- 2021年2月に登場したマウスコンピューターの一般向けノートパソコン
- Core i7 による高い処理性能と、動画編集も可能なグラフィック性能を合わせ持つ
- 黒くて渋い本体。公称11.5時間の長時間バッテリー
こんな人にオススメ!
- 快適に作業できる高い処理能力のノートPCが欲しい人に
- 高性能で高価すぎないノートPCを求めている方に
- 出先で使える長時間駆動のノートが必要な方に
レビューは公正に、忖度なく行っております。
人気ワーキングノートの後継機
マウスコンピューターは以前「m-Book K」というノートパソコンを販売していた。
高い処理速度の上位型CPUと、豊富なメモリ、長時間駆動のバッテリー、グラフィックチップを搭載した、高性能の作業向けノートだ。
コストパフォーマンスに優れ、かなり人気だったとのこと。
今回紹介する「mouse K5」は2021年2月に発売された、その後継モデルである。
先日、マウスの15.6型ノートパソコンとして「mouse B5-i5」をレビューしたが、そちらが軽さと安さを重視した製品だったのに対し、こちらは高い分、高性能で長時間駆動。
書類の作成や一般的な学習、ブログの更新などに使うにはここまでの性能である必要はないが、パソコンは慣れれば色々やってみたくなるもの。
そうした欲求に快適に応えてくれる性能を持つ。
また、グラフィック強化チップ(GeForce MX350)を搭載するため、動画編集ソフトや軽めの CAD(設計ソフト)を扱うこともできる。
もちろん新しい通信規格(Wi-Fi 6、Bluetooth 5)に対応済み。
価格も 109,800 円(税別)と割安だ。
※昨今の半導体価格の高騰により、2021年5月現在、税込131,780円に値上がりしています。
今回、実機の貸し出しを受けさせて頂いたので、その特徴を紹介していきたい。
外観
デザインと側面端子
黒い。とても。いさぎよくブラックである。
天板も底面も真っ黒で、中央にある白いチーズのマークが目立つが、かなりシブい。
表面にはうっすらとブラスト(粒子)加工が施されており、サラサラした触感だ。
漆黒の外観
プロフェッショナルな印象
中も黒一色のデザイン
シンプルだが気品のある見た目
中もキーまで真っ黒で、いかにも「仕事用」「プロ用」というおもむきである。
ここまで黒いとむしろ派手さがあり、少なくともグレーより地味ではない。
15.6インチのモデルであるため、ノートとしてはやや大きめ(横36cm x 縦24cm)だが、厚さは約2.3cmとそれほどでもない。
重さも約2kgで、昨今の標準的な15型ノートのサイズ・重さだ。
モバイルノートほど軽くて薄いわけではないが、十分に持ち運べる重さとサイズである。
右側面には青のUSB(3.0)と USB Type-C(3.1)、カードリーダー、 LAN 端子を備える。
USB-C はデータ転送速度が USB3.0 の2倍で、外付けのHDD/SSDや、DVD/Blu-rayドライブを付けるのに向いている。
ただし、携帯バッテリーでパソコンを充電できる USB PD(Power Delivery)の機能はない。
左側には USB3.0 と 2.0 がひとつずつと、イヤホン、マイクのジャックがある。
映像出力端子である HDMI と Display Port は、背面にひとつずつ用意されている。
横にあった方が着脱はしやすいが、後ろにあった方がコードが見えないのでスッキリする。
これらにサブモニターを付けることで、最大3画面で作業することが可能だ。
モニター / カメラ / サウンド
モニターには非光沢のフルHD液晶(1920x1080)が使われている。
旧モデルの「m-Book K」には高発色・広視野角の IPS 液晶が使われていたが、今回は採用されていない。
クリエイターモデルではないためか、標準的な画質だ。
だが、視野角(綺麗に見える角度。広いと真横から見ても色あせない)は無理に必要な性能ではないし、発色も特に悪くはない。
モニターの明るさはキー(Fn+F8/F9)で簡単に調整できる。
モニターの外枠が狭くなっており、15.6型ノートでありながら、一昔前の14型ノートくらいのサイズに収まっている。
旧製品(m-Book K)と比べても一回り小さくなっているようだ。
画面サイズはそのままに、
旧モデルより縦幅を2cm縮小
2つのマイクで音声を補足
カメラの動作ランプは盗撮対策
モニターの上部には100万画素のフェイスカメラと「デュアルアレイマイク」が付いている。
デュアルアレイマイクは2つのマイクで正面からの音声を正確に捉える機能で、マウスのノートPCの特徴のひとつだ。
