- HPの13.5型モバイルノートパソコン
- 無音で革張り、常時接続で手書きペンが付属したビジネスノート
- ARM版プロセッサ搭載のため使えないソフトがあり一長一短
こんな人にオススメ!
- スタイリッシュなビジネスノートを求めている方
- 静音性や耐久性の高い、外で使うサブPCが欲しい方
- できるだけ高性能なファンレス機を求めている方
レビューは公正に、忖度なく行っております。
Intel でも AMD でもない道
最初に言っておくが、HP Elite Folio はかなり変わり種のパソコンだ。
スマホ用の CPU の亜種(ARMプロセッサ)を搭載しており、そのため使えないソフトウェアが多く、処理性能もやや劣る。
一方で、スマホのように無音で動作し、発熱も非常に低く、駆動時間もかなり長い。
外見も革張りで、スリープからの高速復帰と常時接続を備え、内部には高性能タッチペンを収納できる。
スマホのような使い勝手を目指し、モバイルノートPCを文房具の一つとして定義した、新しいコンセプトの製品だ。
基本性能や汎用性ではなく、新しい活用スタイルに焦点を当てたパソコンなので、一般向けとは言えないが、マッチした使い方ができる人にはとても便利な機種だろう。
価格は(割引なしの定価で)税込209,000円。
以下、そのレビューをお伝えしていきたい。
なお、HP Elite シリーズは法人向けのモデルなので、個人向けのラインナップで探すと見つからないので注意して欲しい。(もちろん個人でも購入は可能)
ARMプロセッサ と ARM版Windows について
まず、本機に使用されている「ARMプロセッサ」の注意点を述べておこう。
(長所はレビューの中で説明していきたい)
ARMプロセッサとはスマホや家電に多く使われている処理装置(CPU)で、一般のパソコン用の CPU とは設計が異なっている。
そのため Windows も専用の「ARM版Windows」を必要とする。
だが、ARM版Windows10 は 64bit 版のアプリ(ソフトウェア)が動作しない。
ソフトウェアには32bit版と64bit版があり、近年のものはほぼ全て64bit版だ。
それでもネットやメールなどの閲覧は問題なく、Office や Zoom などの大手のソフトウェアも32bit版が公開されているので、一般的な軽作業で困ることはほとんどない。
だが、Photoshop などの Adobe 社の最新ソフトウェアは64bit版しかないため動作せず、近年のゲームもほとんど64bit版のみだ。
それらを動かそうとすると「お使いの PC では実行できません」という警告が出てしまう。
ARM版Windows10 でも 64bit アプリが動くようになると言われていたが、どうやらその予定はキャンセルされそうだ。
(参考記事:ITmedia、Arm版Windows10のx64エミュレーションはなかったことに?)
ARM版Windows11 で対応されるが、現時点(2021年12月)では ARM版Windows11 の正式な公開日は未定。
その導入までは、使えないソフトが多いことに留意して欲しい。
外観
デザインと使用スタイル
HP Elite Folio の外装には「
実際の革ではなく、合成素材による人工の革だが、その見た目・質感は動物の革と大差ない。
閉じている状態は革張りのノートのようで、とてもシブくて高級感がある。
このような革のカバーは熱がこもってしまうため、通気と冷却が必要になるパソコンには普通は用いられないが、本機は低発熱の CPU(ARMプロセッサ)を使っているため、このような革張りの外装も可能となっている。
人工革の外装。うっすらと hp のロゴが
表面の拡大。本物の革と変わらない触感
そして本機は3つの使用スタイルに変形する。
ひとつは一般の作業やキーボードの入力に向いた、通常のノートパソコンのスタイル。
もうひとつは画面を手前に引き出した、Youtube などの動画視聴に向いたスタイル。
普通のノートパソコン形態。
外装と同じくダークグレーのデザイン
