- マウスコンピューターの小型デスクトップのゲーミングモデル
- 手ごろなサイズで堅牢性に優れたケースに、デスクトップらしい高性能を搭載
- 試用機は第12世代 Core i5+GeForce 3060 でゲーム的コストパフォーマンス優秀
こんな人にオススメ!
- 最新ゲームが遊べる高すぎないパソコンが欲しい方
- 信頼性のあるゲーミングモデルが欲しい方
- 初めてゲーミングPCを買うという方
G-Tune HM-B(第12世代 Core i5)
このレビューは実機の貸出を受けて作成しており、リンクにはアフィリエイトが含まれています。
レビューは公正に、忖度なく行っております。
すべてがちょうど良い
マウスコンピューターのゲーミングパソコン G-Tune のデスクトップモデルには、4つのタイプがある。
小型のハンドル付きミニタワー、やや小型のミニタワー、ハイスペックなミドルタワー、大型で高級モデルのフルタワーである。
これらは大きさだけでなく、見た目や構造も異なっており、それぞれがマウスらしいこだわりの設計となっている。
市販の汎用ケースにパーツを詰め込んだだけではない。
今回はそのうち「ミニタワー」の2022年モデルをレビューしたい。
「G-Tune HM-B」だ。
検証機は Core i5-12400F の CPU と、GeForce RTX 3060 のビデオカードを搭載する。
どちらも中クラスだが、CPU は最新の第12世代 Core であり、ビデオカードも価格と性能のバランスの良い、今一番人気のタイプ。
定価は(8月時点で)税込199,800円で、パソコンの価格が高騰を続ける中、手が届きやすい価格帯のゲーミングモデルだ。
そしてゲームPCとしては小振りの本体は、堅牢で耐震、前面に映像出力端子があったり、ケースファンが最小限になっているなど、ユニークかつ信頼性のある作りとなっている。
先に結論を述べると、サイズ・外観・耐用・価格・性能、全てにおいて過不足ないゲーミングPCと言える。
以下、本機の詳細をレビューしていきたい。
ケースと外観
デザインと外装
本機は外装から特徴的で、デザインも G-Tune らしいシャープな見た目。
黒いボックス型のパソコンで、それほど奇抜ではないが、前面の角がナナメにカットされており、G-Tune のロゴや開口部がアクセントになっている。
LED ライトのような光る装飾はないが、上部には光沢があり、ロゴもお洒落で高級感がある。
側面パネルにも凹凸加工によるロゴや、デザイン化された通気口がある。
なお、側面パネルは中の見えるガラスパネルにして貰うことも可能だ(+5000円)。
光らないが装飾は多いケース
右側面の六角模様は通気口になっている
電源ボタンはデータ読込時に点滅する
前面端子の周辺には光沢が
上部には USB やイヤホンの端子が並んでいるが、前面に HDMI 端子もあるのが特徴だ。
これは以前に行われたユーザーアンケートに応えて用意されるようになったもので、VRゴーグルやサブモニターを簡単に繋げることができる。
これを利用するには背部にある HDMI ケーブルをビデオカードの HDMI 端子にさしておかなければならないが、このケーブルは不要なときには本体内に収納できる。
HDMI を多用する人には嬉しい構造だ。
ただ、ビデオカードの HDMI 端子は1つだけなので、他のモニターは Display Port ケーブルで繋げる必要がある。
背面にはUSB-Cを含む、計5つのUSB
ビデオカードは4画面出力対応
このように前面HDMI端子に繋がるケーブルをビデオカードのHDMIに差す
さらに本体の「底」に特徴がある。
詳しくは内部構造で述べるが、本機は標準の構成だと底から吸気を行う。
そのため高めの足で本体を持ち上げているのだが、単なるゴム足ではなく、インシュレーターと呼ばれる振動軽減用のパーツが使われている。
オーディオ機器で多用されるものだが、振動はパソコンの故障原因になることもある。
信頼性を重視するマウスコンピューターらしい設計だ。
また、底にはホコリを吸い込むのを防ぐ網が付いているが、マグネットで張り付いているので簡単に外して掃除することができる。
側面パネルも外しやすくなっており、メンテナンス性が高い。
なお、底から吸気するパソコンは、その妨げになるので絨毯の上などには置かない方が良い。
(底面吸気でない場合でも熱がこもるので絨毯やラグの上は避けるべき)
もし置かざるを得ないときは、板などを敷いておくのをお勧めする。
振動抑制インシュレーターで故障を防止し、振動音も減らしている
底のメッシュはぺラッと外せ、水洗いでき、ピタッと貼れる
サイズはおよそ幅19cm、高さ39.5cm、奥行き39cm。
前述したようにゲーミングモデルとしては小さめで、ドスパラの中型デスクトップと比べても幅と高さが3cm短い。
