- 2020年夏に登場したドスパラの15.6型ゲーミングノートPC
- 高い処理能力とゲーミング性能、携帯性を兼ね備える万能機
- ゲーミングノートとしては軽くて薄くて長時間駆動
こんな人にオススメ!
- 重量級すぎないゲーミングノートが欲しい方に
- 普段使いができて必要な時はゲームもできる両用ノートPCを望んでいる方に
- 大きめで扱いやすいノートパソコンが欲しい人に
レビューは公正に、忖度なく行っております。
ゲーム、だけじゃないノート
2020年にリニューアルされたドスパラ「ガレリア」のゲーミングノートは高級モデル、中間モデル、廉価モデルに分かれている。
その廉価モデルにRyzenのCPUと、中間型のビデオカードを搭載した、いかにもコストパフォーマンスを重視したゲーミングノートPCが「GALLERIA GR2060RGF-T」だ。
コストパフォーマンス重視と言うと「安かろう悪かろう」に聞こえるかもしれない。
だが、このパソコンは多用途可能な性能と特徴を備えている。
最新上位型の Ryzen 7 による高い処理能力と公称8時間以上のバッテリー、さらに省電力モードを持ち、作業を長く快適に行える。
厚さ2cm、2kgを切る重量は、ゲーミングノートとしてはかなり軽くて薄い。
それでいて、最新のPCゲームを遜色なくプレイできるグラフィック性能(RTX2060)を持つ。
つまり、このパソコンは万能なのだ。
おまけに税込129,778円(税別 117,980円)と、ゲーミングノートしてはかなり安い。
※半導体価格の高騰により、2021年6月時点で税込139,980円になっています。
高いレベルでバランスを取っているのが最大の特徴だろう。
先に総評を言ってしまうと、最新ゲームもできる多用途ノートという印象だ。
では、以下で実機の特徴を紹介していこう。
外観
デザインと重さ
キーボードも天板もメタリックなデザインだ。
ゲーミングモデル特有の派手さはなく、黒と濃い目のグレーの落ち着いた配色。
天板には鷹の描かれた紋章と「GALLERIA」の表記があり、ここはゲーミングモデルらしいが、全体的にシックな見た目。
ブラックとシルバーの本体
天板にはガレリアのロゴが
15.6インチのモデルであるためノートとしては大きめで、モバイルノートといった感じではないが、1.9kgの本体は持つのに苦労がなく、ゲーミングノートでありながら手軽に運べる。
ビデオカードを内蔵しているため極薄ではないが、かと言って厚くもなく、閉じている状態で高さは最大約2cm。
ゲーミングでありながらノートらしい機能性を持つ。
側面の端子は青のUSB(3.0)が2つ、白(2.0)が1つ、USB Type-C が1つ。
他に HDMI、Mini Display の映像端子とカードリーダー、イヤホンジャックを備え、不足のない組み合わせだ。
モニター
画面には120Hzの高リフレッシュレート液晶モニターが使われている。
これは「毎秒120回の画面の描き換え」に対応しているということ。
この数値が大きいほど動きが滑らかになる。
一般的なモニターは60Hzで、10年ほど前まではこれ以上の描画速度があっても人間には区別できないと言われていた。
しかし実際には、60Hzと120Hzでは動きの滑らかさが、はっきりと異なる。
FPSのような動きの激しいゲームほど顕著だ。
上位モデルは144Hzの駆動速度を持ち、それ以上の速度のモニターもあるが、そこまで必要かどうかはプレイするゲームと「使用者」による。
120Hz以上になると違いを認識できなくなる人も多いからだ。
また、あまり動きの激しくないゲームなら60Hzでも問題はない。
「ゲーミングモデル」ならできるだけ高いリフレッシュレートを持つのが理想だが、120Hzなら一般的には十分だろう。
発色なども含め、ゲーミングモデルのモニターとしては標準クラスと言える。
ツヤ消し高速駆動のモニタ
明るさは給電状態に応じて自動調整
外枠が小さいのは最近のノートの常識
狭額ベゼルであることも特徴のひとつだ。
ベゼルとはモニターの周囲の枠のことで、つまり画面の外枠が小さい。
これにより15.6インチのモニターを持つが、一昔前の14インチほどの本体サイズになっている。
狭額ベゼル自体は近年のノートパソコンでは一般化しているが、ガレリアのノートも他社に負けず、コンパクト化と軽量化が進んでいるのがわかる。
キーボード
標準的なメンブレン式(内部がゴム)のキーボードが使われているが、適度な反発と感触、押し込みの深さがあり、打鍵感はとても良い。
やや大きめのノートパソコンであるため、キーボードの広さ、キーの間隔と大きさは十分にあり、テンキーも備わっていて不足はないだろう。
近未来感のあるキーの印字も良い。
ただ、エンターキーが小さめで1行分しかない。
2行分のエンターキーに慣れている人だと、使い始めはミスが多発するかもしれない。
というか、私が多発している。 使っているうちに慣れるとは思うが……
一方、カーソルキーは2行分あるが、配置が変則的。
カーソルキー優先なのは、ゲーミングモデルらしいところではある。
ポチポチ感のある四角いキーは打鍵感良好
エンター、カギカッコ、カーソルキーの配置が独特
ゲーミングモデルらしく、キーボードを好きな色に光らせることができる。
