- 2022年春に更新されたドスパラのクリエイター向けデスクトップパソコン
- 第12世代の Core i7 + GeForce 3060 という最新の定番構成
- 大量の HDD / SSD を収納できる拡張性重視のケース
こんな人にオススメ!
- 最新の処理能力で画像加工や動画編集を行いたい人
- 大量のストレージを搭載可能なマシンが欲しい人
- 実用性と拡張性を優先したデスクトップPCを求めている方
レビューは公正に、忖度なく行っております。
創作向けPCの新スタンダード
今回取り上げる「raytrek XV」はドスパラのクリエイターモデル raytrek のひとつだ。
クリエイターモデルは一般的に、処理能力(特にマルチコア性能)に優れたCPUと、大容量のメモリ、大量のストレージ(データ記録装置)を持ち、高いグラフィック性能を備え、接続端子も豊富なものが多い。
そしてこの春、本機は最新CPU「
処理性能が飛躍的に上がり、画像加工や写真のデジタル現像、動画の編集作業などに高い能力を発揮、クリエイターにも大きな恩恵をもたらしている。
本機は CPU に
コストパフォーマンスに優れた人気の構成で、2022年春現在の定番と言って良いだろう。
正直、デザイン的には無骨で、見栄えのする外観ではない。
だが、内部にはストレージ(記録装置)を収納できる3.5インチベイを8基分も備えており、空きの拡張スロットも多く、とても拡張性に優れた設計となっている。
ワークステーション(業務用PC)に近い構成のマシンと言えそうだ。
価格は(2022年5月時点で)税込189,980円。
最近は半導体不足と情勢不安で価格変動が大きいが、このクラスとしては他と比べて割安なのは間違いない。
以下、そのレビューをお伝えしていきたい。
ケースと外観
デザインと接続端子
デスクトップの raytrek には大型の「ミドルタワー」と、やや小型の「ミニタワー」の2種類があるが、ミニタワーのケースは一般モデルと変わらない。
raytrek にするならミドルタワーを選びたいところで、本機はそのひとつだ。
外観に目立った装飾はないが、単なる真四角と言うわけでもなく、前面の左右が大きく面取りされている。
色はつや消しブラック一色。
前部にある3段のメッシュ付き吸気口が特徴で、はしごをイメージしているという。
デスクトップの raytrek の外観
地味だが耐久性と通気性を重視している
天井と側面には大きな通気口が
ここの網の目はかなり大きい
クリエイターモデルらしく、前部中央にはSDカードリーダーが備えられている。
SDカードはカメラ / ビデオカメラで使用されるため、クリエイターモデルには必須だ。
DVD ドライブも標準搭載されており、必要ならブルーレイドライブに変更することもできる。
前面にはUSB3.0(USB3.2 Gen1、速度5Gbps)も2つある。
背面には合計8つのUSBが備わっており、うち1つはUSB-C。
また、USB-Cを含む3つがUSB3.1(USB3.2 Gen2、速度10Gbps)となっている。
有線LAN端子は 2.5Gb の速度に対応。
ビデオカードに付いている映像出力端子は HDMI が1つ、Display Port が3つ。
最大4画面のマルチモニターに対応している。
カードリーダーは大小2種類が備わる
リセットボタンがあるのも特徴
背面のUSBはしっかり色分けされている
水色のUSBが速度10Gbps(Gen2)
ケースの高さは44cm、幅は20.7cmと、このクラスの標準的な大きさだが、奥行きは50.9cmとかなりある。
これは大型の HDD/SSD 収納庫を備えているためだ。
天井と側面には通気口があり、いかにも風通しが良さそうだが、天井から中にゴミを落とさないよう注意したい。
内部構造と冷却
実用性と拡張性を重視した本機は、内部構造が大きな特徴と言える。
まず冷却面についてだが、ケースファンが多い。
前面に2基、後部に1基、さらに天井に1基のファンが「標準で」備わっている。
オプションで天井のファンをさらに追加することも可能。
しかも前面と天井のファンは14cmの大型で、風量と静音性を両立させている。
多数のファンによる圧倒的エアフロー
大型ケースなので広くて風通しが良い
前面ファンが多いのは HDD や SSD を大量搭載しても十分に冷やせるようにしているのだろう。
CPUファンも大型のものが使用されており、写真のデジタル現像や動画のエンコードでCPUをフル回転させても十分冷却できそうだ。
なお、冷えると評判の「虎徹Mark II」や「無限五 リビジョンB」に変えてもらうこともできる。
そして目立つのは、前面にそびえ立つ8段の HDD/SSD 収納庫(3.5インチベイ)だ。
これは右側面(マザーボードの裏側)からアクセスし、専用の HDD/SSD 固定器具が備わっている。
8段も並んでいるとなかなか壮観で、まさにワークステーション。
固定器具は HDD ならネジ止めなしで装着でき、そのままスライドして収納できる。
ズラッと並ぶ8段ストレージベイを見よ!