一方で、全体が厚めのスチールで構成されており、小型の割にはやや重いが、かなりしっかりした作りになっている。
最近は除外されがちな DVD/Blu-ray ドライブはオプションで装備可能。
有線LAN端子は一般的な 1000BASE-T だが、本機は Wi-Fi 6 と Bluetooth 受信機を内蔵しており、そのまま無線通信が可能だ。
内部構造
(標準構成の)本機の内部は、ゲーミングモデルとは思えない構造をしている。
なんと前面ファンがない。
多くのデスクトップパソコンは前面からファンによる吸気を行い、内部の空冷を行うが、本機のケースファンは背部に排気用が1つあるだけ。
吸気は主に、底面からの自然吸気のみだ。
※公式のエアフロー解説画像。側面からの吸気は本機の場合、マザーボードの冷却用だろう。
高負荷を長時間かけ続けることが多いゲーミングモデルは冷却が重視されるため、これで効果的に冷やせるのかと心配になるが、マウスコンピューターは温度テストや長時間駆動テストなどを専用の試験室でしっかり行っている。
本機で使用する CPU とビデオカードなら、これでも大丈夫だという結論に達したのだろう。
確かに冷却に問題がないなら、ファンは少ない方が騒音を抑えられる。
底面吸気がメインなら、前面ファンがあると気流が乱れる可能性もある。
一応、前面には2つの吸気ファンを取り付けることが可能で、そのためのネジ穴や通気口も用意されている。
冷却を重視をしたい方はカスタマイズで追加して貰っても良いだろう(+3000円)。
側面パネルを強化ガラスにしたり、水冷クーラーを装着する場合は、前面ファンは必須となる。
内部の様子は以下の通りだ。
特注の小型マザーボードを下部に装備
CPU周辺。電源が天井排気も兼ねる
電源ユニットは上部に配置されており、下から吸気を行っている。
ケース内の空気を吸うため電源の冷却力は下がるが、その吸排気を内部のエアフロー(通気)に活用できる形だ。
コードの多くは裏側に回されていて、中はかなりすっきりしている。
このケースには裏面配線用のダクトもあり、より内部が整っている。
また、ちょっとしたことだが、ビデオカードの電源ケーブルに「6+2pin」というコネクタの種類を示すシールが貼ってあり、親切に感じた。(工場でのミス防止かもしれないが)
前面上部にはHDDを収納できる3.5インチのストレージベイが1つある。
また、少しわかり辛いが、その真下にSSDを2つネジ止め出来るようになっていて、仕様書に書かれている2.5インチベイx2はそれのことのようだ。
ともあれ、HDD1つ、SSD2つを装着でき、NVMe SSD を付けられるM.2スロットも1つ空いているので、ストレージの増設スペースは十分。
2つ目のNVMe SSDと増設HDDは購入時に付けて貰うこともできる。
前面の様子。必要ならファンを装着可能
水冷時のラジエーターもここに付く
ビデオカード下に PCIe x1 があるが、小型ケースなのでスペースは狭い
空きの拡張スロット(PCI Express スロット)は、ビデオカード直下のものを除くと PCIe x1 が1つしかない。
また、ビデオカードの吸気が底からなので、拡張カードを付けるとその妨げとなる。
PCIe の拡張カードを使いたい方は、もっと大型のモデルを選ぶべきだろう。
メモリスロットも2本しかないが、標準構成で 16GB(8GBx2)あるため不足はない。
価格は高くなるが 32GB、64GB の構成にすることもできる。
電源は標準構成だと 700W で 80PLUS BRONZE の製品が使われている。
構成を考えると余裕があるが、+4000円で安定性や省エネ性能に勝る 80PLUS GOLD の製品にできる。
標準のもので良いと思うが、電源は故障原因になりやすく、高品質なら安心感がある。
もし新型ビデオカードへの交換を考慮している人は、出力は少し多めにしておこう。
パーツ性能
処理性能(CPU)
G-Tune HM シリーズには Core i5 と Core i7 を搭載したものがある。
今回の検証機には最新型である第12世代 Core の「Core i5-12400F」が搭載されていた。
「F」は内蔵グラフィック機能が省かれているCPUで、本機はビデオカードを別途搭載しているため、それで問題ない。
第12世代 Core は性能重視のPコアと、省電力重視のEコアの複合構成になっているものが多いが、Core i5-12400 は従来のCPUと同じ、Pコアのみの構成だ。
6つのコアで12の作業を同時に行える「6コア12スレッド」のCPUである。
TDP(消費電力と発熱の目安)は 65W。