ON/OFF の切替えも簡単で(FN+ファンクションキー)、気分に合わせて装飾できる。
また、色や光り方は付属のソフトウェアで自由にカスタマイズ可能だ。
パーツ性能
バッテリー
このモデルには3つの電力モードが用意されている。
省電力でバッテリーを長持ちさせる「オフィスモード」、全力で動作する「ターボモード」、状況に応じてパワーを調整する「ゲーミングモード」だ。
最大の特徴は、ゲーミングモデルでありながらオフィスモードによって長時間駆動が可能なことだろう。
公称8.8時間のバッテリー持続時間は、おそらくオフィスモードでの測定だと思われる。
外出時はパワーを抑えて省エネに
ボタンひとつで切替え可能
ランプでモードの判別もできる
この駆動時間なら、出先で長時間の作業をしたいときでも問題ない。
さすがに非充電状態で高負荷なゲームをすると、モードに関わらずバッテリーは大きく消耗していくが、多用途に向いた省電力モードが用意されているのは嬉しいところだ。
また、オフィスモードはファンの速度を制限できる。
ハイパワーで動かすとファンの音が結構うるさいが、それが困る場面では性能と吸気音を抑えて使うことができる。
電源につなげて使用するときはターボモードにして、フルパワーを出せるようにしておこう。
ゲーミングモードはバッテリー駆動(非給電時)にゲームをやるとき、動作速度と省電力を両立させるモードのようだ。
(よってパワーはターボより控えめになる)
動作モードの切り替えはキーボードの上部にある物理ボタンでいつでも行え、再起動などは必要ない。
この切り替えの手軽さも、このマシンのウリと言える。
処理性能(CPU)
このモデルの特徴の一つが、CPUにAMD社の「Ryzen」を使っていること。
Intel社の「Core」シリーズの方が実績があり、AMD社のCPUは安価だがカタログ通りの性能を発揮できないことが多く、苦戦が続いてきた。
だが、数年前からIntel社のCPUは供給不足が続いており、一方でAMDはこれまでの下馬評を一新する新製品「Ryzen」を発表、シェアを拡大している。
このパソコンに搭載されている「Ryzen 7 4800H」は、一般向けの上位型CPU「Ryzen 7」の最新ノート用。
型番は「4800」だが第三世代のRyzenで、登場は2020年春。
「H」は省電力より性能を重視したタイプを意味する。
簡単に言うと、高すぎないノート向けCPUの中では現時点の最高クラスである。
クロック数(速度の目安)は2.9GHz、最大4.2GHz。
RyzenはCoreシリーズと比べると、同時作業数(マルチスレッド)に強い。
このCPUは「8コア16スレッド」で、8つの頭脳で16の作業を同時に行え、分散作業に対応しているソフトは大幅に早くなる。
そして、同格のライバル製品より価格が安い。
Coreに最適化されているパーツやソフトウェアが多いため、その点では不利があるが、コストパフォーマンスは間違いなくCoreに勝る。
(とは言え、Ryzenの高評価に伴って市場価格が上がり、最近は価格差は少なくなっているが)
ともあれ、パソコンに詳しくない方は細かいことは気にしなくてよい。
高性能な新型CPUが搭載されていると思っておけば良いだろう。
今はAMDのCPUも安定した性能を出すようになっており、性能不足を感じることはないはずだ。
以下はCPUの測定測定ソフト「CINEBENCH R23」の結果だ。
オフィスモード時
ターボモード時
マルチスレッド(同時並行作業)でターボモードは11057。
パワーを抑えるオフィスモードだとスコア9756、ゲーミングモードは中間の10359となった。
これはデスクトップ用の第9世代 Core の上位型(Core i7-9700K、スコア9500)や、第10世代 Core のノート用上位型(Core i7-10850H、スコア8000)を大きく超える数値だ。
シングルスレッド(作業を1つだけ行う速度)のスコアは動作モードに関わらず1250ほど。
先に挙げたライバルCPUも1200ぐらいで、こちらに大差はなく、つまりシングルスレッドでも劣っていない。
ベンチマークだけで評価は決められないが、どれだけ高性能かわかるだろう。
なお、このパソコンには電源接続時のターボモードでのみ使える「CPU PowerBoost」という機能がある。
ドスパラ独自のオーバークロック(性能引き上げ)機能と思われ、使ってみるとスコアが11608、通常のターボモードよりさらに600アップした。
これはCPUが一段階アップしたぐらいの差で、Ryzen 7 4800H が、Ryzen 7 4900H になったほどの違いがある。予想以上に高い。
動作モードは実質、3段階以上あると思っても良いだろう。
グラフィック性能(VGA)
搭載されているビデオカード(グラフィック用パーツ)は「GeForce RTX 2060」のノート用。
2020年の春ごろから普及し始めた製品で、ノート用としては新型、その中間モデルだ。(他に 2070 と 2080 がある)
安いゲーミングノートには一世代前の GeForce GTX 1650 や GTX 1660Ti が使われていることが多いが、このパソコンは廉価モデルとは言え、そこまで下位ではない。