動画視聴に向いた形態。
所定の位置にマグネットで固定される
そして画面を水平にした、タブレットのようなスタイルだ。
本機にはタッチペンが付属されており、手書きメモやデザインのスケッチ、PDFファイルの校正作業などに適している。
最近はタブレットのように使える 2in1 スタイルのパソコンが増えているが、本機はキーボードの上にモニターを重ねるのが特徴だ。
折り返すタイプだと一度持ち上げる必要があるし、裏側のキーが気になる。
モニターを取り外すタイプは実質タブレットであり、モニター側にすべてのパーツを入れる必要があるため、性能が限られる。
しかし独自の変形スタイルを持つ本機は、それら既存の 2in1 の問題点を克服している。
手書き向けのタブレット形態。
専用ペン同梱で本体に収納可能
変形中の状態。天板が二つ折りになる
レザー外装が活かされた設計だ
ただ惜しいのは、タブレットとして使うには重いこと。
重量は約1.33kgで、決して重いパソコンではないのだが、用途やスタイルを考えると1kg前後であって欲しかった。
片手で持つにはずっしりくる重さだ。
HP Elite シリーズには軽量ノートの「Dragonfly」があるため、こちらはそこまでの軽量化は考えなかったのかもしれない。
大きさは横幅が A4 サイズとほぼ同じで、A4 ノートが入るバッグなら問題なく入れられる。
ヒンジの角度は最大でもこのぐらいまで
A4とセミB5ノートとの大きさ比較
モバイル性能(通信、耐久性など)
スマホ用 CPU の亜種を用いている本機は、スマホのようにスリープからの復帰が速く、スリープ中でも通信接続が維持されるようになっている。
この高速復帰は「 」と呼ばれており、よって普段はスマホと同じように完全に電源を切らず、スリープ状態で持ち運ぶのを想定している。
スリープは画面を閉じれば自動で行われるので手間もかからない。
スリープのままだとバッテリーの消耗が気になる方もいると思うが、本機は公称21.1時間の長時間バッテリーを持つ。
また「 」機能により超省電力状態で通信を維持できる。
実際の駆動時間は使用状況で変わるが、40%で考えても8時間あるので1日使うには十分だ。
高速充電が可能な独自の技術「 」にも対応している。
モバイル通信は 5G に対応しており、Wi-Fi も最新の Wi-Fi 6(ax)に対応。
通信機器の大手であるクアルコム社の SoC(処理や通信など一通りのシステムを統合したチップ)を搭載しているため、接続の安定性も折り紙付きだ。
また、軽量高耐久なリサイクルのマグネシウム素材で作られており、HP Total Test Process と呼ばれる過酷な耐久テストも実施されている。
HP の製品は米軍の採用基準を満たす耐久性を持っており、外装が革なのでそれも衝撃を吸収してくれるだろう。
ARM版Windows への対応の問題があるのか、HP 独自のセキュリティ機能は本機には搭載されていない。
しかしARMに対応したウイルスは少ないだろうから、セキュリティは高いはずだ。
そして何より大きな長所は、ファン(送風機)のないファンレス機であること。
普通のパソコンは冷却用のファンを搭載しているが、その騒音が問題になる。
しかし本機は低消費電力で低発熱なARMプロセッサを用いているため、スマホのようにファンによる冷却がなく、動作音がない。
そのぶん性能も控えめだが、オフィスや教室などの静かにすべき場所でも気兼ねなく使うことができ、ベッドの上など通気や熱が問題になる場所でも気軽に使用できる。
一方、接続端子はかなり少ない。
イヤホン/マイク兼用ジャックの他には、左右に USB-C(速度5Gbps、USB3.0相当)が1つずつあるだけ。
従来タイプの USB や、HDMI などの映像出力端子、有線LAN端子などは一切ない、かなり割り切った作りだ。
私も USB メモリを刺せなかったため、USB-C 対応の USB ハブを買いに行くことになった。
※サイズは実測、外装の革込み。
ただ、本機の USB-C は充電/給電が可能な PD(パワーデリバリー)と、映像出力が可能な ALT(オルタネートモード)に対応している。