キャッシュ(CPU内のデータ置き場)は 18MB で、第12世代の Core i7(25MB)よりは少ないが、第11世代の Core i5(12MB)や Core i7(16MB)より多い。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト Cinebench R23 の測定結果と、主流のデスクトップ用CPUとの比較だ。
Core i5-12400F 測定結果
動作速度の再現
・マルチコア性能(CINEBENCH R23、定格動作)
Core i7-12700K:22000
Core i7-12700:14000
Ryzen 7 5700G:13800
Core i7-11700K:13500
Core i5-12400:11700
Ryzen 5 5600G:10500
Core i7-11700:9200
Core i7-10700:9000
Core i5-11400:8000
Core i5-10400:7600
Core i3-10100:5500
・シングルコア性能(CINEBENCH R23)
Core i7-12700K:1900
Core i7-12700:1850
Core i5-12400:1700
Core i7-11700K:1550
Core i7-11700:1520
Ryzen 7 5700G:1500
Ryzen 5 5600G:1450
Core i5-11400:1400
Core i7-10700:1250
Core i5-10400:1150
Core i3-10100:1150
第12世代 Core でありながら複合のコア構成ではなく、コア数が少なめのため、マルチコア性能は第12世代としては低め。
それでもスコアは11000を越えており、十分に高性能だ。
Office や Photoshop などのマルチコアに最適化されたソフトウェアを快適に動かせる。
そしてシングルコア性能はやはり素晴らしく、約1700という高いスコアが出ている。
ゲームなどの一般のソフトウェアに影響するのはシングルコアの方なので、「Core i5 はゲームで高いコストパフォーマンスを発揮する」という通説は第12世代 Core になっても変わらない。
明らかに第11世代の Core i7 より優れており、非複合構成の Core i5 でも、それを感じさせない第12世代らしい高性能と言える。
なお、やや余談だが……
本機のマザーボードには「Base Frequency Boost」という、K付きのCPUでなくても投入電力を変えてオーバークロックできる機能が備わっている。
しかし Core i5-12400F は素の状態(65W)で上限に近い性能を発揮しており(6コア時で3.8GHz、上限は4GHz)、大した性能アップはできなかった。
さすがに上限アップはマニア向けのK付きCPUでなければ行えない。
一応、73Wで4GHzの上限になるので、75Wの設定にすればちょこっと性能アップにはなる。
(Delete を連打しながら起動して BIOS を表示し、Advanced タブの中にある OC Tweaker の Base Frequency Boost を Auto から 75W に変えて Save & Exit する)
高負荷時のCPU温度が70度から75度前後に上がるが、まだ余裕がある。
ただし、シングルコア性能は素の状態で上限(4.4GHz)なので変化はない。
なお、オーバークロックはメーカーの保証外であり、自己責任の行為なので悪しからず。
グラフィック性能
G-Tune HM シリーズはビデオカードに GeForce RTX 3060 か 3060Ti を搭載する。
(下位の GeForce GTX 1650、上位の RTX 3070 を搭載するモデルも一部ある)
今回の検証機は現在もっとも一般的と言える GeForce RTX 3060 を備えていた。
価格と性能のバランスが良い、定番と言える製品だ。
VGA(ビデオメモリ)は多めの 12GB(GDDR6)を積んでいる。
そのベンチマーク(性能測定)結果と、各ビデオカードのグラフィックスコアの比較グラフは以下の通りだ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
・3D Mark: TimeSpy(デスクトップ用)
GeForce RTX 3080:17000
GeForce RTX 3070:13500
GeForce RTX 3060Ti:11500
GeForce RTX 3060:8700
GeForce GTX 3050:6000
GeForce GTX 1660 SUPER:6000
GeForce GTX 1650:3600
Iris Xe(CPU内蔵、12世代):1700
Iris Xe(CPU内蔵、11世代):1400
GeForce RTX 3060 が人気なのは、現行のゲームはこれで十分快適に動くからでもある。