収納スペースはあればあるほど嬉しい
専用器具にHDDを装着したところ
このまま中に入れるとカチッとはまる
収納は右側、配線は左側から行うのが若干面倒な気もしたが、収納欲を満たしてくれる設計だ。
また、この収納庫の側面にも SSD を3つ貼り付けられるようになっており、少しでも収納を増やそうとしているのが見て取れる。
空きの PCI Express スロット(拡張カード用スロット)も、ビデオカード直下の PCIe x1 スロットは通気のため省くとしても、まだ PCIe x1 スロットが1本、PCIe 4.0 x16 スロットが1本、PCIe 3.0 x16 スロットが1本空いており、さらに M.2 スロット(Gen4x4)も空きが2つある。
周囲のスペースも広く、他の部品が邪魔になることもないだろう。
自力での増設になるが、PCに慣れている人なら色々と付け足すことができそうだ。
PCIe x16 には x8、x4、x1 も刺せる
空きの M.2 が2つあるのも嬉しい
8段ラックの裏にも SSD 固定パーツが
どれだけ装着させる気なのだろうか
ただし、本機のマザーボードに SATA 端子は4つしかない。
DVD ドライブを搭載するならそちらで1つ使うので、空きは3つ。
これだと(M.2 以外の)HDD や SSD は3つか4つしか追加できないので、8段の HDD ラックをフルに活用したいなら SATA 増設用の拡張カードが必須となる。
しかし、拡張カードをカスタマイズで付けてもらったりはできない。
欲を言えば、オプションで追加可能であって欲しかった。
ドスパラの WEB パーツショップでも、SATA 増設カードは扱っていないようだ。
なお、購入時のカスタマイズでは HDD か SSD を2つまで増設してもらえる。
マザーボードは ASUS 社の PRIME H670-PLUS D4 が使われていた。
このマザボはSATAの一部がビデオカードの後ろに隠れてしまう。裏側から確認を
電源は普通に下部に設置
吸気は上から行われている
電源ユニットは標準構成だと650W、80PLUS BRONZEの製品が使われている。
特に拡張しないのであればこれで問題ないが、電源には経年劣化があって出力不足になると故障原因になるし、拡張するならその分を考慮しておかなければならない。
HDD は1基で 25W ほど使うので、4基備えるなら 100W 大きくする必要がある。
(SSD は 3W ほどなのであまり気にしなくて良い)
将来の拡張込みでも 850W なら余裕があるだろう。
80PLUS が GOLD や TITANIUM の製品なら省エネ性能も高い。
ドスパラは必要な電力量を計れる 電源電卓ページ を公開しているので、そちらも参考にすると良いだろう。
パーツ性能
処理性能(CPU)
本機は第12世代 Core の CPU「
2022年に発売されたばかりの最新型で「 」と呼ばれているタイプ。
「S」はデスクトップパソコン向けを表す。
「Pコア」と呼ばれる高性能コア8つと、「Eコア」と呼ばれる発熱の低い高効率コア4つを組み合わせた複合構成で、Eコアに軽い作業を任せることでCPUの温度に余裕ができ、全体のパフォーマンスが上がるという。
さらに、コアが多ければ同時に行える作業数が増えるため、単純に並行作業(マルチコア性能)で強い。
写真のデジタル現像(RAW現像)や動画編集(エンコード)の作業時間は、このマルチコア性能に大きく影響されるため、第12世代 Core はまさにクリエイター向けのCPUとも言える。
Photoshop や Illustrator といった Adobe 社のソフトウェアもマルチコアへの最適化(処理の分散化)が施されているため、クリエイターにはメリットが大きい。
なお、シングルコア性能も強化されているので、一般のソフトウェアやゲームでも優れた性能を発揮する。
※Core i7-12700 の詳細データ
Pコアは2つの作業を同時に行えるハイパースレッディングという機能に対応しているが、Eコアは未対応。
よって同時に行える作業数(スレッド)は 8x2+4 で 20。
「12コア20スレッド」の CPU だ。
共用キャッシュ(CPU内のデータ置き場)は第11世代 Core の約1.5倍となっている。
なお、本製品のユーザーレビューに「Windows10 を使えるようにして欲しかった」という意見があるが、第12世代 Core は作業を高性能コアと高効率コアのどちらに振り分けるかで、Windows11 の機能を利用している。
