に買収されているので、ホンハイから見ると孫会社になる。
社名は2019年1月より「Dynabook 株式会社」に変わっている。
東芝PCのネット通販事業は「東芝ダイレクト」と呼ばれ、買収や社名の変更でどうなるのか注目されていたが、今のところ「東芝ダイレクト」のままで販売を継続している。
会場でもこの件について聞いてみたが、今のところ体制が変わる様子はないとのことだった。
とは言え、お話を聞いたのは買収された直後なので、今後はどうなるかわからないし、担当の方も不安がっていたが・・・
※2019年4月、「東芝ダイレクト」も「Dynabook Direct」に変更されました。
そんな東芝のパソコン(ダイナブック)は、2015 年まで17インチの大型ノートなども扱っていたが、2016 年からは小型の BtoB(企業向け)ノートパソコンに注力するようになり、モデルが刷新された。
現在は軽量で扱いやすいビジネスモデルが中心で、15.6 型、次いで 13.3 型が売れ筋だという。
個人向けのパソコンもビジネス用途を考えた製品で、やはり中心となっているのは軽量薄型モデル。
東芝は「ウルトラブック」(軽量薄型ノートPC)を最初に製品化したメーカーであり、この分野の先駆けだ。
また、他社のものより高輝度・高発色の、質の高いディスプレイを備えているものが多い。
一時期、東芝は Apple の Mac をライバル視したような高解像度ノートを作っていたが、そのフィードバックを全製品に適用したような印象がある。
価格は高めだが、質も見た目も高級品といった感がある。
東芝ダイレクトの2018年春モデル。Webモデルなので量販店で売られているものとは異なる。
見た目はシックだが、Core i7 と 256GB SSD、高輝度・高発色のフルHD液晶と指紋認証を持つ、東芝らしいハイスペックノート。
2018年の新製品は、ビジネスモデルはもちろん、個人向けでもほとんどに指紋認証を装備。
モデルによっては顔認証との「ダブル認証」になっており、セキュリティを重視しているのが伺える。
また販売担当の方によると、「中古で売りやすい」のが長所になっているそうだ。
東芝のパソコンは耐久性や安定性が高く、長く使えてネームバリューもあるため、高く売れる傾向にあるという。
また5年間の無料保証と、回数制限のない「遠隔支援サービス」があることも好評だという。
遠隔支援サービスはネットを通して、質問している人のパソコンに直接案内を表示し、トラブルを解消に導くものだ。
例えば「ここを押して下さい」という丸印が画面に出てきたりする。
パソコンに詳しくない人は電話で説明を聞いても、理解できないことが多い。
使われている用語がわからない、状況を正確に伝えられないと言ったことが多く、電話だけのサポートには限界があるが、画面を共有し、画面上でも案内をすれば、初心者でも対応できる。
こうしたサービスにより、特に高齢者に東芝を愛用する人が多いようだ。
(なお、似たサービスは NEC や富士通も実施している)
最近の東芝はモニターを外してタブレットとしても活用できる「2in1」にも力を入れている。
これは Core i7 と 256GB SSD を搭載する、2in1 としては最高クラスの性能。そのぶん、お値段はお高いのだが・・・。
付属キーボードにはマット加工が施してあり、手触りが良い。
懸念があるのは、メーカー自体の今後。
シャープ(ホンハイ)の買収により、やや不透明感がある。
そもそも買収前の段階で、東芝本社の業績不振のあおりを受け、PC部門は縮小が続いていた。
しかしサポートを大きなウリのひとつにしているため、体制の変化で旧モデルのサポートがなくなる、みたいなことはないだろう。
今後どうなるのか注目のメーカーだ。
富士通
日本のコンピューター機器メーカーの大手であり老舗。
電子機器の売上げでは「NEC」や「東芝」「パナソニック」より上位にあることが多く、国内ではトップクラス、世界的にも上位のメーカーだ。
正確には、富士通のパソコン部門(富士通クライアントコンピューティング)は 2018 年に中国の「レノボ」の傘下になっているのだが、日本で開発・製造されたパソコンを販売するメーカーであり、そのことを富士通自身もウリとしている。
(なお、ライバルの NEC も現在はレノボ傘下となっている)
そんな富士通の特徴のひとつは、ユーザーの年齢層が高く、高齢者をターゲットにしていること。
50代以上を想定した丁寧でわかりやすいサポートと、大人向けの落ち着いたデザインや色使いを備えている。
