2023年10月24日、マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「NEXTGEAR」のメディア向け新製品発表会が実施されました。
ここではその模様をレポートしたいと思うのですが……
すでに内容については各大手メディアで記事が掲載されています。
同じ内容にしても意味がないので、すでに実機レビューをしている視点から見た感想や追記、発表会後に開発担当の方から直接お伺いした内容などを加味した、もう少し突っ込んだレポートをしたいと思います。
開催日:2023年10月24日
※ベルサール東京日本橋にて。左から Linkworld、ASRock、マウスコンピューター、AMD、Uniwill の方。
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新ゲームPCブランド「NEXTGEAR」
マウスコンピューターのゲーミングブランドは「G-Tune」だが、新ブランド「NEXTGEAR」はもっと安価な、コストパフォーマンス重視のブランドとなる。
世界的な半導体不足を皮切りにパソコンの価格は高騰を続けているが、「今後の中心ユーザーとなる若い人に、もっとゲーミングPCを使って貰うため、価格を抑えた製品が必要だ」と考えたとのこと。
このため、NEXTGEAR は30歳以下、10代~20代をメインターゲットにしている。
これに伴い、G-Tune はよりゲーマー向けの、プロフェッショナルブランドとなる。
ゲーミングPCの単価の上がり具合
この8年で約5.5万円上がっている
今後は NEXTGEAR が一般向けを担う
G-Tune も上位モデルとして存続する
NEXTGEAR の大きな特徴は、主に以下のとおり。
- 徹底したユーザー志向。SNS などを活用し、ユーザーアンケートの結果を取り入れながら開発を進める。
- コストパフォーマンスを高めるため AMD の CPU を使用する。
- 同じくコストパフォーマンスを高めるため、EC販売(電子取引。WEB注文)のみとする。
NEXTGEAR のデスクトップモデルは大きな「X」の意匠が施された奇抜なものだが、これも X(Twitter)でのアンケートの結果によるものだったという。
今回、新モデルとなる NEXTGEAR のノートパソコンも発表され、グリーンと言う奇抜な色なのだが、これもアンケート結果により決まったらしい。
マウスの中の人は無難なBになると思っていたらしく、Aになってあわてたとか
ノートの色のアンケートは白や青を抑えて緑が最多。これも「えー」となったらしい
マウスコンピューターは以前から SNS の結果を元に設計を変えたりしており、こうしたアンケートを行うのは今回が初ではない。
ただ、NEXTGEAR はそれをより強めていこうという考えがあるようで、今回も「え? この形なの? 大丈夫?」「え? この色? どうなのそれ?」という意見があったようだが、「ユーザーが選んでいるから」と、社内意見よりアンケート結果を重視する方針としたようだ。
今後もアンケートは行うようなので、興味のある方は 公式X(Twitter) をチェックしておくと良いだろう。
NEXTGEAR は若者向けのようなので、若者の意見が集まりやすい SNS で聞くのはコンセプトに合っているかもしれない。
AMD の CPU については、確かにコストパフォーマンスを重視するなら、Intel の Core より AMD という選択になるだろう。
ただ、ゲームは CPU のシングルスレッド性能が主に影響するが、AMD の Ryzen は、Intel の Core よりシングルスレッドは弱い。
よって他のゲーミングモデルは基本的に Intel Core だ。
ゲーミング性能を高めた Ryzen 7 7800X3D という CPU もあるが、ちょっとお高い。
よって AMD CPU がメインのゲーミングモデルというのは、かなり珍しい。
だが、会場でも「インテルの CPU は使わないのか?」という質問が飛んでいたが、ハッキリと「AMD しか考えていない」という回答があった。
この辺が明確化しているのは、むしろ良いと思う。
なお、一番安いモデルには Ryzen 5 4500 が使われているが、詳しい人だと「そんな中身が旧式(Zen2)のシングルスレッドが弱い CPU でゲームがまともに動くのか?」と思うだろう。