そのため Windows10 では十分な性能を発揮できない。
第12世代 Core 搭載機は基本、Windows11 のみとなる点は留意して欲しい。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト CINEBENCH R23 の結果と、他のデスクトップ用の主流 CPU との比較グラフだ。
Core i7-12700 測定結果
測定中の CPU 温度(Core Temp)
・マルチコア性能(CINEBENCH R23、定格動作)
Core i9-12900K:25000
Core i7-12700K:21000
Core i5-12600K:16500
Ryzen 7 5800X:14500
Core i7-12700:14000
Core i7-11700K:13500
Core i5-12400:11500
Ryzen 5 5600X:10500
Core i7-11700:9200
Core i5-11400:8000
・シングルコア性能(CINEBENCH R23)
Core i9-12900K:2000
Core i7-12700K:1900
Core i7-12700:1900
Core i5-12600K:1870
Core i5-12400:1720
Ryzen 7 5800X:1580
Core i7-11700K:1550
Core i7-11700:1520
Ryzen 5 5600X:1520
Core i5-11400:1400
マルチコアの測定値は約14000。
第11世代 Core の Core i7-11700 は 9200 だったので、1.5倍近い大幅な性能アップだ。
「K」の付いた上位版と比べると控えめだが、第12世代 Core の K モデルは発熱が非常に高く、高度な冷却能力がないと扱えない代物なので、作業で安定して使うなら本機の Core i7-12700 がベストだ。
シングルコアの測定値も、今回の測定では1900に近い、非常に優秀な数値が出た。
現行のCPUではトップクラスであり、多くのソフトウェアはこのシングルコアの性能が影響するため、つまりソフトウェアを今もっとも早く扱えるマシンのひとつと言える。
Core i7-12700 は TDP(消費電力と発熱の目安)もデスクトップPC用としては 65W と低く、よって動作音も少なめ。
マルチコア測定中のCPU温度は(開始直後のターボブースト時を除き)45度前後で、かなり余裕があった。
あらゆる作業を快適に安定して行える、欠点のない性能だ。
グラフィック性能(GPU)
本機はビデオカード「
価格と性能のバランスの良い中クラスの製品で、世界的な半導体不足でパーツ価格が高騰を続けている現在、コストパフォーマンスに優れる一番人気の製品となっている。
以下はベンチマークソフト 3DMark:TimeSpy での性能測定の結果だ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
3D Mark:Time Spy のグラフィックスコアは約8500。
(CPUも含めた)総合スコアは8900だった。
他の現行のビデオカード(デスクトップ用)との性能比較は以下のようになる。
・3D Mark: TimeSpy(デスクトップ用)
GeForce RTX 3080:17000
GeForce RTX 3070:13500
GeForce RTX 3060Ti:11500
GeForce RTX 3060:8500
GeForce GTX 1660SUPER:6000
GeForce GTX 1650:3600
GeForce GTX 1050Ti:2500
Iris Xe(CPU内蔵):1400
現行のゲームはすべて高画質で快適に遊ぶことができ、作業においても全く不足はない。
高度な 3D CG が表示されるグラフィック作成ソフトや設計ソフトも軽快に動かせるだろう。
ゲームの実況配信などは GeForce RTX 3060Ti か 3070 以上が欲しいところだが、そうした用途以外なら問題ないはずだ。
なお、動画編集(エンコード)はビデオカードも補助的に使われるが、CPU とメモリの方が大きく影響する。
人気ゲーム「Apex Legends」は最高画質で 140fps、「フォートナイト」は 105fps で動作するとの評価。
「ファイナルファンタジー15」のベンチマークは快適評価でスコア 8774。