ただ、2018年の夏ごろから、もっと若い年齢層も対象にしていこうという方針になったそうだ。
まだ「若者向け」と言えるほどではないが、メインの50~60代よりも下、30~40代にもアピールしていこうと、ノートPCの天板にカラフルなものを用意するなど、デザインやカラーのバリエーションを増やしているという。
富士通は会場で写真を撮り忘れるという失態を犯してしまいました・・・
仕方がないので、頂いたパンフレットの写真を載せておきます。
赤・白・黒のカラーバリエーションが用意されている超軽量ノートPC。片手でスッと持てるほど軽い。
富士通はパソコンの軽量化で NEC と競っていて、毎年のように「世界最軽量」をうたう製品を発売している。
今回は 698g という超軽量の 13.3 型ノートパソコンを展示しており、実際に持ってみたが、思わず笑ってしまうほど軽かった。
軽量薄型ノートは世代を問わず人気で、今後もこの分野は NEC と切磋琢磨していくのだろう。
富士通が NEC と競っているもうひとつの製品は、テレビ視聴が可能なモデル。
日本の地デジ放送に対応した「テレビチューナー」を内蔵するパソコンは、当然ながら外資系は用意しておらず、東芝も作らなくなったため、富士通か NEC の二択となっている。
一般のデスクトップパソコンにテレビチューナーを増設してもテレビは見れるのだが、一般のモニターでは綺麗とは言えない画質になってしまう。
専用に作られたパソコンは視聴に対応したモニターや音響、ソフトウェアを備えているため、テレビ兼用で考えるなら、やはり専用モデルが欲しい。
富士通の最新(2018年)のテレビ対応パソコンは一般モデルと 4K モニターモデルがあり、高速起動のための Optane メモリー(3D XPoint SSD、新型のSSD)と、パイオニアの高級スピーカーを備えているとのこと。
また、昨年までは厚みがあったのだが、2018 年のモデルでかなり薄型化したという。
新技術を投入しているぶん価格が高く、それほど売れていないとのことだが、それでも販売価格はギリギリまで下げているとのことで、粗利はほとんど取れていないという。
これもパンフレットの写真です・・・ 富士通の27型テレビパソコン FH シリーズ。 もちろんリモコン付き。
6コアの Core i7 と 4K 画面、パイオニアの高級スピーカー、起動用 Optane SSD と録画に使える 3TB HDD を持つ。
これでも Web 購入なら20万円いかない。 ここまでの高級品ではない、やや小型のテレビパソコンもあります。
他にも富士通は防水タブレットなど、ユニークな製品を販売している。
富士通というとオーソドックスな企業向けのパソコンをイメージする人が多いと思うが、個人向けでは割と変わったパソコンを作るメーカーでもある。
(むしろ数年前まで、ヘンなパソコンを作るメーカーの印象が強かった。最近はネタじみた製品は減っているが、2018年の春に小学生向けのノートPCを作って話題になった)
個人向けのパソコンは国内メーカーらしい、対象年齢が高めの初心者向け製品が多いが、ノートからデスクトップ、個人向けからビジネス向けまで幅広く扱っている。
自分の用途にマッチした製品なら、長く使っていけるだろう。
VAIO
ソニーの「VAIO」(バイオ)は、かつて日本のメジャーなパソコンブランドだった。
しかし高級品として作っていたため価格が高く、コストパフォーマンスに優れる外資系や新興メーカーの製品が普及すると苦戦。
耐久性の評価が低く、OS(Windows)を独自に改修していたため安定性にも不安があって、2014年にソニーから別の会社に譲渡されてしまった。
現在も商標はソニーが持っているが、運営は「VAIO 株式会社」が行っている。
そんな VAIO は移管後に BtoB(企業向け)のビジネス用ノートパソコンとして再出発した。
しばらくは低迷していたが、地道な活動と「ソニー」「バイオ」のブランド力で販路を拡大。
そして2018年、量販店での個人向けモデルの販売再開に漕ぎ着けている。
今でもメインは法人向けで、ビジネス用途を中心としたノートPCだが、かつてのイメージの払拭のためか、耐久性とセキュリティ、安定性を重視しているという。
例えば、新モデルは 90cm の落下試験、150kg の加圧試験を実施しており、これは国内最高クラスの強度だという。
またモデルによってはキーボード防水を備えていて、もし水をこぼしても壊れないようになっている。
(ただしそのままずっと使える訳ではなく、電源を切って排水後、検査に出すことを推奨)。