これについては、実機レビューで解説しているので参考にして欲しい。
結論から言うと、大半のゲームの動作はビデオカードに左右されるのでほとんど影響はなく、普段の使用感も画像や映像の表示をビデオカードが補助するので、思ったほど悪くない。
ビデオカードは現状 GeForce が使われており、AMD 社の Radeon ではないが、これについては今後、Radeon モデルも用意するかもしれない、とのこと。
NEXTGEAR は AMD 専用になる模様
G-Tune がどうなるかはまだ未定
ゲーム特化の Ryzen X3D は Core i9 よりゲームで優れる。一般処理は普通
EC販売(電子取引。WEB注文)のみとしているのは、在庫を抱えないためだ。
マウスコンピューターはいわゆる BTO メーカーであり、カスタマイズPCを中心としている。
その利点を生かすべく、EC限定にして在庫をゼロにすることで、そこにかかる余計なコストを省くという。
ただし、ユーザーアンケートの結果によってはこれらの方針も変わる可能性はあるようで、来年度(2024年)の方針としても「ユーザーの意見が第一」を挙げられていた。
NEXTGEAR は装飾性が高いのも魅力で、側面がガラスパネルになっており、LEDファンに照らされた内部がよく見える。
この装飾ファンは赤と青だったが、会場には新たにマゼンダ(赤紫)も展示されていた。
こうした色付きのファンを搭載したモデルはケースファンが6つ搭載されるため、見栄えだけでなく強力な通気も得られる。
だが、騒音はかなり大きくなり、実機を使用した際には、ここが一番気になった。
パソコンは見た目も重要。本機はLEDファンの美しさも存分に楽しめる設計
6つのファンで照らして冷やす!
ただしファンの回転音もその分マシマシ
この点について開発担当の方に聞いてみたのだが、6つのファンを制御できる特殊な BIOS を用意しており、調整はできるようになっているとのこと。
ただ、騒音についてはあまり考慮していなかったようで、初心者でも簡単に対処できる方法は、今の時点では備わっていない。
BIOS を通したファン(動作音)の調整方法については実機レビューの こちら で解説しているので、参考にして欲しい。
もうひとつ実機を使用して気になった、HDDを収納できる3.5インチベイがなかった点について聞いてみたが「もうHDDの時代ではないので、3.5インチベイは無くす方針」とのことだった。
拡張はM.2スロットに NVMe SSD を付ける方向にする、とのことだが、旧PCからストレージを移植したい人もいるだろうし、M.2スロットがそんなに備わっているわけでもないので、ちょっと残念に思ったのも本音だ。
一応、NEXTGEAR のケース自体にはネジ穴がたくさんあって、2.5インチのSSDを張り付けたり、3.5インチのマウンタ(固定器具)を設置できるような作りにはなっている。
さらに言うと、ケース裏側には2.5インチSSD用のマウンタが2つ備わっている。
そこで、こうした拡張用パーツを別売りしたりする予定はないのか、とも聞いてみたが「それを行うと拡張が原因の故障やトラブルもサポートしないといけなくなるので、あえて説明もしていない」とのこと。
どうやら現在のマウスコンピューターは、デスクトップであっても拡張や増設は重視していない方針のようだ。
なお、ストレージの拡張については、実機レビューの こちら で説明している。
行いたい人はこうした記事などを活用し、自力で調べて行う必要がある。
「本機はそんなにM.2スロットが多いわけではない。ASRock さんが来ておられるが、M.2がたくさんある上位マザーボードを使う予定はないのか?」とも聞いてみたが、「Micro ATX(小型サイズ)から始めたかったし、価格が上がるため NEXTGEAR には合わない。それをやるなら G-Tune になる」とのお答えだった。
ケースデザインについては、それを担当した台湾の Linkworld 社の方が、シンプルかつスマートな外観でゲーミングPCのスピード感を表現した、拡張時に手をケガしたりしないよう細部の形にもこだわった、といったことをアピールされていた。
水冷クーラーも無理なく入るし、実際にケースの作りは非常に良い印象。
複雑すぎないシャープで近未来的なデザインと、神は細部に宿るが設計の信条らしい