モバイルバッテリーからの充電が可能で、付属の充電アダプタも USB-C を通して接続する。
また、モニターの Display Port 端子に繋げれば、複数画面での作業を行える。
もちろん Bluetooth も内蔵しており、対応の周辺機器があればそれほど困ることはないだろう。
有線LANについては、Amazon などでUSB接続のLANアダプタが売られているので、それらを使って対応したい。
モニターとサウンド
本機はモニターのアスペクト比(縦横比)が一般的な 16:9 ではなく、3:2 になっている。
他のノートパソコンよりも縦幅が長い。
16:9 は映画のスクリーンの比率で、人間が見やすいサイズと言われているが、パソコンで作業するには横長すぎる。
そのため 16:10 や 3:2(16:10.66)の画面を持つノートパソコンが海外で増えており、本機もその一つ。
解像度は 1920x1280 だ。(一般の解像度は 1920x1080)
作業性を重視した縦横比 3:2 の画面
○○型や○○インチは対角線の長さを示す
左右の枠幅は4.5mmでかなり小さい
カメラには盗撮防止板が付いている
実際、サイトや書類は縦長なので、3:2 の方が作業しやすい。
また、画面が大きく感じるため、13.5型でありながら14型のような使用感を受ける。
画質は肉眼での評価だが、かなり良い印象だ。
発色と視野角に優れる を使用しており、色鮮やかで、少し横から見ても劣化はない。
最大輝度(明るさ)も十分だ。
ビジネスモデルには珍しく
使用スタイルに動画視聴向けや作画向けの形態があるため、発色を重視したのだと思われる。
カメラは一般的な約100万画素(720p)だが、
プライバシーシャッターは単なる遮蔽板だが、これ以上信頼できる盗撮防止装置もない。
顔認証はマスクを外さないといけない欠点はあるが、手軽でセキュリティ的にも安心だ。
マイクは2つ付いており、広範囲を集音するワイドレンジマイクで、ノイズリダクション(雑音軽減機能)も付いている。
特筆すべきはスピーカーで、世界的な音響機器メーカー Bang & Olufsen(バング&オルフセン)のスピーカーが、なんと4つも付いている。
底の左右に2つ、キーボードの左右に2つあり、実際に多方向感のあるサウンドを出してくれる。
法人向けモデルなのに 4ch スピーカー
反響音を重視する B&O らしい
動画スタイルだとスピーカーは画面下に
より良い音を聞ける形を追求している
日本のビジネスノートでサウンドを重視しているものはないので異色だが、コロナ禍の前からWeb会議が一般的だったアメリカでは相手の声をよく聞き取れるように、ビジネスノートでも良いスピーカーが使われる。
本機はさらに映画視聴なども考慮に入れているため、音響にはかなり力が入っているようだ。
キーボードとタッチペン
キーは真四角に近く、スタイリッシュなデザイン。
表面が少し凹んでいる「シリンドリカル キートップ」になっており、指にフィットしやすい。
テンキーはないが、キーピッチ(間隔)は一般的なキーボードと同じ約19mmで、違和感のないタイピングをすることができた。
バックライトも装備されており、暗所でも作業しやすい。
キーストローク(深さ)は約1.4mmほどで、それほど深くはないが、かなり強めの反発があり、ポチポチというボタンを押すような感触がある。
タイプ感が良く、指に来る衝撃も少ないが、人によっては固く感じるかもしれない。
静音キータッチだが、それなりにトントンという音はする。
一時的にキーボードをOFFにして掃除ができる HP Easy Clean を搭載
キーボードバックライトも完備
手の跡が付きにくい仕上げになっている
キー配置は標準的だが、PrintScreen キーがなく、FN+右シフトになっている。
また、電源ボタンも一番右上ではなく、そのひとつ内側、Delete キーの左にある。
マイクロソフトの Surface も電源がこの位置だが…… 押しミスを防ぐためなのだろうか?