新生 VAIO。 高級感のある色使いとデザイン。 薄さも自慢。
防水キーボードなのでお茶やコーヒーを「だばぁ」しても、とりあえず大丈夫(要点検)。 ちなみにノートPCの故障原因の1位は飲み物をこぼすこと。
ビジネス向けだが一応 VAIO なので、ソニーのテレビ録画ストレージ「nasne」(ナスネ)と簡単に連携することができ、それがあればテレビも見られる。
明言は避けていたが、「P社さん」(パナでソニックでレッツでノートなところ)をライバル視しているようで、先の落下試験や加圧試験も、P社の試験強度の一回り上となっている。
またキーボード防水を備える製品があるのも、2018年の段階ではソニーとP社のみだ。
つまり「最高のビジネスノート」と言われるP社のアレより、新 VAIO は上である、というアピールを行っている。
以前のように OS に独自に手を入れていて、Windows のアップデートで困るということもないという。
ただ、デザインはP社のものとは異なっていて、かつての VAIO らしいスマートなもの。
また薄さにもこだわっており、「アレは厚めだが、うちはその半分」と述べられていた。
これは見た時に笑った。 モニターの側面に USB-Type C があり、キーボードの前部にも USB 3.0 があるが、そんなノートPCに古いディスプレイを接続する D-Sub 15ピンの端子がある。
今どきデスクトップパソコンでもオミットされているこの端子を最新ノートで備える VAIO。 これが日本のビジネスシーンということか。
今のところは40~50才以上の「働き盛りの人」(要するに高年齢)のユーザーが多く、そのため安価なモデルより 20~30 万円台の高級モデルの方がよく売れているという。
買われる理由も「ソニーだから」「日本製だから」というものが多いようだが、量販店での販売も始まり、そろそろ幅広いユーザーの獲得を目指したいようだ。
国産ビジネスノートを求めている人は、再び VAIO が選択肢になってくるかもしれない。
マウスコンピューター
「富士通」や「東芝」のような大手家電会社ではない、秋葉原を本拠地とするパソコン専門メーカー。
右肩上がりの成長を続けている、日本のPCメーカーの中では一番の成長株で、現在は長野県に大工場を持ち、そこで国産のパソコンやモニターの製造を行っている。
ゲーミングモデル(ゲーム用のPC)でも有名なところだが、ゲーミングPCについては別途お話を聞いているので こちらのページ を見て頂きたい。
一般モデルもノートパソコンからデスクトップ、安価なパソコンからクリエイター向けまで、幅広く扱っている。
どちらかと言うと、一般向けのデスクトップPCはコストパフォーマンス(安さ、費用対性能)を重視しているようだ。
BTO(ユーザーによるパーツ選択。カスタマイズ)の幅が広く、パーツに対する相応の知識があれば、デスクトップなら好みにあった構成で購入することができる。
マウスの一般向けデスクトップPC。 Core i7-8700 にビデオカードを備える万能モデルで、ゲームも含めた一通りのことを行える。
マウスは BTO ができるメーカーなので、スリムなタイプより、拡張性が高くて選べるパーツが多くなる、スタンダードなサイズの方が売れているようだ。
ノートパソコンも NEC や東芝などの電機メーカーのものよりコストパフォーマンスに勝る。
そのぶん、特殊素材を使った軽量化や耐久性、限界までの薄さはないが、処理性能の高い製品を安く手に入れることができる。
また、今期は製品のバリエーションを増やしているとのことで、高性能 CPU を搭載する製品や、高画質な 4K モニターを持つもの、光学ドライブ(DVD等)があるもの、17インチの大型モデル、ビデオカード搭載型や顔認証を備えるなど、個別の特徴を持ったものが用意されている。
ノートパソコンはデザインにも気を配っているそうだ。
クリエイター向けのパソコンにも「DAIV」というブランド名を付け、力を入れているようだが、どちらかと言うとガチガチの作業用パソコンではなく、プロからアマチュアまで幅広いクリエイターを対象にしているとのこと。
そのためクリエイター向けの製品としては、そこまでハイスペックではない、中間価格のモデルも取りそろえている。
マウスコンピューターのクリエイターモデル「DAIV」のノートPC。 画像/映像クリエイター向けで、4Kの高発色モニターと多彩な接続端子を備えている。
他にもノートでありながらデスクトップ用 CPU を持つ処理能力を重視した製品など、多くのモデルが。もちろんデスクトップもある。
