- 2021年の秋にリニューアルしたドスパラのクリエイターモデルのノートパソコン
- 高発色モニターと多めのメモリ、GeForce による高いグラフィック機能を持つ
- クリエイターモデルとしてはかなり割安
こんな人にオススメ!
- 写真や動画、イラストの制作に向いたノートが欲しい方
- 3D CAD(設計ソフト)に向くノートPCが必要な方
- ゲームを遊べる高発色モニターのノートPCが欲しい人
レビューは公正に、忖度なく行っております。
クリエイターPCが安い!?
「クリエイターモデル」とは、2016年頃から出てきたパソコンの新しいカテゴリだ。
写真のデジタル現像やイラストの制作、出版物や映像の作成、3D CAD(設計)などの創作活動向けに作られたパソコンのことである。
ドスパラで販売されているクリエイターモデルには「raytrek(レイトレック)」の名が付けられている。
こうしたパソコンは、かつては「ゲーミングモデル」か、業務用の「ワークステーション」が担っていたが、ゲーミングモデルはゲームをやらない人だとピンと来ないし、ワークステーションは個人向けではない。
そのためパソコンメーカーは近年、クリエイターモデルを別ジャンルとして販売している。
性能としては、処理の高速なCPU、大きなデータを扱うための大容量メモリ、映像や3Dモデルを滑らかに動かせるグラフィック能力を持つものが多い。
クリエイターモデルはさらに、高発色のモニターを搭載する。
ゲーミングモデルと共通している部分が多いため、サードウェーブ(ドスパラ)のようなゲーミングモデルのノウハウを持つメーカーは、クリエイターモデルも得意としている。
その特性上、高価な製品が多いが、raytrek シリーズは非常にコストパフォーマンスが高い。
ノートパソコンの
raytrek G5シリーズは Core i5 や GeForce GTX 1650 といった費用対効果に優れたパーツで構成され、約11万円とかなり安価だ。
R5シリーズは10万円台後半だが、Core i7 と GeForce RTX 3050 / 3060 を搭載する高性能機となっている。
今回はそんな15型ノート
をレビューしていきたい。外観
デザインとモバイル性能
全体がガンメタリック(濃灰色)で、天板には raytrek のロゴが刻印されている。
ややメタリック感が強く、角度によっては強めの光沢が見られ、いかにもプラスチックだった以前よりオシャレになった印象だ。
表面にはブラスト(粒子)加工が施されており、サラサラした触感で、指紋は付きにくい。
メタリックでダークグレーの天板
硬度のあるしっかりした質感だ
中もキーの周辺はガンメタリック
暗い部屋ではもっと黒に近い色になる
内部も黒と濃灰のシックな配色だが、コンセントに繋げているときは LED バックライトでキーボードを光らせることができる。
色を変えることもできるため、相応にライトアップすることも可能だ。
15.6インチのモデルであるため、ノートとしてはやや大きめ(横36cm x 縦24.4cm)。
重さは約2kgで、モバイルノートほど軽くはないが、十分に持ち運べる重さだ。
厚さは21mm(実測値)で、ビデオカード搭載ノートPCとしては、かなり薄型。前年モデルは25mmだったのでかなり変わっている。
インターフェイス(接続端子)は豊富で、側面にUSB3.0(USB3.2 Gen1、5Gbps)2つを含む、合計3つのUSBとカードリーダーを備え、後部にも HDMI と USB-C を備える。
USB-C は速度10Gbps(USB3.1 / USB3.2 Gen2)で、映像出力にも対応。DisplayPort を使いたいときはこれを使用する。
通信機器も最新のものが搭載されている。
無線通信は Wi-Fi 6(ax)に対応、Bluetooth はもちろん、有線LANも 2.5Gb に対応だ。
バッテリー持続時間はモデルによって異なるが、公称でおよそ6時間前後。
安価な raytrek G5-TA(Core i5、GeForce GTX 1650)は公称5.9時間だが、上位モデルの raytrek R5-TA5(Core i7、GeForce RTX 3050)は公称6.3時間。
さらに上位の raytrek R5-TA6(Core i7、GeForce RTX 3060)は公称6.6時間となっている。
通常、性能が高いほど消費電力が上がるため、バッテリー持続時間は短くなるのだが…… それに合わせてバッテリー容量を増やしているのか、本機は逆になっている。
ただ、そのためか raytrek R5-TA6 は約2.1kgと、若干重い。
なお、raytrek G5-TA は実測1.86kgで、公称の重さより軽かった。
モニター / カメラ / サウンド
クリエイターモデルにとって、モニターは重要だ。
本機は安価なノートPCでありながら、高発色の液晶画面を備えている。