タッチパッドは少ししっとりした触れ心地で、感触が良い。
本体のサイズに対して大きめのタッチパッドで、操作感は良好だ。
電源ボタンと PrintScreen の位置は注意
カーソルキーは縦1行分
本機はタッチパネルを搭載しているが
タッチパッドの使い心地も良い
そして一番の特徴は、キーボードの上部に収納されている専用タッチペン。
「 」と呼称されており、マグネットで収納部に自然と密着し、収納中に充電が行われるためバッテリーも安心。
私は絵心がないので描き心地の判別はできないが、4096段階の筆圧感知を持ち、文字はとても滑らかに書くことができた。
また、ペンにはホワイトボードを起動するボタンが付いていて、すぐ手書きモードに入ることができる。
ただ、(ARM版Windows11が公開されるまでは)動かせるソフトが少ないため、イラスト制作などには向かないだろう。
ペンが別売りじゃないのは嬉しい
収納部に磁石でパチッとくっつく
書類などに注釈を入れることも可能
もちろんタッチ操作に使うこともできる
パーツ性能
処理性能(CPU / SoC)
冒頭から何度も述べているが、HP Elite Folio には一般的なパソコンの CPU ではなく、スマホ用 CPU の亜種が搭載されている。
米クアルコム社の「 」だ。
ARMプロセッサと呼ばれる、ARM社の設計(アーキテクチャ)を利用した製品。
Snapdragon は Android スマートフォンによく使われており、正確には CPU(処理装置)に、グラフィックやサウンド、通信制御など、動作に必要な機能を一通り盛り込んだ
(システム オン チップ)と呼ばれるものだ。Snapdragon 8cx の登場は2018年で、スマホ用の Snapdragon 855 をパソコン用に改修。
常時電源オンと常時接続を前提とする新機軸のノートパソコン用 SoC として注目されていた。
それを2020年、最新通信技術の 5G や Wi-Fi 6 に対応させたのが Snapdragon 8cx Gen2 だ。
以下はARMプロセッサにも対応しているベンチマーク(性能測定)ソフト Geekbench 5 の結果と、他のノートPC用 CPU / SoC との比較だ。
・マルチコア性能(Geekbench 5)
Core i7-1165G7:4500
Core i5-1135G7:4200
Core i7-1065G7:3200
HP Elite Folio (Snapdragon 8cx Gen2) 3150
Surface Pro X (Snapdragon 8cx 系) 3050
Core i5-1035G4:2800
Core i3-1115G4:2500
Core i5-10210U:2400
Core i3-1005G1:2000
Core M3-8100Y:1300
Celeron N4100:1300
・シングルコア性能(Geekbench 5)
Core i7-1165G7:1400
Core i5-1135G7:1300
Core i7-1065G7:1150
Core i5-1035G4:1100
Core i3-1115G4:1100
Core i3-1005G1:1050
HP Elite Folio (Snapdragon 8cx Gen2) 800
Core i5-10210U:800
Surface Pro X (Snapdragon 8cx 系) 750
Core M3-8100Y:700
Celeron N4100:380
マルチコア性能は多くの作業を同時に処理する速度、シングルコア性能は単一の作業の速度だ。
ただ、Office などの大手ソフトは作業の分散に対応しており、両方が影響する。
Snapdragon 8cx は性能の異なる2つのコアを4つずつ積んだ、複合8コアの構成。
ともあれ8コアあるので、他のノートパソコン用 CPU と比較すると、マルチコアの性能では割と健闘している。
Core i7 には及ばないが、ノートPC用 Core i5 ぐらいの速度はある。
しかしシングルコアの性能は Core i3 程度しかない。
総合して考えると処理性能は高い方ではなく、ノートパソコンとしてはコストパフォーマンス(費用対性能)は正直、低い。
ただ、本機はファンレス(送風機なし、無音)である。
他のファンレス機は Celeron などの下位の CPU か、超低電圧 CPU(型番に U や Y を含む)が使われていることが多く、それらと比べると明らかに性能上位だ。
「ファンレス機としては」現行最上級の性能だと思って間違いない。
本機はそこに、どれだけの価値を見出せるかで評価が分かれるだろう。
SoC である Snapdragon 8cx Gen2 はグラフィック機能も含んでいる。
ただ、CPU や SoC に内蔵されたグラフィック機能の性能は、それほど高くはない。
以下は 3D Mark: Night Raid(SoC用に追加された性能テスト)で測定してみた、本機の3D描画性能と、他のノートPC用CPUの内蔵グラフィック機能との比較だ。
・グラフィック性能(3D Mark: Night Raid)
Core i7-1165G7 (Iris Xe) : 15000