また「Sound Blaster CINEMA 6」という音響調整用のソフトウェアが、標準でインストールされている。
スピーカー自体はノートPCらしい軽い音質だが、このソフトウェアでスピーカー/ヘッドホンを個別に調整でき、低音や音声を強めることができる。
マイクの声色を変えられるユニークな機能も用意されている。
Bluetoothを内蔵しているため、アダプタを用意しなくてもワイヤレスイヤホンを利用可能。
顔認証や指紋認証は搭載されていないが、Bluetoothで繋げたスマホが近くにあれば自動でログインできる「GoTrust ID」というソフトウェアがインストールされていた。
キーボード
15.6インチのノートPCであるため、キーボードの広さ、大きさ、キーの間隔などは十分だ。
テンキーも備わっており、キーの配列も標準的。
違和感なくキータイプを行え、数値の入力もしやすい。
キーの深さも1.8mmとノートとしては深めで、適度な反発もあり、しっかりした打鍵感がある。
キーのサイズや間隔はデスクトップ用のキーボードと変わらない
横3列だが、テンキーがあるのは15型ノートPCの利点
カーソルキーは小さいが、15.6インチのノートとしては一般的だ。
タッチパッドは大きめで、キーを光らせるバックライトはないが、無理に必要ではないだろう。
良い意味で標準的な、欠点のないキーボードだ。
パーツ性能
処理性能(CPU)
このモデルの大きな特徴は、Intel社のCPU「
2020年の春に登場した、安心と実績のCPU「Core」シリーズの上位型「Core i7」のノートパソコン用。
「H」というのは性能重視型で、その分ノート用のCPUとしては消費電力が大きめ。
バッテリーの駆動時間を延ばすため、ノートパソコンには性能と消費電力を抑えた「U」や、もっと抑えた「Y」が使われることが多いのだが、このパソコンは高性能がウリのためか「H」が用いられている。
それでも高密度バッテリーを採用しているためか、公称11.5時間の長時間駆動だ。
クロック数(速度の目安)は2.6GHz、最大5GHz。
6コア12スレッドのCPUで、6つの頭脳で最大12の作業を同時に行うことができる。
とにかく非常に高性能なノート用CPUだ。
以下、やや難しい話になるので、初心者の方は聞き流して欲しい。
「Core i7-10750H」は第10世代 Core のCPU(Comet Lake)であるが、2021年春の現時点において、すでに第11世代 Core のCPU(Tiger Lake)も登場している。
だが、後継と言える第11世代のCPU「Core i7-11375H」と比べても、Core i7-10750H の性能は遜色ない。むしろ高い。
以下はCPUの測定測定ソフト「CINEBENCH R23」の測定結果だ。
マルチスレッド(複数同時作業)の測定で、スコアは 7137。
前モデル(m-Book K)で使われていた第9世代の Core i7-9750H だとスコアは 6900、第11世代の Core i7-11375H だと約 6600 になる。
第11世代で別系統のCPUである Core i7-1185G7 だと 6200、Core i7-1165G7 は 6050 ほどだ。(すべてノート用)
第11世代のスコアがパッとしないのは、4コア8スレッドのCPUであり、6コア12スレッドである Core i7-10750H より同時作業数が少ないからだ。
ただ、第11世代の Core はシングルスレッド(1つだけ作業した時の速度)では、従来のCPUを上回る。
また、有効性は未知数だが、AI による動作の最適化機能を持つ。
どちらが良いかは用途によるが、写真のデジタル現像や動画の編集といったクリエイティブな作業は、マルチスレッドの速度の方が影響する。
Office や Photoshop などのソフトウェアもマルチスレッドに最適化されている。
このパソコンはワーキングノートとして位置付けられているため、同時作業数の多い Core i7-10750H を採用しているようだ。
メモリが 16GB と多いのも、動画や画像を使う作業では多くのメモリが必要になるためだろう。
パソコンに詳しい人だと「マルチスレッド重視ならAMD社のCPU『Ryzen』の方が良いのでは?」と思ったかもしれない。
ただ、Office や Photoshop などの大手作業用ソフトの多くは Core に最適化されている。
近年は Ryzen の躍進もめざましいが、まだ安心感は Core の方が強い。
なお、このパソコンには「
」と呼ばれる動作モードの設定ソフトが入っていて、ファン(送風機)の回転数やCPUパワーを調整できる。ベンチマーク(性能測定)は「パフォーマンス」で行ったが、やはりファンの動作音は大きかった。