一般的にAMDのCPUには、AMDのビデオカード(RADEON)がマッチするのだが、ここしばらく RADEON の有力な新型が出ていないため、この製品には GeForce が搭載されている。
GeForce に最適化したゲームの方が多いため、その点では悪くないだろう。
以下はグラフィック機能のベンチマーク(性能測定)ソフト「3D Mark(Timespy)」の測定結果だ。
当方のミスでオフィスモード時の画像しか残っていなかったのだが……
グラフィックスコアは5800、総合スコアは6139。
ターボモードの時はグラフィックスコアは6300、総合スコアは6800だった。
ちなみにグラフィックスコアは、GeForce の GTX 1650 は 2850、GTX 1660Ti は 5500、RTX 2070 は 7200 となる。(いずれもノート用)
このパソコンのグラフィック性能なら近年のゲームはすべて動作する。
例えば「フォートナイト」だと高画質設定でも120FPS(1秒あたり120コマの動作速度)を維持できる。
モニターが120Hz(1秒あたり最高120回の描画)なので、つまり最高速度で動かせる。
高画質だと重くなるゲームも一部あるが、ゲーミングモデルらしい高度なグラフィック性能を持つと言える。
ただ、高負荷で動作中は、ファンの音はかなり大きくなる。
これは性能と冷却を考えると仕方のない点なので、気になる人は、あまり負荷のかからない画質で遊んだ方が良いかもしれない。
データ記録装置(HDD/SSD)
ストレージ(データ記録装置)は 512 GBの「NVMe SSD」を搭載している。
NVMe(M.2)SSD は近年登場した「より高速な SSD」で、しかも小型サイズであるためノートパソコンでは特に重宝されている。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト「Crystal Disk Mark(8.0)」での測定結果だ。
1段目の左側(読み込み)は約2500、右側(書き込み)は約1700。
従来のSSD(SATA接続)だと左は500、右も200~500ほどになる。HDDだとどちらも100~150程度。
NVMe SSD がいかに速いかわかるだろう。
実際、CPUの速度と特性もあって、起動は非常に速い。
ただ、注文時にSSD/HDDを追加したり、大容量のSSDを選択することはできない。
512GBというのは近年のノートパソコンでは一般的な容量であるが、多いとは言えない。
このパソコンの処理速度を考えるとHDDでは真価を発揮できず、ゲーミングモデルであるなら、なおさら高速なSSDが欲しい。
だが、1TB以上のMVMe SSDはかなり高額なので、廉価モデルでは採用しづらい。
また、MVMe SSDは発熱が高く、薄型ノートだと熱くなりすぎない製品にする必要もある。
となると、この容量は仕方ないところか。
512GBあればすぐに困ることはないのだが、メインPCとして使うなら、外付けのHDDはいずれ用意しておきたいところだ。
ちなみに、今回の実機にはADATA社の こちら の製品が使われていた。
なお、底板を外せばメモリやSSDのスロットにアクセスできるため、ユーザーに知識があるなら自力での増設や交換は可能だ。
だが、購入時に選べないということは、増設時の冷却は保証できないということだと思われる。やるなら自己責任だ。
総評
正直「ドスパラらしくないパソコンだなぁ」と思ったのが本音だ。
ドスパラはBTO(購入者によるパーツ選択)が可能なメーカーなので、以前のドスパラのゲーミングノートは大きくて重く、しかしノートでありながら多彩なカスタマイズに対応していた。
だが、今どき大きくて重いノートパソコンなんて流行らない。
このモデルはメモリもストレージもカスタマイズできないが、ゲーミングノートとしては薄く、軽く、長時間駆動だ。
それはもう一般向けやビジネス向けのノートPCのコンセプトであり、そこにゲーミングノートをできる限り近づけた製品と言える。
そしてそれこそが、この製品の魅力である。
無論、ゲーミングモデルであるからには、ゲームが動くことが最優先で、そこはきちんと維持されている。
ノート向けに改良された GeForce RTX 2060 と、第三世代 Ryzen 7 の組み合わせは、少し前のハイスペックなゲーミングモデルを凌駕する。
SSD も高速で、それでいてゲーミングノートとしては安い。
カフェなどに持っていくには15.6インチは大きいが、十分持ち運べるため、出張先で作業も遊びもこれ一台で行えるのは嬉しい。
そんな使い方ができるリーズナブルなパソコンが欲しい方には、ぜひお勧めしたいマシンだ。
形式:15.6インチ ゲーミング ノートパソコン
CPU:Ryzen 7 4800H
グラフィックス:GeForce RTX 2060(ノート)6GB
メモリ:16GB DDR4
ストレージ:512GB NVMe SSD
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5
モバイル性能:1.9kg、バッテリー公称8.8時間
価格:税込 139,980円(税抜 127,255円)
※詳細はドスパラ公式サイトをご覧下さい。
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2020年12月23日