「モンスターハンターライズ」は高画質で 120~150fps の動作速度だった。
一般的に 60fps(秒間60コマ)あれば問題なく、プロレベルでも 100~120fps あれば良いので、十分な性能だ。
FF15 ベンチマーク 高画質測定
モンハンライズも高画質120fpsで遊べる
本機はゲーミングモデルではないが、クリエイターモデルとゲーミングモデルは必要とされる構成が似ている。
ゲームマシンとしても一線級で、作業用としてはオーバースペックなほどのグラフィック性能と言えるだろう。
ストレージ(記録装置)とメモリ
標準搭載のデータ記録装置(ストレージ)は 500GB の「
NVMe SSD は小型で高速のスティック型 SSD で、従来の SSD(SATA接続)より大幅に高速、昨今はこれが標準的なメインストレージとなっているが、クリエイターモデルとしては容量 500GB は少な目だ。
ただ、カスタマイズで 1TB や 2TB に増量できるし、2台まで HDD や SSD を追加して貰うこともできる。
内部構造のところで述べたように、本機には大型の収納庫が用意されているので、自力でストレージを特盛りにすることも可能。
メインストレージの容量は、カスタマイズ前提だと思った方が良いかもしれない。
以下は試用機に使われていた NVMe SSD のベンチマーク(性能測定)結果だ。
標準設定で測定
NVMe SSD 設定で測定
読み込み速度は(第3世代 PCIe の NVMe SSD としては)非常に優秀で、3500MB/sを越える。
書き込み速度も約2500MB/sで、なかなか良い数値だ。
ランダムアクセス(バラバラのデータの処理速度、3段目)も標準より上で、全体的に不足のない性能と言える。
使われていたのは米ウェスタンデジタル社の こちら のものだった。
なお、カスタマイズで高速な第4世代 PCIe(Gen4)のものにして貰うこともできる。
値は張るが高速なので、性能を求める人は採用するのも良いだろう。
メモリは標準で
クリエイターモデルでメモリは重要視されるポイントで、例えば多くの写真や画像ファイルをまとめて開いたり、大容量の動画ファイルの処理を行ったり、イラスト作成時に大量のレイヤーを重ねたりするとメモリを多く消費する。
16GB あれば一般用途では問題ないが、メモリに負担のかかる使い方をするのであれば多めに欲しい。
本機は4本のメモリスロットを持ち、128GB(32GBx4)まで増量できる。
もちろんメモリが増えればお値段も上がるが、十分な量を搭載可能だ。
メモリの種類は現行の標準であり主力と言える
クリエイターモデルなら新型の DDR5 メモリが欲しくなるところだが、マザーボードが対応していないし、高価で流通も少ないため、それが主力になるのはまだ先の話だろう。
総評
第12世代 Core の性能の高さは本当に素晴らしく、ビデオカードもコストパフォーマンスに優れた GeForce RTX 3060 で、冒頭でも述べたように現在のデスクトップの鉄板構成と言える。
人気機種のようだが、当然といったところか。
個人的には、本機の最大の長所であり見どころは、8段のHDDラックを内蔵する非常に拡張性の高いケースだと思う。
これだけあれば古いパソコンのHDDを移植して、新しいHDDやSSDをいくつか搭載しても、まだ余るだろう。
マザーボードのSATA端子は限られているが、とりあえずストレージを全部収納し、用途に応じてそのとき使用するHDDやSSDにコードを繋げる、といった使い方もできる。
大量の写真や映像を扱うクリエイターはもちろん、趣味で動画やビデオを撮り溜めている人にも便利だろう。
拡張したい人のベースマシンにも良いドスパラらしいパソコンだ。
・raytrek XV(2022年春 第12世代Core搭載)
ケース:デスクトップ(ミドルタワー)
CPU:Core i7-12700(第12世代、12コア20スレッド)
グラフィックス:GeForce RTX 3060 12GB
メモリ:16GB(DDR4-3200、8GBx2)
ストレージ:500GB NVMe SSD(Gen3)
電源:650W(80PLUS BRONZE)
その他:8段ストレージベイ、ストレージ2つ追加可、ケースファン4つ、空きM.2スロットx2
価格:税込189,979円
※詳細はドスパラ公式サイトをご覧下さい。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2022年5月16日