以前はゲーミングPCが主力だったが、芸能人を使ったテレビCMで知名度が上がったため、現在は一般モデルの方がよく売れているという。
好調な業績により、サポートや製品管理の体制も年々強化されているようだ。
初心者向けで高価な家電メーカーのパソコンより、余計な機能がないぶん安い専門メーカーのパソコンを求めていて、かつ国内メーカーの方が良いなら、最有力と言えるだろう。
パソコン工房
全国に店舗を持つ、日本のパソコン専門メーカー。
販売の中心はネット通販だが、サポートやアップグレードが必要な時に店舗に持ち込んで見てもらえるのをウリのひとつにしている。
実はマウスコンピューターに買収されており、その子会社であるのだが、マウスとは別に運営されているようだ。
パソコン工房の特徴は豊富な製品を取りそろえていることで、新しいモデルをどんどん開発し、少量作って売る、というのを繰り返している。
そのためお目当てのモデルが品切れになっていることも多いが、ラインナップが豊富で、新技術を取り込んだ製品の登場も早い。
「初心者から上級者まで」をコンセプトとしており、豊富な BTO(ユーザーによるパーツ選択。カスタマイズ)と店舗サポート、国内組立であることがアピール点とのことだ。
(なお、製造はマウスコンピューターと同じ長野県の飯山工場で行っている)
パソコン工房は特定の用途に特化した「専門パソコン」に力を入れている。
クリエイター向けのイラスト制作用パソコンや、音楽制作用パソコン、株取引用パソコンなどで、それぞれプロやユーザーからの意見を聞きながら開発を行っているという。
作業に使用されるソフトウェアの会社と提携することもあるそうだ。
業務用のワークステーション(高性能PC)も扱っており、ノートパソコンのワークステーションも展示されていた。
「モバイルワークステーション」を称する高性能ノート。 業務用ビデオカードの Quadro を備え、他のパーツも最新高性能なものを並べたパソコン工房らしい製品。
そして速攻で売り切れてたのもパソコン工房らしい・・・。
株取引用のパソコンは「パソコン工房」の売れ筋モデルのひとつで、カブドットコムやマネックス証券の取引に対応したトレーディング用のソフトウェアを同梱。
4画面や6画面のマルチモニターに対応し、安定性を重視した構成になっているという。
60代以上の、定年して「株でもやってみようか」と思っている方の購入が多いとのことで、そのため店舗ネットワークを活用し、設置から運用開始までサポートしているという。
ゲーミングモデルにも力を入れているが、それについては こちらのページ で解説している。
2018年は複数の「eスポーツ」チームと提携を行っていた。
見る者を圧倒するパソコン工房のトレーディングPC。 どこかの司令部ではない。
これは4画面構成だが、1画面や2画面の他に、6画面構成、8画面構成もある。
パソコン自体はオーソドックスな構成のものが多いが、そのぶん安い。
しれっと最新パーツを選べたりすることも多い。
私的には地味だが着実に成長している、真面目なメーカーという印象がある。
専用モデルが欲しい人や、パソコンを BTO(パーツ選択)で買う場合は、チェックしておきたいメーカーのひとつだ。
HP(ヒューレットパッカード)
世界でもトップクラスのシェアを持つコンピューター機器メーカー。 個人向けのノートパソコンから研究所で使われるスーパーコンピューターまで幅広く手がけている。
2018 年の時点で世界トップのシェアを持つのは「レノボ」だが、これは巨大市場である中国をほぼ独占しているからで、他の多くの国では HP の方が優勢だ。
法人向けのイメージが強い人も多いと思うが、個人向けのパソコンにも力を入れている。
日本では法人向けが、アジアでは個人向けのパソコンがよく売れているとのこと。
HP の個人向けパソコンはノートが中心で、特にデザインが重視されている。
高級感のある製品が多く、素材にもこだわっていて、個性的なものを作っていきたいと考えているそうだ。
技術力も高く、企業向けのサーバーコンピューターやスーパーコンピューターの開発で得た技術を個人向けの PC 開発にもフィードバックしていて、他では扱えないような新技術を先取りしていることも多い。
また、電源などの一部のパーツを自社で作れる開発力があり、固有の構造を持つパソコンも作っている。
HP の一般向けノートPC。 シックな色使いで、スピーカー部分の六角形の模様が特徴。
画面の外枠が狭い「狭小ベゼル」(スリムベゼル)により、一回りコンパクトなサイズになっている。
もちろん薄くて、軽い。