Ryzen 5 4500U (AMD Radeon) : 10500
Core i7-1065G7 (Iris Plus) : 10000
Ryzen 3 4300U (AMD Radeon) : 9800
Core i5-1035G4 (Iris Plus) : 8000
Core i3-1115G4 (Intel UHD) : 7500
Snapdragon 8cx Gen2 (Adreno 690) : 7400
Core i3-1005G1 (Intel UHD) : 4350
Celeron N4100 (UHD 600) : 1400
一番上の Iris Xe はゲームもできると評判の高性能内蔵グラフィック機能なので別格として、他と比べると大きな差はない印象だ。
PC 用としては高性能ではないが、ファンレス、つまり冷却なしでこのレベルの性能を出しているのは、さすが元がスマホ用 SoC といったところか。
とは言え、ゲームをやるようなパソコンではないし、どのみち ARM版Windows11 が公開されないと動くゲームは少ない。
動画の再生や一般作業の補助としては問題ない能力であり、軽いものなら3D描画のある設計ソフトも扱えるだろう。
ストレージとメモリ
本機には「
小型の最新 SSD で、従来型よりも動作が大幅に速い。
しかし高熱を発するため、本機のような冷却できないファンレス機に搭載するのは無理がある。
が、搭載されている……
ともあれ、以下はその SSD の速度計測結果である。
読み込みは 3100MB/s と NVMe SSD らしい高速が出ているが、書き込みは 1100 MB/s と控えめだ。
また、小さなバラバラのデータを処理するランダムアクセス(3段目)は 34 とか 67 とか、NVMe SSD とは思えないほど低い数値となっている。
ここは従来型(SATA接続)の SSD でも 100MB/s 前後はあるものだ。
HDD だと 0.5 とか 1 とかなので、それよりは良いのだが……
調べてみたところ、今回の試用機には Western Digital 社の こちら の製品が使われていた。
この製品は公称では読み込み 3400MB/s、書き込みも 2700MB/s 出るとされている。
よって発熱を抑えるため、パワーをセーブして使っているのだと思われる。
それでも従来の SSD だと 500MB/s、HDD は 150MB/s 程なので、比較すればかなり高速。
また、スマホや多くのファンレス機では eMMC という低発熱/低消費電力の記録装置が使われていて、これは 200~300 MB/s、ランダムアクセスも 50 前後なので、これと比べても速い。
つまり SSD の速度も処理性能やグラフィック性能と同じく、ノートPCとしては控えめだが、ファンレス機としては高いレベルと言える。
なお、メモリは
8GB と 16GB の機種があるが、8GB機でも4GBが2本の構成で、2つのメモリにデータを分散して高速化するデュアルチャネルで動作している。
この部分に不足な点はない。
総評
この製品は、これから発達して行くであろう新ジャンルのパソコンの先駆けと言える。
Windows なのに使えるソフトが少ないとか、費用対性能が低いとか、従来のパソコンの感覚だと欠点が目立つのだが、スタンバイからの即時起動と常時接続、ファンレスによる無音の動作には、既存のパソコンでは解決困難な課題を克服できる将来性を感じる。
そして本機は、その魅力を精一杯引き出そうと、色々と工夫しているのが見て取れる。
今回触ってみて、どうして HP やマイクロソフトといった超大手のメーカーが、苦労しながらわざわざ ARM プロセッサのパソコンを作っているのか理解できた。
ただ、本製品に関して言うと、もうちょっと軽ければ…… というのも本音だ。
このマシンは軽いほど便利な印象で、サイズもちょっと大きい気がする。
また、本領発揮は ARM版Windows11 が公開されてからだろう。
それでもユニークで、パソコンの新しいスタイルを模索している HP らしい製品だ。
自分の活用スタイルに合うと思った方には、唯一無二のツールになるだろう。
形式:13.5インチ ノートパソコン
CPU:Snapdragon 8cx Gen2(ARMプロセッサ)
グラフィックス:CPU(SoC)内蔵
メモリ:8GB / 16GB(LPDDR4x)
ストレージ:256 / 512 GB NVMe SSD
モニター:解像度1920x1280、縦横比 3:2
通信:5G、Wi-Fi 6、Bluetooth 5
モバイル性能:1.33kg、バッテリー公称21.1時間、顔認証、スリープからの即時起動、スリープ中の接続維持、ファンレス
OS:ARM版Windows10
その他:ARM版Windows10 は 64bit アプリ動作不可
価格:税込209,000円(メモリ8GB / SSD256GB 時)
※詳細は日本HP公式サイト(法人)をご覧下さい。
※本機は法人向けモデルですが、購入は個人でも行えます。
※本機は ARM版Windows で動作しています。
※仕様・価格は時期により変わる可能性があります。
執筆:2021年12月12日