液晶パネルには世界シェア一位の中国のメーカー BOE 社のものが採用されており、発色の目安となるsRGBカバー率はほぼ100%、Adobe RGBカバー率は約76%だ。
一般の(安価な)液晶モニターはsRGBカバー率60~80%、AdobeRGBカバー率50~60%なので、高発色であることがわかる。
ちなみに、前年(2020年)の同じ価格帯の raytrek はsRGBカバー率91%だった。
また、明暗の強さを示すコントラスト比も高く1200:1となっている。
必要に応じて、よりクッキリした色にすることができる。
美しい色彩は動画視聴時にも嬉しい
画面の横枠の幅は実測で約7mm
白がsRGB、黄がAdobeRGB
黒は米映画団体やAppleの規格
これなら高画質のネット動画やゲームなども、美しい色彩で見ることができるだろう。
視野角も全方向85度(170度)と、十分に広い。
リフレッシュレート(描画速度)は60Hz、応答速度(色変化速度)は25msで、これらゲーミングモニター向けの性能は標準的だ。
(詳細データは こちら を参考にしている。モニターの用語については こちら を)
ノングレア(非光沢)液晶で、写り込みも少なめ。
「やや光沢感があって目が疲れる」という意見も見られるが、さらに光沢をなくすと色がくすんで高発色モニターの意味がなくなるので、このぐらいが妥当だろう。
フェイスカメラは一般的なHD画質。
顔認証はR5シリーズ(raytrek R5-TA5 / TA6)には付いているが、G5(raytrek G5-TA)には備わっていない。
持ち出すことを考えているなら、セキュリティの高いR5シリーズを選んだほうが良さそうだ。
サウンドは、イコライザー(音声調整)ソフト「
低音を強くすると音が欠けるのが気になったが、ノートPCとしては高音質と言って良い。
※Sound Blaster の設定画面。イコライザーがあれば一般的なスピーカーでも深い音になる。
また、サウンドブラスターにはマイクの調整機能があり、ノイズやエコーを軽減して音声を収録できる。オンライン会議などで役立つだろう。
キーボード
15.6インチのノートPCであるため、キーボードの広さ、大きさ、キーの間隔などは十分だ。
キーの反発はやや強めで、ポチポチとしたボタンのような感触があり、打鍵感も良い。
キーストローク(深さ)も適度にあり、テンキーも備わっていて、数値の入力もしやすい。
以前の raytrek はエンターキーが1行分しかなく、慣れるまで入力ミスが多発したが、今期のモデルはその点も改善されている。
また、15型ノートPCには珍しく、カーソル(矢印)キーが他のキーと変わらない大きさになっている。
画像加工ソフトなどはカーソルキーを多用するので、それが使いやすいのはメリットだ。
全体として、違和感なく使えるキーボードと言える。
キーの間隔やサイズはデスクトップ用のキーボードと変わらない
エンターキー周辺。3列のテンキーと標準サイズのカーソルキーを持つ
キーボードには LED バックライトも備わっており、暗所でも作業しやすい。
ライトの色は「Gaming Center」というソフトウェアで自由に変更可能で、もちろんOFFにすることもできる。
部分ごとに色を変えることはできないが、自動で色が変わる設定は可能だ。
マウスパッドは大きめのものが用意されていて、触り心地は悪くない。
クリックできる範囲も広く、問題なく扱うことができるだろう。
パーツ性能
処理性能(CPU)
2021年 秋モデルの raytrek のノートは、G5シリーズは「
どちらも第11世代 Coreシリーズの後期強化型ノート用CPU「Tiger Lake H45」に相当する。
2021年の夏ごろから普及し始めた新型だ。
初期型の Tiger Lake(UP4)と比べると、投入できる電力が大きくパワーがあるのに加え、コアの数も2倍になっており、段違いの性能を誇る。
内蔵グラフィック機能は弱めだが、本機のようにビデオカードを搭載している機種なら何も問題はない。
Core i5-11400H は6コア12スレッドのCPUで、6つの頭脳で12の作業を行える。
Core i7-11800H は8コア16スレッドで、同時作業数はさらに多い。
以下は性能測定(ベンチマーク)ソフト Cinebench R23 で計測した結果と、他の主力ノート用CPUとの比較グラフだ。
※Core i7-11800H は こちら のノートPCで測定した結果。
Core i5-11400H
Core i7-11800H
・マルチコア性能(CINEBENCH R23)
Core i7-11800H:10800
Core i7-10875H:8500
Core i5-11400H:8250
Core i7-1165G7:6000
Core i5-1135G7:5600
Core i5-10300H:5350
Core i5-10210U:3100
Celeron N4100:950
・シングルコア性能(CINEBENCH R23)
Core i7-11800H:1520
Core i7-1165G7:1500