今期の HP は特にデザインに力を入れているそうだ。
3年ほど前から Apple をライバル視したような、おしゃれなノートパソコンを作っていて、「パソコンを時計のような嗜好品として考える」「ラグジュアリー(贅沢品)としてのPC」をテーマにしている。
この方針はユーザーにも好評なようで、個人向けパソコンの売上げはそれ以後、顕著に伸びているという。
昨今は法人向けのパソコンもデザインを考慮しているとのこと。
ビジネスや法人向けのモデルについては、画質やスピーカーを良くしているのも特徴だ。
日本メーカーのビジネスモデルはスピーカーなどは軽視している場合が多いが、Web 会議(テレビ電話による会議)が一般的なアメリカでは、スピーカーが悪いと相手の声を聞き取り辛くなってしまう。
この辺はいかにも外資系の HP らしい。
モニター一体型のPC。 HP はこのタイプのパソコンも割とラインナップしている。
日本の家電メーカーの一体型PCよりコストパフォーマンスの良いものが多いが、日本のテレビ放送に対応しているものはない。
となりにプリンターがあるが、HPはプリンターなどの周辺機器でも大手。
外資系とは言え、日本で販売されている HP のパソコンは東京日野市の工場で生産しており、「東京生産」をアピールしている。
家電量販店との提携・販売も多く、価格も日本の電機メーカー品より安めで、デスクトップなら BTO(ユーザーによるパーツ選択、カスタマイズ)も可能。
世界的大手なので、パソコンの購入を考えているなら製品をチェックしておきたいメーカーだ。
なお、2017年からゲーミングPCにも注力しているが、それについては こちらのページ をご覧頂きたい。
DELL(デル)
世界規模のシェアを持つアメリカの大手パソコンメーカー。 かつては世界 NO.1 だった。
昨今は「レノボ」と「HP」に抜かれているが、今でも法人向けを中心に大きなシェアを持つ大企業だ。
デルのパソコンはコストパフォーマンス、費用対性能の高さが魅力だ。 要するに「安い」。
また使い勝手を重視しており、「薄い、軽いだけで良いのか? 見た目よりも使い勝手ではないか?」といった考えで製品開発を行っている。
ただ、2018 年の夏ごろからデザインも意識するようになったとのこと。
「デザインセンター」を設置して本格的な研究を行い、他社から移ってきたデザイナーも多く在籍しているらしい。
一応、これまでもデザインを無視していた訳ではなく、キーボードやモニターに見栄えのする素材を使うなどして、高級感を与える製品作りをしていた。
同じ「安さ」をウリにしているレノボと比べると、無骨な製品が多いレノボより、デルの製品の方がスマートな印象だ。
また、最近のノートパソコンで一般化している「狭小ベゼル」(画面の外枠が狭いもの。これにより本体サイズを一回り小さくできる)を、いち早く取り入れたのもデルだ。
デルの一般型ノート。 極限の狭小ベゼルにより、15インチのノートでも旧来の13インチの本体サイズになっている。
その開発にはかなり苦労があったようで、製造できる会社も限られていたというが、今はどこも狭小ベゼルのノートを作っている。 これが企業競争というものか。
新デザインについては、それが反映された製品が出るのは 2019 年からと思われる。
かつてのデルはサポートが不評で、生産を中国で行っているため、以前はサポートセンターも中国にあり、電話しても日本語がまともに通じないことがあった。
しかしその不評を払拭するため、日本(宮崎)にカスタマーセンターを設置、サポート体制を大幅に強化している。
現在のデルは、そこまでサポートに不安のあるメーカーではない。
(ただし有料サポートと標準サポートがあり、標準だとサービスは少ない)
デルは「エイリアンウェア」と呼ばれるゲーミングPCにも力を入れており、個人向けの製品はそちらの方が主力になっている。
これについては別途お話を聞いているので、こちらのページ で確認して欲しい。
ASUS
ASUS(エイスース)はパソコンのパーツ、特にマザーボードの製造元として知られる台湾のメーカーだ。
ただ、あくまでパーツメーカーとして有名であって、パソコン本体のメーカーとしては、少なくとも日本ではあまり知られていない。
しかし2018年の春、東京の赤坂に直営店をオープンし、ネット通販サイトもリニューアル、本格的な PC 販売に乗り出している。
ASUS のパソコンのウリは「一貫性」とのことだ。
パーツメーカーであるため、パソコンは自社のパーツを使って組み立てており、よってパーツの相性の心配が少ない。