人気ゲームの「Apex Legends」は 140fps(秒間140コマ)、「Fortnite」は 105fps で動作するとの評価。
「ファイナルファンタジー15」のベンチマークは高画質でスコア8800の「快適」評価が出る。
高解像度の 2560x1440 でもスコア6600で快適、4K画質の 3840x2160 でもスコア3800の「普通」動作となる。
「モンスターハンターライズ」も高画質で100~140fps、平均110fpsで快適に遊べる。
(一般的に 30fps あればプレイ可能で、60fps あれば快適と言える)
FF15が快適なら 現行のゲームはほぼ快適
モンハンライズは3060で100fps越える
動画配信や生実況を考えていたり、165Hz や 200Hz のゲーミングモニターをフル活用したいという場合はもっと上位のビデオカードが欲しいが、そうでないなら十分な性能と言えるだろう。
ストレージとメモリ(記録装置)
本機のメインストレージには「NVMe SSD」が使用されている。
従来の SSD より大幅に速いスティック型の SSD で、昨今はこれがデータ記録装置の標準だ。
第3世代と第4世代の PCIe(データ転送規格)に対応したものがあるが、本機の標準搭載のものは第3世代(Gen3)。
第4世代より速度に劣るが、そのぶん価格は安い。
また、用途にもよるが、ゲームなどの一般用途ではそれほど差は出ない。
容量は 512GB だが、2TB の大容量に変えてもらうことも可能。
高速な第4世代(Gen4)の製品にしたり、2本目の NVMe SSD を追加することも可能だ。
もちろん、そのぶんお値段は高くなるが。
本機はさらに、HDD の追加もカスタマイズで可能。
以下は検証機に搭載されていた NVMe SSD の性能測定結果だ。
標準設定で測定
NVMe SSD 設定で測定
米Kingston社の製品が使われており、読み込み速度 2500 MB/s、書き込みは 1200 MB/s となっている。
読み込みはともかく、書き込みは NVMe SSD としては遅め。
ただ、ランダムアクセス(3段目、バラバラの小さなデータの処理)は悪くなく、特に NVMe SSD 用測定(同時処理あり)だと読み書き共に 1000 MB/s という高い速度が出ている。
実際の使用感、そしてゲームプレイ時に影響しやすいのはこちらの方なので、やや得手不得手はあるが、ゲーミングモデルの NVMe SSD としては悪くない印象だ。
メモリは現在の主流である DDR4-3200 が使われている。
新型の DDR5 ではないが、ゲームで DDR5 の恩恵を得られるものは少なく、価格もまだ高い。
ゲーミングモデルとしてはこちらの方が一般的だろう。
容量は 16GB で、8GB のメモリを2本使い、データを分散して高速化するデュアルチャネルで動作している。
これで特に問題はないが、動画や画像の編集を考えている人、長時間使用時の安定性を重視したい人は 32GB に増量しても良いだろう。
本機は 64GB までのカスタマイズに対応している。
総評
マウスコンピューターらしい、しっかりした作りのゲーミングモデルという印象だ。
スチールケースの耐久性、高めのインシュレーターによる振動対策を持ち、メンテナンスも考慮されている。
前面に HDMI 端子を備えるための工夫もユニークだ。
第12世代 Core i5 の性能は思っていた以上で、ゲームメインで考えるなら Core i7 でなくても良い印象。
Core i5 + GeForce 3060 はミドルクラスのゲーミングモデルとしては今でも定番だ。
このパーツ構成と拡張性で良いなら、もっと小型のハンドル付きミニタワーという選択肢もあるのだが、こちらの方が NVMe SSD(M.2スロット)が多い。
前面 HDMI 端子の有無や耐震性、デザインの違いなどもある。
コストパフォーマンスと信頼性に優れたゲーミングPCとして、有力な候補となるマシンだ。
・G-Tune HM-B
※2022年、第12世代 Core i5 モデル
ケース:ミニタワー
CPU::Core i5-12400F(第12世代、6コア)
グラフィックス:GeForce RTX 3060 12GB
メモリ:16GB(8GBx2、DDR4-3200)
ストレージ:512GB NVMe SSD(第3世代)
その他:前面HDMI端子、Wi-Fi 6内蔵、NVMe SSD 2本目追加可
価格:税込199,800円
※詳細はマウスコンピューター公式サイトをご覧下さい。
※同名の第11世代 Core の製品もまだ売られているので注意して下さい。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2022年8月4日