清楚で美しいホワイト NEXTGEAR
これについてはまだ情報非公開
なお、今回の発表会に合わせて GeForce RTX 4070Ti を搭載する上位モデルも追加されており、これには大きなビデオカードを支えるための支柱が加えられている。
鮮やかに色が変わる ARGB ファンを搭載した白い NEXTGEAR も展示されていたのだが……
これについてはまだ参考展示であり、詳しいことは言及されなかった。
色々聞いてみたのだが、まだ伝えられないとのこと。 単に白いだけではないようだ。
NEXTGEAR 新ノートPC
今回の発表会の大きな目玉は、NEXTGEAR の新型ゲーミングノート「NEXTGEAR J6」の公開だろう。
NEXTGEAR のデスクトップモデルは7月には登場していたが、このノートは本当に最新機だ。
16型のノートPCで、Ryzen 5 7535HS(Zen3)を搭載するモデルと、Ryzen 7 7840HS(Zen4)を搭載するモデルがある。
ビデオカードは GeForce RTX 4050 か 4060。
大きめのモデルだが、重量は約2.3kgで、ビデオカード搭載機としては軽い方だ。
NEXTGEAR のノートがいよいよ登場
2基のファンと、それを取り囲むヒートパイプによる強力な冷却を持つ模様
モニターは最近流行の 16:10 のアスペクト比で、リフレッシュレートは 165Hz。
キーボードの作りは設計を担当した台湾 Uniwill 社の方が、心地よいタッチ感とスマートな外観を持たせるために頑張ったことをアピールされていた。横3桁のテンキーも備わっている。
ゲーミングなので、キーはもちろん光る。言うまでもなく光らせないこともできる。
そして色は、SNS でのユーザー投票で選ばれたグリーン。
正確には浅葱色(新選組の色)のような、青と緑が合わさったような中間色だ。
正直、浅葱色にピンクのマークが付いた天板は、ビビットな配色すぎて「それってどうよ?」と思ったのだが、ユーザー投票の結果なら、これで良いのだろう。
エレガントでタイプ感の良さを重視したキーボード。設計の苦労が語られていた
浅葱色にピンクが派手に感じるのは、私が若くないためなのか……
ちなみに、Uniwill 社の方が「この色すごい大変だった!」と言われていたのが印象的だった。
他のカラーを出すかどうかは、またユーザーアンケートを実施して決めたいとのこと。
価格と構成は以下の通りだ。
- Ryzen 5 7535HS + GeForce 4050
メモリ16GB + ストレージ256GB 約12.5万、メモリ32GB + ストレージ500GB 約14万 - Ryzen 5 7535HS + GeForce 4060
メモリ16GB + ストレージ500GB 約15万円、メモリ32GB + ストレージ1TB 約17万円 - Ryzen 7 7840HS + GeForce 4060
メモリ16GB + ストレージ500GB 約17万円、メモリ32GB + ストレージ1TB 約19万円
コストパフォーマンス重視をうたっているだけあって、確かにリーズナブル。
約15万円のモデルがバランス良くまとまっていて人気になりそうだが、Zen4(最新型)である Ryzen 7 7840HS 搭載機の方が CPU に魅力がある。
個人的に勧めるなら、このどちらかだろうか。
メモリとストレージはカスタマイズが可能で、2本目の NVMe SSD も追加して貰える。
レポートは以上になります。
NEXTGEAR の公式ページは こちら をご覧ください。
AMD や ASRock の方も来られており、製品アピールをしておられましたが、技術発表会ではないので、一般の人へのアピールといった程度のものでした。
要約すると AMD は「うちの製品もゲームで強いよ! マウスが選んでくれたよ!」というお話。
PCパーツメーカーの ASRock は製品の品質と安定性をアピールされていました。
ASRock は定番のマザーボードメーカー
自称「変態」。たまに変態マザーを出す
完全自動作業で人為的ミスをなくした変態的品質管理。検品もAIがやる時代です
改めてになりますが、NEXTGEAR の実機レビュー(Ryzen 5 4500 + GeForce 4060 機)は こちら をご覧ください。
機会があれば、関連機のレビューも引き続き行っていきたいと思います。