Core i5-11400H:1480
Core i5-1135G7:1350
Core i7-10875H:1200
Core i5-10300H:1180
Core i5-10210U:1050
Celeron N4100:380
グラフの赤文字は2021年 秋モデルの raytrek に使われているCPU。
紫は2020年の raytrek で使われていたものだ。
マルチコア性能は多くのソフトを同時に動かしたときの速度で、Windows の起動時間や映像の編集、写真のデジタル現像などに特に影響する。
つまりクリエイターモデルには重要な能力となる。
シングルコア性能はソフトウェアを一つだけ動かしたときの速度で、一般ソフトやゲームの動作速度にはこちらの方が影響する。
ただ、Photoshop や Office など、創作作業にも使われる大手ソフトは処理の分散化に対応しているため、シングルとマルチの双方が関わる。
グラフを見てわかるように、前モデルとは性能差が大きい。
Core i5 でも以前(第10世代 Core)の Core i7 クラスの性能があり、Tiger Lake H45 の Core i7 はもうデスクトップ用の CPU に匹敵する。
現行のノートPCとしては最上位クラスで、重い創作作業も十分にこなせる性能だ。
また、本機にはエンターテイメントモード(Office)とゲームモード(Gaming)の、2つの動作モードがある。
(Rシリーズには、さらに3つ目のターボモードもある)
パワーを抑えるエンターテイメントモードにすると処理速度は下がるが、動作音が少なくなり、バッテリーも長持ちする。
以下はエンターテイメントモードでの性能測定結果だ。
Core i5-11400H(エンターテイメント)
モードの切り替えは物理ボタンで可能
測定スコアは半分ほどになったが、測定中でも静かなまま動作した。
また、半分といっても4400あり、そこいらの省電力ノートPCより高い性能がある。
ボタンで手軽に切り替えられ、再起動も必要ない。
軽作業にしか使わないときはこのモードで使うのが良いだろう。
グラフィック性能(GPU)
2021年 秋モデルの raytrek は搭載するビデオカードが機種ごとに異なる。
raytrek G5-TA は「 」、raytrek R5-TA5 は「 」、raytrek R5-TA6 は「 」を搭載する。
GeForce GTX 1650 は下位モデルだが、安価でコストパフォーマンスに優れる。
GeForce RTX 3060 は新型の3000シリーズのひとつで、最新ゲームも快適にプレイ可能。
GeForce RTX 3050 は3000シリーズの下位に位置するが、実は一番新しい。
どれも動画編集や写真のデジタル現像、イラスト制作の補助としては十分な性能であり、3Dモデリングや3D CADの使用でも困ることはないだろう。
一般的な創作作業において、性能が不足することはないはずだ。
以下は 3D Mark(Time Spy)で調べた GeForce GTX 1650 のグラフィック性能だ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
GeForce GTX 1650 でも人気ゲーム「Apex Legends」は 70fps(毎秒70コマ)で動く。
本機のリフレッシュレート(描画速度)は60Hz(毎秒60回)なので、つまり十分な速度だ。
「ファイナルファンタジー15」も標準画質で「やや快適」の評価となっており、問題なく動作していた。
ただ、高負荷をかけると動作音は大きくなる。ゲーム時はヘッドホンを用いた方が良いだろう。
raytrek G5-TA、FF15標準画質測定
GeForce 1650 で高画質は「普通」判定
以下は各ビデオカード(グラフィック機能)の性能比較グラフだ。
・3D Mark: TimeSpy(全てノート用)
GeForce RTX 3070:10000
GeForce RTX 3060:8300
GeForce RTX 3050:5000
GeForce GTX 1650:3600
Iris Xe(CPU内蔵):1400
GeForce GTX 1650 でも最新ゲームが相応に動く。
GeForce RTX 3050 や 3060 なら快適に動作し、GeForce RTX 3060 は一般用途においてはオーバースペックとさえ言える。
ただ、GeForce GTX 1650 や RTX 3050 は VRAM(ビデオメモリ)が多くないので、ゲームの実況配信を行ったり、4K画質の映像編集を行うには不安がある。
こうした重い作業をするなら、やはり GeForce RTX 3060 以上の機種が欲しいだろう。
なお、カメラのRAW(デジタル)現像や、多重レイヤーのイラスト制作などを行う場合は、グラフィック性能よりもCPUとメインメモリが重要になる。
これについては、本機はしっかり考慮されている。