また、パーツを安く調達できるためコスト面でも有利になる。
ノートPCは3万円台から用意しているとのことで、コストパフォーマンスもウリのようだ。
デザインにも気を配っているそうで、デザインセンターを設置し、ユーザーから希望のデザインを募集したり、要望をフィードバックしたりしているという。
製品の傾向としては、デスクトップはハイスペックモデル、ノートは薄さや軽さを追求したモデルが多い。
ASUSのモニター一体型PC「Zen AiO」。 ゲーミング系のパーツが主力のためか、なにか全体的にゲーミングっぽい。
この製品には、一体型なのにビデオカードを搭載するモデルが存在する。 さすがマザーとビデオカードのメーカー。
光って尖ってスケルトンな ASUS のゲーミングモデル。 めっちゃゲーミングらしい外観。
最近はゲーミングPCでも装飾を控えめにしているものが多いが、これはそんなのどこ吹く風、「ゲーミングPCってのはこうなんだよ!」といった風貌。
ASUS は以前から Windows や Android のタブレットを販売していて、日本の量販店にも並べられていた。
だが、タブレットの新製品開発は(2018年末の時点では)行っていないという。
理由はわからないが、パーツ以外ではパソコン本体とスマートフォンに開発力を集中するようだ。
ASUS の弱点はサポートで、日本での PC 販売をスタートしたばかりなので、国内のサポート拠点は前述した東京赤坂の直営店しかない。
コールセンターは中国の大連にあり、日本語での相談には不安がある。
ただ、社員には必ず日本語の勉強をさせているため、大きな問題はない・・・ と担当の方は言われていた。
パソコンのパーツ、特に根幹となるマザーボードの世界的定番メーカーのため、製品の信頼性は高いだろう。
ビデオカードの製造メーカーであるため、ゲーミングモデルにも注力しており、どちらかと言うと日本ではそちらが主力になりそうだ。
マイクロソフト
「Windows」や「Office」といった、パソコンを使う上で必須となるソフトウェアを開発しているメーカー。
キーボードを付けるとノートパソコンとして使え、画面を外すとタブレットとして使える、「2in1」と呼ばれるタイプのパソコン「Surface」(サーフェス)を販売している。
使い勝手の良い専用のタッチペンを使うことで、文字通り「ノート」(帳面)として使うことができ、特に学生や若手社会人に人気だ。
これについて、何か学生向けのアピールをしていたのか聞いてみたが、特にそういうことはなかったらしい。
単純に大学生の間で、口コミで広まったという。
ただ、学生に人気が出たことで、現在は学割キャンペーンや、学生向けのマーケティングを行っているという。
大きな利点は Windows や Office との親和性で、エクセルやワードなどの定番ソフトウェアをトラブルなく使うことができる。
もちろん 2in1 なので、軽さや持ち運びやすさ、タブレットにもなる取り回しの良さも人気の理由だ。
本体はタブレットなので、スペック(処理性能)は低めだが、最近はスペックを高めた上位モデル「Surface Book」も販売されている。
ワインレッドのサーフェス。 2in1 の先駆け。 充電コードやペンはマグネットでペタッとくっつくようになっている。
Office を手軽に扱うのに向いている。と言うか、日本では Office 同梱しかない。
Surface は価格が高く、コストパフォーマンス(費用対性能)はお世辞にも良くない。
また、専用の周辺機器も割高だ。
そのため2018年、アメリカで「Office 抜きで 45000 円」という安価な「Surface Go」が発売された時には、日本でも話題になった。
だが、日本の Surface Go は Office 付きで約 65000 円。
これについて聞いてみたが、やはり日本では Office なしの製品を販売する予定はないという。
パソコンと言うよりタブレットであり、Apple の「iPad」をライバルとする製品。
販売数は iPad が圧倒的だが、作業において Windows で使えるのは大きな利点だ。
以上が今回、お話をお聞きできたパソコンメーカーです。
パソコンの購入は、自分が欲しい分野を得意とするメーカーのものを選ぶのが大事。
カタログだけでは解りにくい製品の特徴も、メーカーの傾向や方針を知ることで見えてきます。
各メーカーの特徴をもっと簡潔に、短くまとめたものは こちら をご覧下さい。
ゲーミングPC については別にお話を伺っていて、こちら にまとめています。