一方、省電力にして測定したところ、CPUのスコアは 7130 から 5500 に下がったが、測定中でもファンの音は小さいままだった。
このパソコンの処理速度は一般用途においてはオーバースペックと言えるので、普段は省電力か静音の設定で使うのが良いだろう。
必要に応じて、バランス型の「エンターテイメント」やパワー重視の「パフォーマンス」に切替えられるのは、本機の長所と言える。
グラフィック性能(GPU)
本機はグラフィック性能を強化する「
下位のGPUであり、最新のゲームを快適に遊べるような性能ではない。
そもそもこのパソコンはゲーミングモデルではない。
だが、CPU内蔵グラフィック機能よりは明らかに上位であり、CAD(設計ソフト)や動画編集ソフトなどの実行には大きな助けとなる。
また、2020年の2月に発売された割と新しいチップで、旧式な訳ではない。
以下は 3D Mark(Time Spy)と FF15 ベンチマークで調べた、本機のグラフィック性能だ。
3D Mark(Time Spy)のグラフィックスコアは 1354。
ベンチマーク中の映像はカクカクで、やはり高精細な3Dグラフィックの描画は厳しい。
だが、意外にも「ファイナルファンタジー15」は割と動いていた。
標準画質で試したが、滑らかではないものの普通に遊べそうな程で、画質を少し落とせばプレイは可能だろう。
少し古いゲームなら問題はなく、例えば「ファイナルファンタジー14」の測定では最高画質で「快適」の評価を出している。
CPUパワーは高いので、グラフィックが重くないものならゲーム用途でも使って行けそうだ。
とは言え、本機はあくまで一般向け・ワーキング向けなので、ゲームをやるならゲーミングモデルを選ぶのを勧める。
ともあれ、CPU内蔵のグラフィック機能と比べれば、しっかり専用グラフィックチップの恩恵を感じられる性能で、作業の補助としては申し分ない。
データ記録装置(HDD/SSD)
本機は標準で 512GB の NVMe SSD を搭載している。
「NVMe SSD」は簡単に言うと「非常に高速なSSD」だ。
値段は高いが、従来型と比べるとデータの保存・読み出しの速度は段違いである。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト Crystal Disk Mark(8.0)での測定結果だ。
1段目の左側(読み込み)は3400、右側(書き込み)も2200越えで、共に優秀な速度だ。
従来のSSD(SATA接続)だと読み込みは500前後、書き込みは200~500ほど。
HDDだとどちらも100~150程度になる。
NVMe SSD がどれだけ高速かがわかるだろう。
ただ、512GB のデータ保存量は、用途によっては少な目だ。
書類の作成やブログの更新ぐらいしかしないのならそれでも十分だが、写真を撮り溜めたり、動画を扱うのであれば増やした方が良い。
このモデルは1TBか2TBのHDDを追加できるので、外付けのHDDやSSDを使う手もあるが、できれば1TBのHDDを追加で内蔵させたいところだ。
ただ、HDDを追加すると100gほど重量は増えるので留意して欲しい。
総評
一般ワーキング向けのノートパソコンとして、高性能とコストパフォーマンスを両立させた製品だ。
素早い起動とキビキビした動作、一通りの作業をこなせる能力を持ち、オフィスでの資料作成やリモートワークはもちろん、写真加工や映像編集なども快適に行うことができる。
15.6型で2kgの本体は、カフェや学校に持って行くにはややかさばるが、その性能と長時間駆動はノマドワークにも向いているだろう。
モニターが高発色ではないため、プロレベルのイラスト処理や写真現像、3Dモデリングをするならクリエイターモデルの方が良い。
だが、このクラスの処理速度のノートパソコンをこの値段で買えるのは大きな魅力だ。
「どうせ買うなら高性能なものが欲しい」「でも15万とかは出せない」という人にはピッタリのマシンだろう。
形式:15.6インチ ノートパソコン
CPU:Core i7-10750H
グラフィックス:GeForce MX350 2GB
メモリ:16GB(DDR4-2666)
ストレージ:512GB NVMe SSD
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5
モバイル性能:1.95kg、バッテリー公称11.5時間
価格:109,800円(税別) 131,780円(税込、5月時点)
※詳細はマウスコンピューター公式サイトをご覧下さい。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2021年3月17日