ストレージとメモリ(記録装置)
本機はメインストレージとして「
従来型の数倍高速なSSDで、近年のノートパソコンはこれが標準になりつつある。
容量は raytrek G5シリーズは 512GB、R5シリーズは 1TB(1000GB)だ。
データ通信規格(PCIe)の世代は第3世代(Gen3)のようで、CPUは第4世代(Gen4)に対応しているが、カスタマイズで第4世代のSSDに変えたりすることはできない。
PCIeがGen4のNVMe SSDは発熱が大きく、価格も高いので、その辺の影響だろうか。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト Crystal Disk Mark の測定結果だ。
標準設定での測定
NVMe SSD 設定の測定
読み込み速度は 2300MB/s の後半、書き込み速度は約 1700MB/s。
Gen3 PCIe の NVMe SSD としては標準的な結果だが、従来型(SATA接続)のSSDは読み書きとも 500MB/s、HDDは 150MB/s 程度なので、十分な速さであるのがわかるだろう。
ランダムアクセス(小さなバラバラのデータを処理する速度)も標準といったところ。
なお、検証機に搭載されていたのはADATA社の産業用SSDである こちら のものだった。
本体が薄くなったためか、前モデルでは可能だったSSDやHDDの追加は、残念ながらできなくなっている。
創作作業において重要になるメモリは、ノート用のCPUでは Tiger Lake H45 から使用可能になった
容量も大きく、raytrek G5シリーズで16GB、R5シリーズは32GBを持つ。
同価格の一般モデルの倍近い量で、クリエイターモデルとして不足はない。
総評
とにかくコストパフォーマンスに優れた、割安なモデルだ。
高発色モニター+メモリ16GBのビデオカード搭載PCで約11万円とか、メモリ32GBでGeForce 3000シリーズなのに約15万円というのは、他のメーカーでは見られない。
創作はもちろん、動画視聴やゲームにも向いている。
ライバルであるマウスコンピューターの DAIV シリーズ と比べると、DAIV の方が軽量で、バッテリーも長く持ち、高解像度モデルもある。
しかし価格はこちらの方が安く、モデルによっては同じ構成でも5万円近くの差が出る。
また、raytrek G5-TA に相当する安価なモデルは DAIV には存在しない。
2020年に見た raytrek と比べても改善点が多く、少し値上がりしているが、昨今のPCパーツの高騰ぶりを考えると、価格も頑張っているのがわかる。
安くて良いノートPCの代表格のひとつと言えるだろう。
形式:15.6インチ ノートパソコン
CPU:Core i5-11400H(第11世代Core、6コア)
グラフィックス:GeForce GTX 1650 4GB
メモリ:16GB(DDR4-3200、8GBx2)
ストレージ:512GB NVMe SSD(Gen3)
モニター:解像度1920x1080、sRGB比 約100%
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5、2.5G LAN
モバイル性能:約1.9kg(実測)、バッテリー公称5.9時間
その他:Windows10、2段階の動作モード
価格:税込 109,980円
形式:15.6インチ ノートパソコン
CPU:Core i7-11800H(第11世代Core、8コア)
グラフィックス:GeForce RTX 3050 4GB
メモリ:32GB(DDR4-3200、16GBx2)
ストレージ:1TB NVMe SSD(Gen3)
モニター:解像度1920x1080、sRGB比 約100%
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5、2.5G LAN
モバイル性能:2kg、バッテリー公称6.3時間、顔認証
その他:Windows10、3段階の動作モード
価格:税込 149,980円
形式:15.6インチ ノートパソコン
CPU:Core i7-11800H(第11世代Core、8コア)
グラフィックス:GeForce RTX 3060 6GB
メモリ:32GB(DDR4-3200、16GBx2)
ストレージ:1TB NVMe SSD(Gen3)
モニター:解像度1920x1080、sRGB比 約100%
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5、2.5G LAN
モバイル性能:2.1kg、バッテリー公称6.6時間、顔認証
その他:Windows10、3段階の動作モード、USB4
価格:税込 189,979円
※詳細はドスパラ公式サイトをご覧下さい。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2022年1月31日